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ごみ少ないランキング 全国上位30自治体は?年間2兆円のごみを減らす5つの要因とは

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

環境省は、毎年3月末に「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を発表している。2021年3月30日には令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を発表した(1)。

この中で、「3R(スリーアール)取組上位市町村」として、人口によって3区分(10万人未満、10万人〜50万人未満、50万人以上)で、1人1日当たりのごみ排出量が少ない自治体が発表されている。

そこで、全国の自治体のうち、どの市町村が1人1日当たりのごみ排出量を抑えているか、人口の多い方から見ていきたい。

人口50万人以上の自治体

人口50万人以上の自治体では、東京都八王子市が最も少ない結果となった。

1位 東京都八王子市

2位 愛媛県松山市

3位 神奈川県川崎市

4位 埼玉県川口市

5位 京都府京都市

6位 神奈川県横浜市

7位 広島県広島市

8位 静岡県浜松市

9位 北海道札幌市

10位 神奈川県相模原市

1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口50万人以上)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を基にYahoo!NEWS制作)
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口50万人以上)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を基にYahoo!NEWS制作)

上位にランクインされる自治体は、ほとんど僅差だ。特に愛媛県松山市は、過去に9年連続で1位になっており、今回も八王子市とは、たった3グラムの差だ。八王子市と松山市は、毎年1位と2位を獲得している。10位までに入っている自治体は、どこも全国平均(918g/人日)を下回っている。

1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口50万人以上)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」より)
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口50万人以上)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」より)

人口10万人〜50万人未満の自治体

人口10万人〜50万人未満の自治体では、東京都小金井市が最も少ない結果となった。

1位 東京都小金井市

2位 静岡県掛川市

3位 東京都日野市

4位 東京都立川市

5位 東京都府中市

6位 東京都西東京市

7位 静岡県藤枝市

8位 東京都東村山市

9位 東京都小平市

10位 東京都三鷹市

1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人〜50万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を基にYahoo!NEWS制作)
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人〜50万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を基にYahoo!NEWS制作)

上位10位のうち、2位の静岡県掛川市と7位の静岡県藤枝市を除くと、すべて東京都西部の自治体がランクインしており、1位と10位の差はたった83.1グラムだ。

1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人〜50万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」より)
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人〜50万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」より)

人口10万人未満の自治体

人口10万人未満の自治体では、長野県川上村が最も少なかった。

1位 長野県川上村

2位 長野県南牧村

3位 徳島県神山町

4位 長野県泰阜村

5位 宮崎県高原町

6位 長野県中川村

7位 長野県平谷村

8位 長野県豊丘村

9位 長野県高森町

10位 長野県下條村

1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を基にYahoo!NEWS制作)
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」を基にYahoo!NEWS制作)

3位の徳島県神山町と、5位の宮崎県高原町をのぞけば、すべて長野県の町や村がランクインしている。

1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」より)
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人未満)(令和元年度の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」より)

なぜごみ減量を達成できているのか、その5要因

これら30の自治体では、どのようにしてごみ削減を達成できているのだろうか。複数の要因が絡み合っているわけだが、その中から5つを選んで挙げてみる。

1. 危機意識と目標設定、わかりやすい広報

人口50万人以上の区分で5位になっている京都市は、全国政令指定都市の中でも家庭ごみが最も少ない自治体だ。人口140万人、修学旅行生が年に110万人(コロナ前)訪問し、国内外から観光客が訪れるという条件下で、この少なさだ。2000年には年間82万トン発生していたごみ量を、20年かけて半分削減を達成した。

2000年からの京都市のごみ量推移(京都市のデータを基にYahoo!NEWS制作)
2000年からの京都市のごみ量推移(京都市のデータを基にYahoo!NEWS制作)

京都市の廃棄物の部門には2016年からたびたび取材させていただいており、拙著『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(2)でも京都市の取り組みを9ページにわたって解説した。このごみ削減の背景には、1997年12月に京都市で開催されたCOP3(コップスリー:気候変動枠組条約第三回締約国会議)や、国際的な観光都市ということもあるが、差し迫った理由として「もう燃やして埋める場所がない」ことだと伺った。上のグラフでは右肩下がりに下がっているが、2000年より前までは、ごみ量は右肩上がりに増えていた。

京都市の調査によれば、燃やすごみのうち41%が生ごみだ(京都市の生ごみデータ平成29年度より)
京都市の調査によれば、燃やすごみのうち41%が生ごみだ(京都市の生ごみデータ平成29年度より)

