銀座で女子マラソントップ3が一夜かぎりの夢のセッション
クリスマスのイルミネーションに彩られた銀座の街に、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で激闘を繰り広げた3人のトップランナーが、一般ランナーと一緒にジョギングを楽しむ姿があった。先に走り終えたランナーは、続々と戻ってくる人たちを「グッジョブ」「ナイスラン」などという言葉と拍手で出迎える。きらびやかな銀座の街に「NIKE GINZA」のオープンを翌日に控える、プレオープンでの1コマだ。
NIKE GINZAには、ランナーに向けて様々なサービスを提供する「NIKE RUNNER’S HUB」があり、今後はランナーの新拠点となりそうだ。そのサービスの1つ、「NRC LIVE」では定期的なランニングセッションが実施される。この日は特別なセッションが行われた。
豪華3人のトップランナーが共演
この日のゲストの3人のトップランナーとは、MGCを制しパリ五輪女子マラソン日本代表に内定した鈴木優花(第一生命グループ)、同2位で2大会連続の五輪出場を決めた一山麻緒(資生堂)、同3位となり3枠目の有力候補となった細田あい(エディオン)。
レースになればライバル関係となる3人だが、一夜限りのランニングセッションで一般ランナーとともにランを楽しんだ。
鈴木は“築地・月島コース”へ。「途中で橋(勝鬨橋)を渡るときに、東京タワーとスカイツリーが見えて、とても綺麗でした。最後が歌舞伎座の前。すごく銀座感を味わえました」
“皇居・東京駅コース”を回った一山は、「東京駅のイルミネーションがすごく綺麗でした。クリスマスマーケットもやっていました」と、この時期ならではのナイトランを楽しんだ。
細田は“東京タワーコース”「小学生の時以来、東京タワーをきちんと見ました。すごく大きくて、ライトアップもされていました。遠くから見えていたのが、だんだん近づいてきて、とても感動しました」。東京のランドマークに圧倒された様子だった。
ランニングの後にはトークセッションも開催された。
最初のトークテーマは、MGCを制した鈴木の強さについて。
「鈴木優花ちゃんは後半苦しいところでもフォームが全く崩れず、ピッチも全然落ちていなかった。最後まで力強い走りをしていて、すごく強いなと思いました」
こう答えたのは一山。終盤まで優勝争いを繰り広げたからこそ、鈴木の強さを間近で感じたのだろう。
一方、中盤から32kmまで一山とともに先頭を引っ張った細田は、鈴木の“冷静さ”を挙げた。
「自分と麻緒ちゃんが(先頭に)出た時に、冷静な判断をして、自分のペースで走ったと聞いて、ああいった展開で冷静さを保てるのはすごいなと感じました。ストライドが大きくて、ダイナミックな走りを最後までできるのもすごかった」
鈴木の力強さ、ダイナミックな走りは、一緒に走った2人にも印象に残ったようだ。
鈴木にはMGCでの勝負の場面を振り返ってもらった。
「先頭に立ったからには“もう行くしかない。後ろを見ないぞ”という気持ちで、ゴールまで向かっていきました」
絶妙な勝負勘と、一気に勝負を仕掛ける覚悟が備わっていたからこそ、手にした勝利だったのだろう。
新しくオープンするNIKE GINZAの印象も聞いた。
「商品の並べられ方がすごくかっこいい。ランニングシューズだけでなくウェアの種類も豊富で、ワクワクしました。早く着たい!」と鈴木。
一山も「カラーごとに商品が並べられていて、見ていてワクワクしました。すごく銀座らしいと思いました」と胸を踊らせていた。
細田はランニングの商品の充実ぶりに驚いた様子。
「タイツだけを見ても、カラフルで種類が豊富。それが見やすく並べられていて、商品を見つけやすい」
ちなみに、細田が銀座を訪れるのは、MGCを除けば、この日が初めてだったという。
来夏に向けての意気込みを語る
一山にとっては、2024年のパリ五輪が前回東京大会に次いで2度目の五輪となる。今度のパリ大会が初出場の鈴木は、一山にこんな質問をぶつけた。
「初めてのオリンピックに臨むまでに一番苦労したこと、大変だったことは、どんなことでしたか?」
それに対する回答はこうだ。
「あえて、精神的にも肉体的にも苦しくなるのがわかっていた場所で3カ月間トレーニングをしたのですが、自分が覚悟していた以上に、メンタル面にも堪えました」
日本勢として五輪女子マラソンの17年ぶりの入賞という快挙は、こんな厳しいトレーニングを乗り越えた先にあったのだ。
続いて、パリ五輪の3枠目を狙う細田は決意を口にした。
「まずはファイナルチャレンジで、確実にオリンピックの代表権を勝ち取ることが自分にとっては大事。それに向けてしっかり土台を作って準備をし、勝ち取りたい。その先で、また勝負できるように頑張っていきたいと思います」
年明けのMGCファイナルチャレンジ(大阪国際もしくは名古屋ウィメンズ)への挑戦を改めて表明。その先のパリもしっかりと見据えている。
すでにパリ五輪出場を決めている一山、鈴木は、五輪に向けて意気込みを語った。
「パリのコースはとてもタフなコースだと聞いています。私は坂があまり得意ではないので、パリに向けて坂とお友達になるぐらいたくさん走って、しっかり脚作りをしたい。“本当に楽しみだな”という気持ちで、スタートラインに立ちたいなと思っています」
一山は、自身の弱点を克服し、2度目の五輪に臨む。
一方、鈴木は、パリの見所が詰まった観光コースを、五輪ごと楽しむつもりだ。
「パリが初のオリンピック出場となりますが、感じたことの無い雰囲気や景色をむしろ楽しみ、支えて下さる皆さんへの感謝の思いを胸に、堂々とスタートラインに立ちたいです。
タフなコースですが、エッフェル塔だったり、ルーブル美術館だったりを楽しんで周りたいと思います」
こんな発言で会場を盛り上げた。
このプレミアムな一夜を盛り上げた3選手が、来夏にそろって日の丸をつけてパリを力走している姿があるかもしれない。