IOCの「五輪」商標登録に弁理士らが無効審判請求
「”五輪”今さら商標登録、異議あり 無効求め弁理士ら審判請求」というニュースがありました(中日新聞の読者でないと全文読めません。なお、私は別途記事データベース・サービスで全文を読んだ上でこの記事を書いています)。
ということです。
問題の商標は、商標登録6118624号です。権利者はスイスの「コミテ・アンテルナショナル・オリンピック」、要するにIOCです。登録日は、2019年2月1日です。「オリンピック」という名称、五輪のマーク、公式エンブレム、公式マスコットキャラクターをIOCやオリンピック関連団体が商標登録するのは当然としても、さらに俗称感が強い「五輪」までも商標登録したことをこの弁理士先生は問題とされているようです。
実は、この商標登録には、既に2019年4月に今回と同じ弁理士先生により、異議申立が請求されていますが、請求棄却(登録維持)の決定がなされています。なお、商標法の規定により、登録維持の決定に対する取消訴訟はできませんので、不服がある請求人は別途無効審判を請求せざるを得ません。
しかし、異議申立が誰でもできるのに対して、無効審判は利害関係者しか請求できないとされています(民事訴訟法における「利益なければ訴権なし」と同様の考え方です)。要するに、権利者と訴訟をしている等の事情があれば別ですが、「気持ちの問題」を理由に無効審判を請求しても、利害関係なしということで請求棄却になる可能性が大です。弁理士であれば当然この点は知っているはずなので、どうクリアーしたのかが気になります(なお、記事の続きを見てもこの点は書いてません)。なお、見出しでは請求人は「弁理士ら」となっていますが賛同した弁護士や税理士であるそうです。
ところで、異議の決定の方は、特許情報プラットフォームから見られます。上記の登録のリンクの下の方にある「一部異議2019-900112」のリンクをクリックしてください(残念ながら直リン張れない仕様です)。公序良俗違反(4条1項7号)、類似先登録(4条1項11号)、使用への疑義(3条1項柱書)等が主張されていますが特許庁には認められていません。
なお、この弁理士先生の論稿を読むと、IOCが非営利公益団体であるにもかかわらず公益著名商標をライセンスしていたことへの問題提起をされています。商標法の改正により、2019年5月から公益著名商標のライセンスは可能になりましたが、それ以前のIOC等の商標権管理が違法だったのではないかという問題提起です。冒頭の中日新聞の記事を読むと「五輪」登録商標に無効審判請求という部分だけに注目してしまいますが、実際にはもっと大きな動きの一部と言えそうです。
追記:請求人の弁理士先生自身が自分のブログで審判請求書を公開していました。やはり、上記の公益著名商標のライセンスの問題が中心となっているようです。