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ナイキ ペガサスの最新モデル「41」が登場。関連イベントで陸上・坂井らが決意を語る

和田悟志フリーランスライター
左から坂井隆一郎、鈴木亜由子、鈴木芽吹(写真提供NIKE、以下同)

 5月の終わりから6月頭にかけて、インスタグラムなどのSNSで、トップアスリートによるビビッドな蛍光色のランニングシューズの投稿が相次いだ。

 このシューズは6月5日に一般発売になったナイキ ペガサス 41。

 “あらゆるランナーのためのシューズ”として1983年に登場し、40年以上にわたって幅広い層のランナーの支持を集めてきたのがナイキ ペガサスシリーズの最新モデルだ。

 一般発売に先立ってメディア向けに行われたメディアセッションでは、女子マラソンの鈴木亜由子(日本郵政グループ)、男子長距離の鈴木芽吹(トヨタ自動車)、男子短距離の坂井隆一郎(大阪ガス)が登壇しトークセッションを行った。ペガサス41の使用感や活用法、そして、現況や今後の目標など自身の競技について語った。

「ペガサス36から履いています」と話すのは、東京五輪女子マラソン日本代表の鈴木亜由子。リオデジャネイロ五輪にはトラックで出場したが、その後、2018年にマラソン初挑戦し、マラソン練習を始めてからペガサスシリーズに足を入れてきた。「非常に安定していて長距離を走っていてもずっとサポートしてくれる感覚がありました」と言い、普段のジョグや朝練習の集団走などの時に着用している。「キロ4分半でも4分でも軽快に走れる」とお気に入りのポイントを挙げた。

鈴木亜由子はマラソン練習に取り組み始めてからペガサスシリーズを愛用している
鈴木亜由子はマラソン練習に取り組み始めてからペガサスシリーズを愛用している

 今年4月から社会人となった鈴木芽吹が初めて履いたのもペガサス36で、高校3年生の時だった。

「シンプルに走りやすい。いろんな場面で使える」と言うように、ジョグはもちろん、20〜30kmの距離走(ペースはキロ3分30秒〜3分40秒)でも使用。さらには、距離走の後にスピードを出して走る際にも履いているという。

「遅いジョグでも使えますし、距離走の後にスピードを出して1000mを2分40秒とか400mを60秒とかで走る場面でも履いています。本当にいろんなペースに対応できるのがこのシューズだと思います」と、あらゆる場面で活用している。

 昨年の日本選手権で男子100mを制した坂井は、ペガサス39から愛用している。ペガサスシリーズは、ウォーミングアップのジョグや試合の移動時などに履いており、「安定感があり、履いていて本当に気持ちが良い」という印象をペガサスシリーズに持っている。

多くのアスリートの声を取り入れアップデート

 ペガサス41が前作から大きく進化したポイントで、まず注目すべきはミッドソール素材が新しくなった点だ。

 リアクト X フォームという素材が使用され、反発性と安定性が向上。前モデルと比較すると、13%以上のエネルギーリターンを提供するという(シューズの機能とは別の話題だが、ミッドソールの製造工程におけるエネルギー使用量が削減され、二酸化炭素排出量は1足あたり少なくとも43%削減するよう設計されている)。また、前足部と踵部にエア ズーム ユニットを搭載しており、クッション性能も抜群だ。

 ペガサス41の開発には、トップアスリートだけでなく、多くの一般ランナーの声にも耳を傾け、その人数は2年間で1000人に及んだという。

 筆者もペガサスシリーズを履いているが、ペガサス41は足入れ感は従来のままに、クッション性が明らかに向上しているのを実感した。それでいて、地面からはしっかり反発を得られた。マイナーチェンジどころではなく、大幅に進化しているように思えた。

 実際に足を入れたアスリートたちの声もお届けしよう。

「抽象的な表現になりますが、本当に優しいなと思いました。足入れした時のフィット感が初めて履いたとは思えないぐらい。優しく包み込んでくれる感じがすごく好きですね。それでいて、反発もしっかり得られるのを感じました」(鈴木亜由子)