この危機意識を基に、食品ロスを含むごみを半分に減らす「ごみ半減プラン」に取り組み、ピーク時には5つあった清掃工場も3工場に縮小し、年間で106億円もの大幅なコスト削減を実施した。2015年10月には、ごみ半減を目指す「しまつのこころ条例」(京都市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例)も制定された。

一般市民へのわかりやすい広報も特徴だ。ウェブサイト「みんなで取り組もう!食品ロスゼロプロジェクト」を立ち上げ(3)、京都市の生ごみの詳しいデータを掲載している(4)。昭和55年からデータをとり続けている京都市ならではの特徴だ。

人口10万人〜50万人未満の区分で1位になっている東京都小金井市は、焼却場が停止する事態を受け、2006年10月「ごみ非常事態宣言」を発令し、生ごみの減量化や未利用資源の有効活用、家庭ごみ袋有料化などに取り組んできた(5)。家庭から出る落ち葉や枝木、雑草など、一般の自治体では「燃やすごみ」に入れてしまっているが、これらも別回収して資源化に取り組んでいる。

人口10万人未満で8つの自治体がランクインしている長野県は、47都道府県中、6年連続でごみ最少を誇っている。毎年、ごみ量のランキングを出すのが最も早い都道府県だ(6)。2021年も、「信州ごみげんネット」の公式サイトで、6年連続でごみの排出量が最少になったことを公開しており、一般市民にわかりやすい情報発信につとめている。

長野県公式サイトより(7)
長野県公式サイトより(7)

人口50万人以上の区分で2位の愛媛県松山市は、時系列で減っていることを折れ線グラフで示している。数字だけよりわかりやすい(8)。

愛媛県松山市のごみ量推移(松山市公式サイト)
愛媛県松山市のごみ量推移(松山市公式サイト)

2. ごみ袋有料化

家庭ごみのごみ袋を有料化していることも挙げられる。事業系では指定のごみ袋があるが、家庭系では自治体ごとに分かれており、すでに60%以上の自治体で一部もしくは全部のごみ有料化となっているが、すべてではない。

人口10万人〜50万人未満の区分で多くの自治体がランクインしている東京都の多摩地域では、早くからごみ袋有料化が取り入れられてきた。たとえば日野市では、40リットルの大サイズは10枚で800円。1枚80円だ(9)。減らせば、これを使わずに済むので、減らそうという意識が働く。

東京都日野市のごみ袋のサイズと価格(日野市公式サイトより)
東京都日野市のごみ袋のサイズと価格(日野市公式サイトより)

また、排出者責任を明確にする、という意味で、長野県の自治体のうち9割は、誰が出したかわかるように、ごみ袋に名前を書くようにしている(10)。

長野県以外にも、人口10万人以上の区分で2位になっている静岡県掛川市でも記名式を取り入れている。

3. 生ごみの資源化

生ごみは、重量の80%以上が水分だ。これを少なくすることでごみは減る。東京都小金井市は早くから生ごみや落ち葉などの資源化に取り組んできた。

人口50万人以上の区分で1位になっている東京都八王子市は、公式サイトにもごみ削減の取り組みや情報が充実している(11)。市制100周年を迎えた(12)2018年には筆者も呼んでいただき、基調講演をおこなった。その会場では、ダンボールで作る生ごみコンポストの紹介も行われていた(13)。

東京都日野市では、2002年、家庭の生ごみを焼却せずに循環させる仕組みを作ろうと、市民が「ひの・まちの生ごみを考える会」を立ち上げた(14)。生ごみを回収して堆肥にし、休耕地を利用した「せせらぎ農園」(15)で使われている。家庭用生ごみ処理機の普及にも取り組んでおり、行政と上手に連携してきた(16)。東京都日野市の市議会からも講演に呼んで頂いた。とにかく熱心な方が目立った。

一般家庭生ごみ循環モデル事業イメージ図(ひの・まちの生ごみを考える会公式サイトより)
一般家庭生ごみ循環モデル事業イメージ図(ひの・まちの生ごみを考える会公式サイトより)

4. 飲食店はじめとした事業系での削減

京都市は、食べ残しゼロ推進店舗の認定制度を2014年から始めている。持ち帰り容器の準備やハーフサイズのメニューなど、8項目中2項目を実施していれば市に申請でき、認定されればロゴマークを使うことができる(17)。今では飲食店や旅館だけでなく、小売店にもこの制度が適用されている。

