焼肉香るボールパーク? 韓国にこの6年間で4つ目の新球場誕生。23日にプロ野球開幕
日本では大人気でも世界的にはごく一部の国でしかプロリーグが盛んではない野球。そのプロ野球が日本同様に大衆に愛されているのが韓国だ。
筆者は韓国のプロ野球を専門として20年近く仕事をしている。そのことを初対面の人に話すと40代以上の人にこう話してくる人が少なくない。
「韓国の野球というと、やっぱり新浦ですよね」
平成も終わろうとしているのに、昭和50年代のことが一番のトピックとして、まるで直近のことに口にされている。それだけ新浦壽夫さんが偉大であると再認識させられるが、最近ではこんなことを言われることもある。
「陽岱鋼(巨人)、頑張ってますね」
熱心な野球ファンや海外の野球事情にアンテナを張っている人であれば、「陽岱鋼が台湾出身なのは知っていて当然」と思うだろうが、一般的な認識はその程度で、韓国プロ野球に関する情報はあまり届いていないのだと、身をもって知る瞬間だ。
発足から37年目を迎える韓国プロ野球KBOリーグは23日に今シーズンが開幕した。今年は11月に東京オリンピックへの出場権もかかった国際大会、プレミア12が控えることから例年よりも早いスタートとなった。
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近年の韓国プロ野球の話題のひとつに新球場の誕生が続いていることがある。2014年にKIAタイガースの本拠地・クァンジュKIAチャンピオンフィールドが完成したのに続き、15年にコチョクスカイドーム、16年にテグサムスンライオンズパークがオープンした。
そして今年は韓国南部のチャンウォン(昌原)市に「チャンウォンNCパーク」が仲間入り。クァンジュ、テグ、チャンウォンに共通しているのが、開放感のある「ボールパーク型」のスタジアムであるということだ。
NCダイノスのホーム球場、チャンウォンNCパークの収容人員は22,112人。日本のスタジアムと比べると小規模だが、イベントでの使用はあまりない上に人口規模を考えると妥当な大きさと言えるだろう。
韓国の特徴として応援の中心が内野席であることから、日本より外野席の座席数が少ない。
またグループ単位の来場者が多く、その大半がパーティーやピクニック感覚で野球場を訪れている。そのためテーブルを設置した座席がバックネット裏を中心に並び、1人あたりの専有面積が広い。日本でもここ数年進んでいる、座席数が減っても客単価は上がる座席配置が韓国では10数年前から行われている。
両翼101m、中堅123m。外野席後方には視界を遮る壁がなく、レフト後方の大型スーパーがよく見える。そのせいか外野のフェンスが数字より近く見えるが、NCの長距離砲、パク・ソクミンは「みんなそう言うんだけど、打ってみると結構遠いんです」と笑った。
グラウンドは他の屋外球場と同じく天然芝。韓国の本拠地球場ではコチョクスカイドームでしか人工芝を見ることはない。
外野席にもテーブル席があり一部の座席にはホットプレートが設置されている。日本ではマツダスタジアムのバーベキューができるテラス席が知られているが、韓国にはそれ以前からバーベキューゾーンを設けた球場がある。
以前のマサン球場でもバーベキュー席を利用したことがあるという20代の女性は「前はホットプレートを持ち込む方式だったが、新しい球場では鉄板が設置されている。お肉はセット料金についてくるもの以外は、持ち込みしている。1人当たりの予算はだいたい30,000ウォン(約2,940円)くらいです」と教えてくれた。
6人単位で使用の「ポークベリーバーベキュー席」は週末料金が144,000ウォン(約14,100円)。サムギョプサル用の肉300グラムと野菜、鉄板などのレンタル料24,000ウォン(約2,350円)が含まれている。
クァンジュ、テグと同じく座席の外周が内外野つながっていて一周できるチャンウォンの新球場。開幕戦では試合中、飲食売店の大半で長蛇の列ができていた。日本と比べると店舗の数が少ない印象だが、年間通しての1試合平均の来場者はおそらく、1万人を下回ると予想されることから、適当な数とも言えるだろう。
韓国の球場グルメの代表格はチキンとビール。日本にあるような選手やチームとのコラボメニューはインチョンが本拠地のSKワイバーンズでは実施しているが、韓国ではあまり浸透していない。仲間同士、外のお店で買いそろえた飲食物を持ち込む観客も多い。
昨年は30試合近く、NCのホームゲームに足を運んだという家族連れの30代の男性は「新球場は広くなって快適だ。チームの成績もよくなればもっと嬉しい」と昨季、最下位に沈んだNCに期待を込めた。
日本では元号が変わる5月、10連休と言われる大型連休が待っている。まだ予定が決まっていないという人は、韓国のボールパークを旅先のひとつに検討してはどうだろうか。日本とはひと味違った楽しみ方を通して見聞を広めることが出来るはずだ。