レノファ山口:福満決めた!2試合連続ハット。ピッチも改善、苦手下関を克服
2試合連続ハットトリック。その偉業で勝点3を呼び込んだのは福満隆貴だった。
J3第32節:山口5-0相模原▽得点者=前半9分福満隆貴(山口)、同21分福満隆貴(山口)、同35分福満隆貴(山口)、後半5分小塚和季(山口)、同42分岸田和人(山口)▽3315人=下関市営下関陸上競技場
下関開催にも3千人超の来場
明治安田生命J3リーグも終盤戦。第32節の6試合が10月4日に各会場で行われ、首位のレノファ山口FCは4位のSC相模原と対戦。福満の活躍で早い時間から山口が主導権を掌握し、5-0で快勝した。2位の町田ゼルビアは今節は試合がなかったため勝ち点差は9に広がった。3位のAC長野パルセイロはガイナーレ鳥取を1-0で下している。
山口は今節、背に大きな声援を受けてきた維新百年記念公園陸上競技場(山口市)ではなく、JFL時代から相性としては良くなかった下関陸上競技場(下関市)で相模原を迎え撃った。今季も維新では圧倒的な強さを誇っている山口だが、下関開催では1勝1敗。特に辛酸をなめた6月の町田戦はピッチコンディションが悪く、球速の速いショートパスを多用する山口にとってはホームの利が生かせなかった。
しかし10月4日のピッチは芝が生えそろい、完全とは言えないまでも山口らしさを十分に出せるコンディションにまで整っていた。「本当に下関市にご尽力いただいていてそれが勝利に繋がったのかなと思う」と上野展裕監督。また、入場者数も下関開催としては今季初めて3千人台に乗せ、3315人が声援を送った。
「福満劇場」
ゲームはほとんどの時間帯で山口が主導権を握り、優位に試合を運んだ。立ち上がりこそ相模原の高原直泰とタレスの前線2選手に崩されかけたものの、集中力高く耐えると、最初のチャンスは前半7分。DF香川勇気のクロスをMF福満隆貴が繋ぐと、ゴール前のスクランブルからMF鳥養祐矢らがシュートモーションに入る。これはゴール方向にボールを出すことはできなかったが、一連のプレーが呼び水となって山口時間、もっと言えば福満タイムがスタートすることになった。
福満は同9分、MF小塚和季の右からのクロスに頭から飛び込んで先制弾。「いいボールが上がってきたので思い切って飛び込んだらネットが揺れた」。少ないタッチ数でボールを動かして揺さぶり、フリーになった福満が真骨頂たるその思い切りの良さでゴールを決めきった。さらに前半21分にも追加点。これも小塚の縦パスを起点に、福満が軽いタッチで捌いてミドルシュートをゴールへ。なおも同35分、今度は相手の守備陣にコースを限定されながらも福満は狭い間隙を突いたミドル弾を放ち、前半だけでハットトリックを成し遂げた。「素直に嬉しいし、なかなか点を取れていない時期もあったので、続けられるように自分自身頑張っていきたい」と福満。ただ、「1点勝負になったときに決められるように、まずは1点を狙いたいと思う」とも話し、次戦も地に足を付けてゴールを狙う構えを示した。
前後半とも早い時間にゴール奪う
前半はほとんど相模原に自由を与えなかった山口。後半も入りのリズムは良く、同5分にはさらなる追加点を挙げる。左に開いたFW岸田和人がグラウンダーのクロスを送ると、ゴール前にはMF鳥養祐矢が詰めていたがコースが絞られていた鳥養はスルー。これに詰めていたMF小塚和季が冷静に振り抜いて4-0とした。「味方に感謝したいゴール。味方がゴールさせてくれた得点だと思う」と小塚。さらに同32分、今度はボックス内に入った岸田が体勢を崩しながらもしぶとく仕留めてリードを大きく広げた。
相模原は後半、ベンチ入りした5選手のうちフィールドプレーヤー4人全員を注ぎ込んで流れを変えようと試みる。実際に後半39分にFW樋口寛規がゴールに近い位置から強いシュート。その直後にはアーリークロスをFW服部康平がヘディングでゴールへと近づいていく。しかしそのいずれもGK一森純が好反応。ネットを揺らせないままアディショナルタイムを迎えると、DF森勇介がチェックに来たDF黒木恭平に対して肘を顔面に当てて一発退場。言い訳のできないラフプレーで、辛島啓珠監督も「ああいった形で退場になってしまって何も言うことがないというか、相手の選手には申し訳ない」と肩を落とした。相模原は6試合を残して山口との勝ち点差は19に拡大。ただ長野とは勝ち点5差とまだ大きくは離されておらず、一つずつ白星を積み上げていきたい。
貫くチャレンジャー精神
山口は攻守が噛み合って5-0。DF宮城雅史は「無失点で来たというのは良かった」とクリーンシートに手応えを覚えつつ、「まだまだピンチはあって改善するところはある。一戦一戦無失点で戦っていきたい」と前を見据えた。上野展裕監督は「(福満)隆貴も素晴らしかったが、そこに至るまでのみんなのお膳立てがあった。コンビネーションでうまくフリーにしたのが得点に繋がった。みんなで一試合一試合悔いのないようにしようと誓い合って(ゲームに入り)、悔いのないプレーをしてくれたと思う」と話して、得点を取った選手に加えて周りの献身ぶりも称えていた。
また、山口はJ2クラブライセンスの交付が発表されてから初めての試合。途中出場して守備をしっかり締めたキャプテンの平林輝良寛は「去年は(JFLの)4位で滑り込んだ感じだったが、今年は首位をキープしている。自分たちのやってきたことをやりきれば今日のような試合になる。おのおのがしっかりと自分の役割を果たしていると思うし、みんなが自分の役割をやれる集団になってきている」と話し、ベテランの目にもチームの成長が映った。
下関でも今年は勝ち越し、暫定ながら2位との勝ち点差は9に拡大。シーズンの初めはまだ霞の先にあったJ2は、もはや視界にしっかりと捉えている。それでも手でそれを触るまで志士たちは謙虚さと貪欲さを見失うことはない。「どんな試合もチャレンジャーだと思う。チャレンジャー精神を持って戦いたい」。指揮官がそう思いを込めた。前進を感じながら、ひとつひとつ、一歩ずつ、戴冠の最終章を綴っていく。