110年の歴史に幕 大正元年築の木造駅舎 参宮線 田丸駅(三重県度会郡玉城町)
110年の長きに渡って使われてきた木造駅舎が7月20日で役目を終える。大正元(1912)年12月に建てられた参宮線田丸駅の駅舎だ。
伊勢神宮への参拝路線として建設された参宮線。その起点の多気駅から2駅目が田丸駅だ。度会郡玉城町の玄関口かつ唯一の駅だ。田丸は伊勢本街道と熊野街道が合流する交通の要衝で、かつては宿場町として伊勢神宮への参拝客で賑わった。南北朝時代に南朝方の北畠氏によって築かれた田丸城があり、江戸時代は紀州徳川家の家臣・久野氏が治める城下町であった。ちなみに幕末期に水戸天狗党の首領であった田丸稲之衛門はかつての田丸城主・田丸氏の末裔である。
田丸駅は明治26(1893)年12月31日に参宮鉄道の駅として開業。明治40(1907)年10月1日に国有化された。現在の駅舎は、築年を示す建物財産標によれば大正元(1912)年12月に建てられたもの。昭和34(1959)年には小津安二郎監督の映画『浮草』のロケ地となっている。
かつては駅員のいる有人駅だったが、平成24(2012)年10月1日に無人化。窓口跡はシャッターが下ろされている。
入口上部には青地に白抜きの駅名表示と注連縄が掲げられている。三重県の伊勢志摩地方には一年中注連縄を飾る文化があり、駅もその伝統に従っているのだ。
昔ながらの雰囲気を色濃く残す田丸駅の木造駅舎だが、老朽化と耐震性不足により解体が昨年決定した。工事は6月12日より始まり、駅舎は7月21日から閉鎖される。8月中に解体が完了し、9月から新駅舎の建設が始まる予定だ。新駅舎は交流施設を兼ねたもので、現駅舎のデザインを引き継いだものとなる。スタッフを置いて「有人化」される方針だという。現駅舎の解体は残念だが、地域主導で建てられる新駅舎がどうなるのかが楽しみだ。