サハラ砂漠にポツンと一軒。独りで店を営む肝っ玉おばあちゃんと出会って。気になる彼女の映画の感想は?
「サハラ砂漠」ときいて、どんな場所を想像するだろうか?
学校の授業でもだいたい触れられるように、サハラ砂漠は世界最大規模の砂漠地帯。おおよそ長さ2400に渡って続く。
その広大さゆえに、「不毛の地」をイメージしてしまいがちではなかろうか?
でも、実際は、複数の国またがる砂漠には400ごとに小さな村があり、それをたどるように作られた「ナショナル・ワン」のほか、いろいろな道が存在。日夜多くの人々が行き交う。
映画「サハラのカフェのマリア」は、そのサハラ砂漠のど真ん中にある、小さな雑貨店を切り盛りする女性店主、マリカの日常が切り取られている。
そして、そこに、わたしたちはさまざまな世界を見出すことになる。
カメラを回し始めた経緯から、作品の裏話まで、手掛けたアルジェリアの新鋭、ハッセン・フェルハーニ監督に訊く。(全四回)
マリカの店というのは、いくつもの国の人々が行き交う交差点
まず半径60キロぐらいなにもないというマリカの店だが、このエリアはどんなところなのだろうか?
「前回お話したように、マリカの店は、アルジェリアの真ん中かつサハラ砂漠の真ん中に位置するんだけど、アルジェリアの北と南をつなぐ国道、ナショナル1の真ん中でもあるんだ。
北には大都市があって、南にも大都市がある。つまり、北と南の大都市をつなぐルートだから、人の往来がある。
映画を見てもらえればわかることだけれど、マリカの店というのは、さながらいくつもの国の人々が行き交う交差点みたいになっている。
マリカの店にいると、ほんとうにいろいろな人がいろいろなニュースを持ってくるんだよね。
店にいると、アルジェリアと隣接する国々、チュニジア、リビア、マリ、ニジェールなどの国のニュースが入ってくる。
だから、マリカはほんとうにいろいろなことを知っているんだ。
マリカは以前、コンスタンチンという都市に住んでいて、その後に今のカフェがあるところに来て20年以上住んでいる。
その間、ほとんど旅行はしたことがないと言っていた。
でも、彼女は通行人たちとの会話でいろいろなことを聞いていて、隣国がいまどんなことになっているとかも僕なんかより知っているんだよね。
だから、砂漠の真ん中でほかにはなにもない。少し離れたところにガス油田などの開発が進む場所があるぐらい。
でも、マリカの店だけはいろいろな国の情報や文化の交流が飛び交っている感じかな(笑)」
作品を見たマリカの感想は?
最後に、マリカはこの作品をみたのだろうか?
「アルジェリアの首都であるアルジェでプレミアム試写会を開いたんだ。とても広い映画館の大スクリーンで。
だいたい600人ぐらいが入るところだったんだけど、そこにマリカも来てくれて、一緒に映画をみたんだ。
映画が始まる前に観客を前に彼女が『私がマリカです。わたしがこの映画の中にいる主人公です』というような自己紹介をしたら、観客からは歓声と拍手が沸き起こって大盛り上がりだった。
で、映画の上映中が傑作で。マリカは携帯を手にとって、映画に出演している通行人の人たちにひっきりなしに電話をかけていたんだ。『あんたいま出てるよ』と(笑)。
まあ、そういう感じだったから、映画は気に入ってくれたんじゃないかと思っている。
それで、そのとき、僕らとしてはしばらくアルジェに滞在してもらって一緒の時間を過ごせればと思っていたんだけど、マリカは3日くらいしたら、もう店が恋しくなったというか。
『大都市はちょっともういい。家に帰りたい』といって、すぐに戻ってしまったんだ。だから、やはりマリカにとってはあの店が一番居心地のいい場所なんだなと思いました。
ほんとうにはじめはどうなるかと思ったんだけど、マリカとはいい信頼関係が築けた。僕にとってはもう親戚ぐらいの存在です。
彼女と出会えたことに感謝しています」
「サハラのカフェのマリカ」
監督:ハッセン・フェルハーニ
出演:マリカ、チャウキ・アマリほか
公式サイト https://sahara-malika.com/
全国順次公開中
写真はすべて(C)143 rue du désert Hassen Ferhani Centrale Électrique -Allers Retours Films