オスロで広島・長崎の被爆資料展示 現地の人の感想は?
今年のノーベル平和賞受賞者は、核廃絶運動に取り組んできたICAN。オスロでは被爆資料の展示が始まった。
中心地、フィヨルド前にそびえるノーベル平和センターは、授賞式が開催された市庁舎のすぐ側にある。
現地では人気の観光スポットでもあり、毎年の平和賞受賞者をテーマにした展示がおよそ1年間開催される。
広島・長崎からは、かばん、ロザリオ、腕時計、弁当箱が貸し出された。
12日に始まった一般公開の初日は、「通常よりも来場客が殺到して、驚いた」と、センターのスタッフは語る。
センターは観光スポットであると同時に、地元の学校の子どもたちが訪れる人気の社会科見学の場所でもある。
広報のラムボル氏によると、昨年訪れた学校グループは780組。24万人以上の来場者のうち10%を生徒が占める。
学校からの訪問依頼が絶えないため、全員を受け入れることが不可能な状態だそうだ。
被爆者の遺品を通して、ノルウェーの子どもたちが、核廃絶議論や被爆者のことを知るきっかけとなる。
- マクドナルドさん(イギリス)「核兵器の恐ろしさが伝わってきた。こんなことは終わらせないといけない」
- カルボスカさん(ポーランド)「あの遺品を持っていたであろう亡くなった人のことを思うと、心に強く響くものがあった」
- ノルウェー人女性のリーヴさんとルギナさんは、展示が見たくて、オスロ郊外からやってきた。「この遺品が爆弾の攻撃を受けたと思うと、奇妙な気持ちになる」、「遺品がオスロの地にまでやってきた。強烈な印象を残す」
- スカランさん(ノルウェー)「この弁当箱に入っていたであろうご飯を、食べようとしていた人がいた。目の前で見ると、心にがつんと響くものがある」
リーヴ・トレス館長は、インタビューでこう答えた。
「初めて遺品を見た時、この所有者のことを思いました。強く心に訴えかけてくるものがあります。私は小学生だった頃に、初めて広島と長崎で起きたことを学びました」。
「今、また戦争への恐怖が再び世界で広がり始めています。核兵器禁止条約の中身について賛成か反対か、私の意見はここでは言いませんが、展示をきっかけに、核廃絶への議論は高まるでしょう」。
ノーベル平和センターがノルウェーの地で問いかける
筆者は2008年からオスロに住み、平和賞やノーベル平和センターのことをずっと取材してきたが、今回のセンターの展示で驚いたことがある。
エスカレーターで2階にあがった時、目の前に登場するのは「核爆弾を廃止せよ」という文字。最初のメインルームの幅広い空間を占めていたのは、日本の被爆者のメッセージ(日本語と英語)、爆弾がもたらす悲惨な光景の写真、遺品だったことだ。
受賞者のICANを紹介する部屋は、さらにその奥の部屋にある。
オスロの街に「核爆弾を廃止せよ」という文字が溢れているのも、ノーベル平和センターの展示の宣伝のためだ。
センターはセンターなりに、できる限り被爆者の意志と体験を伝えようとしていた。
スタッフによると、1階のショップで平和賞のメダル型のチョコレートだけを購入して、チケットは買わずに、展示は見ない日本人観光客が多いそうだ。
もしこれから1年間、オスロを訪れる予定がある人がいれば、センターの2階にも足を運んでみてはいかがだろうか。被爆者の遺品が北欧で展示されるのは初。
広島と長崎に何が起きたのか。核兵器の非人道性がノルウェーの地に展示されているのは、この期間だけだ。
Photo&Text: Asaki Abumi