京都市は、宴会で幹事が食べきりを声がけした場合としない場合との食べ残しグラム数を計測したり、スーパーで販売期限で商品棚から撤去してしまうのをやめて、消費期限・賞味期限ギリギリまで売ると食品ロスが10%削減され、売上が5.7%増加するといった実証実験もおこなっている。

京都市食べ残しゼロ推進店舗制度(公式サイトより)
京都市食べ残しゼロ推進店舗制度(公式サイトより)

人口50万人以上の区分で6位の神奈川県横浜市でも、このような「食べきり協力店舗」の制度を作っており、2021年6月16日で登録店舗が952店舗になった(18)。

人口50万人以上の区分で10位の神奈川県相模原市には、事業系の余剰食品を受け入れて豚のえさに加工する日本フードエコロジーセンターがある(19)。恵方巻きの売れ残りの時期をはじめ、テレビの食品ロス特集では、よく映像が使われている。

恵方巻きやスーパー、コンビニのおにぎりや寿司の出荷されなかったもの(日本フードエコロジーセンター提供)
恵方巻きやスーパー、コンビニのおにぎりや寿司の出荷されなかったもの(日本フードエコロジーセンター提供)

5.食品ロス削減

家庭系でも事業系でも、重量のうち80%が水分を占める生ごみを減らすことが、ごみの減量に大きく寄与する。その生ごみのうち、半分近くが手つかず食品、つまり「食品ロス」というデータもある。京都市の生ごみデータ(4)によれば、45.6%が手つかず食品という結果だ。日本の政令指定都市で最も家庭ごみの少ない京都市でもこの結果なので、他の自治体ではもっと多いかもしれない。

生ごみの中の食べ残しの内訳(京都市調査より)
生ごみの中の食べ残しの内訳(京都市調査より)

「食品ロスを減らせばごみが減る」とも言える。筆者は家庭用生ごみ処理機を使う前後で、食品ロスを含む生ごみの重量変化を計測し、900回でおよそ230kgの生ごみを減らしてきた。下のグラフでオレンジ部分が減った重量だ。

家庭用生ごみ処理機を900回使い、乾燥前後で重量変化を見た結果。筆者のデータを基にYahoo!NEWS制作
家庭用生ごみ処理機を900回使い、乾燥前後で重量変化を見た結果。筆者のデータを基にYahoo!NEWS制作

筆者は埼玉県川口市の廃棄物対策審議委員を2017年7月から務めている。2015年から、川口市議の有志やパン屋さんと「食品ロス削減検討チーム川口」を立ち上げ、年に1〜2回のフードドライブを実施している。

食品ロス削減検討チーム川口のフードドライブで集まった食品の一部(主に穀物、鍋のもと)(谷田部千春氏撮影)
食品ロス削減検討チーム川口のフードドライブで集まった食品の一部(主に穀物、鍋のもと)(谷田部千春氏撮影)

食品ロス削減はごみ削減の要(かなめ)

以上、主な5つの要因を見てきた。もちろん、ここに挙げていないような取り組みも多いし、ランキングに入っていない自治体でも注目すべき自治体が多い。「生ごみ出しません袋」の活用(20)も優れているし、食品の入れ替え時に捨てないで活用することも大切だろう。とにかく「食品ロス削減」は、ごみ削減の上で重要項目であることを強調しておきたい。

参考情報

1)一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和元年度)について(環境省、2021年3月30日発表)

2)『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(井出留美、幻冬舎新書)

3)京都市「みんなで取り組もう!食品ロスゼロプロジェクト」

4)京都市の生ごみデータ

5)『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』(山谷修作著、丸善出版)

6)全国ごみ少ないランキング、3位滋賀県、2位京都府、1位は?6年連続最少、伝え方もダントツ1位(井出留美、2021.4.22)

7)長野県がごみの少なさランキングで“6年連続”日本一になりました!!(長野県公式サイト)

8)愛媛県松山市のごみ減量

9)東京都日野市 ごみ袋のサイズと価格

10)ごみ袋に「記名必要」長野県の9割、賛否の声(声のチカラ、2021年1月5日)

11)東京都八王子市の取り組み

12)八王子市市制100周年記念サイト

13)ダンボールコンポストの普及(東京都八王子市)

14)ひの・まちの生ごみを考える会

15)せせらぎ農園

16)一般家庭生ごみ循環モデル事業イメージ図(ひの・まちの生ごみを考える会)

17)京都市 食べ残しゼロ推進店舗

18)神奈川県横浜市 食べきり協力店舗

19)日本フードエコロジーセンター

20)「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円のごみ処理減らす自治体の取り組み(井出留美、2021.5.30)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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