藤井聡太二冠(18)B級1組で3勝1敗&順位戦通算42勝2敗! 久保利明九段(45)との熱戦を制す
7月6日。大阪・関西将棋会館において、第80期順位戦B級1組▲藤井聡太王位(18歳)-△久保利明九段(45歳)戦がおこなわれました。
6日10時に始まった対局は7日0時21分に終局。結果は117手で藤井二冠が勝ち、リーグ成績は藤井二冠3勝1敗、久保九段0勝3敗となりました。
終局後、両者は次のように語っていました。
藤井「B級1組になってから手強い相手ばかりなので、3勝1敗というのはわるくないのかな、と思います。このあとも一局一局、気を引き締めていけたらと思います」
久保「結果は出てないですけど、やるだけのことはやってるつもりなんで、また次、がんばりたいと思います」
藤井二冠の順位戦通算成績は42勝2敗(勝率0.955)となりました。
今年度成績は12勝3敗(勝率0.800)です。
藤井二冠、さばきのアーティストに勝利
「藤井さんにとっては初防衛を果たされて、九段に昇られてから初めての公式戦だったと思います。その点はいかがでしたでしょうか」
終局後のインタビューで、藤井二冠はそう尋ねられました。藤井二冠は7月3日に棋聖戦五番勝負を制し、タイトル3期という規定をクリア。史上最年少で九段に昇段したばかりです。
藤井「あ、いや、それはまったく意識しませんでした。最近、対局が多いので、コンディションを崩さないようにというのは意識していました」
久保九段もまた、タイトル3期を獲得して九段に昇段しています。
本局は藤井二冠先手。
4手目。振り飛車党の久保九段は四間飛車を選択しました。以下、なにげない手順のようですが、序盤から細かい駆け引きが見られました。
14手目。久保九段は角筋を通したまま、角を一つ上がります。これが用意の作戦だったようです。藤井二冠はすぐに角を交換しました。
藤井「角交換振り飛車になって、けっこう序盤から手の組み合わせの多い将棋なので。どういう感じでいくのか、序盤から難しかったかなと思います」
久保九段が向かい飛車にスイッチしたのに対して、藤井二冠は自陣角を打って久保陣をけん制します。
午後の戦いに入って30手目。久保九段は藤井陣に角を打ち込み、自陣に成り返って馬を作りました。藤井二冠はその動きに応じて3筋に飛車を回り、相手の弱点である桂頭を目標に攻めていきます。
藤井「△3九角から馬を作られるのが少し軽視していた手で。本譜進んでみると3筋を突破するには至らないので。うーん、ちょっとそうですね。(直前に)▲8八玉寄ったのがどうだったかなというふうには思っていました」
久保九段は中段で強力な馬を使い、バランスを保ちます。形勢は難解なまま推移していきました。
久保「一手一手ちょっとわからない、難しい将棋だったですね」
44手目。久保九段は2筋の飛車を一路隣りの3筋に寄せます。
中田「私から見たら神手順」
ABEMA解説の中田功八段はそう評していました。
藤井「(44手目)△3一飛車と寄られた局面で(桂取りの)▲2六歩か、本譜の▲8六角かちょっと考えていたんですけど・・・。▲8六角に対して△5一飛車からさばきに来られるのは見えていなかったので。たぶん▲2六歩の方がよかったかもしれません」
18時40分、夕食休憩が終わって対局再開。久保九段は3筋の飛車を中央5筋に回ります。一連の「神手順」は、さばきのアーティスト面目躍如といった進行でした。
久保「△5一飛車がけっこう感触いいかなと思って。やっぱり(▲8六角の代わりに▲2六歩と)桂馬取りに来られる変化の方を読んでたんで。まあでもけっこうやってみたら大変でしたね、その局面自体」
久保九段は桂を取らせる代償に、馬の活躍で藤井玉近く、急所の歩を取ります。
藤井「7六歩取られて、こちらの陣形もキズを抱える形なので、ちょっとどうかわからなかったんですけど」
久保九段は飛車を大きく使い、きれいにさばいて藤井陣2筋に成り込みます。対して藤井二冠は久保陣2筋に歩を成りました。依然難解な中盤戦。持ち時間6時間のうち、残りは藤井50分、久保51分と互いに少なくなっていました。
久保九段の側はと金を払いながら龍を自陣に引き上げ、息長く指す順も考えられました。本譜、久保九段は攻め合いを決断します。結果的にはここから藤井二冠がリードを奪っていきました。
藤井「▲2三歩成から攻め合って少し、若干駒得なので手厚くなったかなと思いました」
久保九段は歩を使って中央5筋から攻めます。藤井玉は、上は相手の馬、下は相手の龍がよく利いていて、一手でも受けを誤ればすぐに寄りそうな形です。
73手目。藤井二冠は当たりになっている銀を、あえて玉から遠い4筋に逃げました。
これが正確な応手です。
及川「反対側に上がるのが好手でしたね」
中田「いい手ですね」
及川「見れば見るほどいい手ですね」
ABEMA解説の中田功八段と及川拓馬六段は、そう絶賛していました。
77手目。藤井二冠は相手美濃囲いの急所である端9筋から突っかけて攻めます。形勢は藤井二冠リード。ただし決定的な差ではありません。
残り16分の久保九段。時間が少ない中で、最善の手順を選ぶことはできなかったようです。
久保「もうちょっと端の対応でうまい対応の仕方があれば、もう少しなんかチャンスもあったかなという気もしたんですけど。本譜はちょっと、一番受けづらい形で受けようとしてしまったかなという感じですね」
95手目。藤井二冠は4筋に銀を上がります。受けに利いている馬に当て、その筋を止める決め手でした。
藤井「少し端攻めがうまくいくかどうかわからなかったんですけど、そのあと▲4六銀と上がって攻めがつながる形になったかなと思いました」
持ち時間6時間を使い切って一分将棋に追い込まれていた久保九段。馬を切って藤井玉に迫り、最後の勝負に出ました。
99手目。コンピュータ将棋ソフトは「+Mate:29」と表示していました。29手以内に久保玉は詰んで藤井二冠の勝ちという意味です。ただしその手順はそう簡単とも思われません。実際、解説の中田功八段、及川六段は難しいと言っていました。
しかし残り14分の藤井二冠は読み切っていました。時間を消費することなく、久保玉に的確に王手をかけ続けます。追われていく久保玉は、最後は中段できれいに詰み上がる格好です。
王手をかけられ続けて19手。117手目、藤井二冠が銀を出た手を見て、久保九段は投了を告げました。
久保九段と藤井二冠の対戦成績は、これで3勝3敗の指し分け(五分)となりました。
藤井二冠が負け越している棋士は8人から7人と減りました。
藤井二冠、久保九段ともに竜王戦では本戦に進出しています。両者勝ち進めば、準決勝で対戦することになります。