愛媛マンダリンパイレーツ、梅雨空の中の「無観客明け」試合を飾れず
昨年来世界中を悩ませてきたコロナ禍もワクチンの普及によってようやく終息に向けて光明が見え始めてきている。コロナは、日本のスポーツ界にも暗い影を投げかけてきていたが、それも徐々に晴れ間が見え始めている。
昨年から徹底したコロナ対策を行ってきた四国アイランドリーグplus・愛媛マンダリンパイレーツ(愛媛MP)は、今シーズンも、4月19日に県から発表された新型コロナウイルスの感染拡大防止のための「感染対策期」宣言を受けて、以降の公式戦を無観客試合として開催していた。オフの間にスポンサーと後援会費を確保し、シーズン中のチケット販売と物販によって運営を行っている独立リーグにとって、「無観客」はかなりの痛手である。しかし、県内の自治体からの出資を受け、「県民球団」という公共財として活動している以上、県の方針に従うのは当然でもあった。
6月1日、県は「感染対策期」をより緩和した「特別警戒期間」に移行。これに伴い、6月11日に西条市東予運動公園野球場で対香川オリーブガイナーズ戦から、スタンドに観客を入れて開催することになった。
平日の地方都市のナイター、それも梅雨空にもかかわらず、「おらが町のチーム」をついに生観戦できると耳にしたファンが開門前からゲート前に陣取っていた。
しかし、今シーズンの愛媛MPは不振を極めている。この日まで4勝16敗のダントツ最下位。対する香川OGは17勝7敗で首位を走っている。両者の対戦成績は6戦で香川OGの5勝1分け。久々の有観客試合で、愛媛MPは王者相手の初勝利を見せたいところだ。
両軍とも左腕の先発。香川OGは龍頭大夏(九州産大)、そして愛媛MPは、プロ22年目の大ベテラン正田樹。かつてのドラ1左腕は、プロ野球(NPB)から、台湾プロ野球、アメリカメジャー挑戦、ドミニカへの野球修行など、野球人としてありとあらゆる経験をし、今シーズンで独立リーグ通算9年目を迎える。今年で40歳。往年のスピードはないが、緩急自在のピッチングで昨シーズンも5勝を挙げている。
先制したのは愛媛MPだった。初回、正田が香川OG打線を3者凡退に打ち取ると、その裏、先頭の仁木敦司(広島国際学院大)のセンター前ヒットを足掛かりに2点を先制。2回にも1点を追加して試合は愛媛MPペースで進むかのように思えた。正田も序盤の3回までは危なげないピッチングで香川OG打線に付け入る隙を与えなかった。ただ、コースをつくピッチングが身上の正田にとって、微妙なコースに対してコールされる「ボール」のジャッジが幾分、投球の幅を狭めているようにも見えたのが気になった。この回、正田は四球を2つ出したが、微妙なボール判定に正田の余裕がなくなってきているように見えた。
不安は4回に表面化した。2アウトをとってから、この日5番指名打者に入った川上智也(東京情報大)に初ヒットを許すと、続く冨田慎太郎にスリーベースを放たれ1点を許すと、その後も四球を挟んで、ツーベースを許し、さらに1点を追加される。
そして責任イニングの5回。先頭打者にヒットを許した後、香川OGの2番、堀北彰人(東洋大)のバントを処理した小田原将之(松山大)がファーストへ悪送球。外野へボールが転がる間にファーストランナーは長駆ホームイン。正田は続く打者にもヒットを許しついに逆転されてしまう。
愛媛MPは6回から地元愛媛出身の宇佐川陸(東洋大)をマウンドに送るが、この宇佐川が7回に1点を失い降板。8回には3番手河野翔太(京都工繊大)がマウンドに登ったが、彼もまた、長短打3本を許し1失点。結局9対4で香川OGの圧勝に終わった。
(文中の写真は筆者撮影)