「働く意味」や「仕事の目的」は【2分】で見つかる ~新しく社会に出る若者たちへ
新しく社会に出る若者たちへ
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。いつもコミュニケーションをとる相手は、経営者か管理者。新入社員や就活生とは、講演やセミナーなどでしかお会いすることはありません。
世の多くの経営者や管理者の価値観、能力を知り尽くしている私だからこそ言えることがあります。それは、「上司が言うことはほぼすべて従う必要があるが、上司の振る舞いを模倣する必要はない」ということ。
そしてもう一つ。メディアで取り上げられている言説にも惑わされてはいけないということ。テレビやネットの観すぎで、よくわからずに「世の中はこうなのだ」「社会はこうなのだ」と決めつけるのは、せっかくのご自身のポテンシャルを台無しにします。たとえテレビやネットにそれほど触れていなくても、友人、知人が同様の価値観を持っていたら、そこから影響を受けます。
新しく社会に出る人に強く言いたい。自分なりのクライテリア(判断基準)を持ってほしい。正しいクライテリアを持つためにも、正しい言葉の意味を知ることです。
仕事をする目的は「2分」で見つかる
これから社会に出る人の中に、「仕事の目的」「働く意味」がわからないと言う人がいます。正直なところ、日本国憲法に「国民の三大義務」というものがあり、そこに「勤労の義務」が書かれているわけですから、「働く意味がわからん」と思いきり言っちゃう人はかなり横着。それを言っちゃあおしまいよ、という感じですし、「何のために働くのか」という哲学的な問い掛けも、答えが出ない気がするので、こちらもパス。
今回は現実的に、「自分のやりたいことが見つからない」「どんな仕事が向いているのかわからない」という不毛な悩みを抱いている人をラクにするための答えを用意したいと思います。
仕事をする「目的」はすべての人に共通しています。探したり、考え込んだりする必要はありません。幸福を与えるためです。働く目的は、誰かを幸せにするためなのです。
それでは、別の側面で考えてみましょう。仕事を通じて【誰】を幸福にするのか、ということです。これには3つのグループがあります。
1)自分
2)周囲
3)社会
この3つ。
まずは自分です。好きな仕事をして満足感を得る。仕事の報酬で生活に潤いを与える……など、仕事を通じて幸福になる方法はいろいろあります。いずれにしても、一番の基本がここです。ただ自分の幸せだけが目的であれば、まだ最初のレベルと言えるでしょう。つまり「自己実現の欲求を満たしたい」などと言っている人は、単なる「自己満足」レベルだということです。
2つめのグループは、周囲にいる人を幸せにすることです。家族、同僚、部下、お客様、地域の人……などが挙げられます。お客様の問題解決に貢献したい、家族に不自由のない暮らしを保証したい。こういう気持ちが叶えられることによって、自分もまた幸福な気分を味わうものです。
3つめのグループは、周囲の人よりもさらに外側の人(社会)の幸福のために働くということです。最も高いレベルの目的と言えるでしょう。つまりその仕事、労働を通じて社会に貢献するという考え方です。自社の製品やサービスが社会の発展に寄与すると考え、実際にそうなっていけば、自分もまた大きな幸福を覚えるはずです。
ただ、概念的には理解できても、腹に落ちるかどうかは別でしょう。
「周囲」は目に見える相手ですから、それらの方々に幸福感を与えることによって自分もまた満足感を得るというのはわかりやすい。しかし「社会」は概念的な存在。直接接する人の幸福ではないため、仕事をはじめたばかりの人にとっては、自分の労働が社会に幸福を与えると言われてもピンとこないかもしれません。
いずれにしても仕事をする「目的」は誰かを幸福な”状態”にすることです。このことだけは、押さえておきましょう。
目的を果たすための「手段」に悩むべきか?
腹に落ちるかどうかは別にして、仕事の目的とは「自分」「周囲」「社会」のいずれかを幸せにすることだと受け止めたら、「仕事の目的」「働く意味」について悩むべきことなど、ほとんどないことに気付くはずです。入社する会社が社会に貢献している事業をされているのであれば、そこで一所懸命働くだけでいいのです。もしそう思えなくても、お客様のためとか、自分の家族のためとか考えればいい。そこまで考える余裕もないのであれば、自分の報酬のためと受け止めればよいでしょう。
「手段」と「目的」を間違えてはならない
会社に入り、上司から指示されたことで「おかしい」「こんなことやる必要があるのか」と、たまに感じることがあるはずです。
「この仕事には意味がない」
と思えるのは、指示を出した上司が「手段」と「目的」を混同しているからです。たとえば上司から「この分析をやってくれないか」と言われたとします。その分析が、現在の問題を解決する糸口を探し出し、会社の付加価値向上に役立つというなら、「はい、わかりました」と前向きに返事をして取り掛かることでしょう。
しかしその分析資料が単に会議に配らされるだけで、誰も目を通さない。もしくは目を通したとしても改善策に生かされない、と知っていたら、
「こんなことやっても意味ないのになー」
と思うはずです。入社して2~3年もすると感覚がマヒしてきますが、純粋な新入社員なら、まだ感度は高いのですぐ気づきます。組織の問題を解決すること、会社のバリューをアップさせ、お客様の満足度向上に寄与することが目的ならいいのですが、分析そのものが目的となっていたら「手段の目的化」です。前述したとおり、「目的」と「手段」を混同しているため、多くの人がこういう仕事に不満を覚えます。
ここで話を戻し、「仕事の目的」について振り返ってみましょう。
先述したとおり、仕事の目的とは「自分」「周囲」「社会」のいずれかを幸せにすることです。そう定義したら、どんな仕事をするか――つまり仕事の中身は「手段」だと気づくことでしょう。
プロ野球選手になろうが、銀行員になろうが、繊維メーカーで働こうが、美容師になろうが、どんな仕事であっても、それは「手段」に過ぎないということです。
車のメーカーで働きたかったのに、どの会社を受けても内定をもらえなかった。だから地元の広告代理店に勤めた。そういう人が、「なんか違う。なんかモチベーションが上がらない。働きがいを感じられないのは、自分がこの仕事を好きじゃないからだ……」などと言いはじめたら、「手段の目的化」をしていると受け止めるのです。
正しいクライテリア(判断基準)を持ちましょう。そのために、言葉の意味を正確に知るのです。頭が整理できなくなるからです。
仕事の中身は「手段」です。どんな仕事であっても、三者の幸せに貢献できるのあれば「目的」は果たせるのです。福岡から東京へ行くのに、飛行機を使うのか、新幹線を使うのか、高速バスを使うのか、自家用車を使うのかは、人それぞれ。目的は東京へ行くことであり、移動するための乗り物は「手段」です。
好きな仕事に就けないなら、仕事をする意味がわからなくなるなどと言う人は、飛行機にどうしても乗れないのなら、東京へは行かないと言っているワガママな子どもと同じ。考えが稚拙です。
「自分のやりたいことが見つからない」と言って悩んでいる人は、「福岡から東京へ行く乗り物の中で、自分の好きな乗りものがない」とほざいているようなものです。
昨今、豊かな時代になり、特にメディアによって「本当に自分のやりたいことは何か?」「自分がやりがいを覚える仕事に就け」という価値観が広まっています。しかし、これらは、人生の晩年を迎えている人たちが持つ考え方であり、若者にとってはノイズです。
40代、50代になってから、その問い掛けをすればよいのです。仕事の目的は、三者のいずれかを幸せにすること――そうとらえれば、【2分】で悩みは解決します。