「最初に履いたときにクッション性がすごく高まったなって印象を受けました。その上で反発もすごく強くなったなと感じるので、全体的に機能性が高まっていると思いました。以前のモデルと比べると“脚力を鍛える”っていう部分よりも“長い距離を無理なく、足にも優しく走れる”っていう要素がすごく強まったと思っています」(鈴木芽吹)

鈴木芽吹は、ゆっくりジョグの時もスピードを出して走る時にも着用しているという
鈴木芽吹は、ゆっくりジョグの時もスピードを出して走る時にも着用しているという

「前作よりもクッション性があって本当に履きやすい。普段スピード練習をするときには薄いシューズで走りますが、薄いシューズはやはり負担が大きいので、ダウンジョグでペガサス41を履いたときに安心感というか、包み込まれている感じがありました。ジョグをしていて“楽しい”って思えました」(坂井)

 ペガサスシリーズを愛用してきた3選手にも、最新モデルのペガサス41は好評だった。

オリンピックイヤーの新たな決意

 オリンピックイヤーの今季は、3選手にとっても大きな転機の年となりそうだ。

 鈴木亜由子は、女子マラソン日本代表の最後の1枠をかけて3月の名古屋ウィメンズマラソンに挑んだ。

「パリ五輪の代表を目指して全精力を注いだレースになりました。目標達成はできなかったのですが、たくさんの方に応援していただいて頑張りきることができたのは良かったと思っています」

 2大会連続のマラソン日本代表を逃したものの、中盤過ぎに先頭から遅れをとりながらも、終盤に粘りを見せ、自己ベストとなる2時間21分33秒をマークした。

 名古屋のレースの後は、少し休養を挟んだが、現在はチームに合流し再び走り始めている。5月の東日本実業団陸上競技選手権では約2年ぶりにトラックレースに出場。5000mを15分48秒55で走った。

「久しぶりにトラックを走って、今の走力や足りない部分が明確になりました。チームのみんなに刺激をもらいながら今も楽しく走っているので、まずは自分のスピードを取り戻して、駅伝やマラソンにつなげられるように頑張りたいと思っています」

 鈴木芽吹もまた、パリ五輪の選考がかかった5月の日本選手権10000mに出場した。

「この1年の中でも大きく狙っていた大会。学生の頃は故障も多かったのですが、練習も積めるようになったので、すごく自信はありました。でも、直前の疲労を抜くところでうまくいかないところがあって、ラスト1000mで前の3人に勝負できず悔しかったです」

 社会人デビュー戦で27分26秒67の自己ベストをマークし4位に入る健闘を見せたものの、表彰台を逃し悔しさを味わった。

 ただ、「まだまだやれるという感覚もつかめた」と手応えもあった。

「パリ五輪はこれまでの積み上げもなかったので厳しい部分もあったが、来年の東京世界陸上は本気で狙っていこうと思います。

 また、今年のニューイヤー駅伝で優勝したチームに入ったので、駅伝でも、連覇を続けていけるように戦力になりたいです」

 6月にも5000mで日本選手権を控えるが、すでに来年の世界選手権を見据えている。

スプリンターの坂井は、6月の日本選手権でパリ五輪の切符を目指す
スプリンターの坂井は、6月の日本選手権でパリ五輪の切符を目指す

 坂井は、4月中に腸腰筋をケガし出遅れたが、今季初戦となった5月12日の木南道孝記念では男子100mで連覇を果たした。

「他の選手は勢いがあったし、(自身は木南記念が)初戦だったのでとても緊張し、なかなか思うようには体が動かなかったのですが、そのなかでしっかり勝ち切ることができたのは収穫。ほっとしました」

 少し遅めにはなったが、上々のシーズンインを迎えた。

「最大の目標はパリ五輪に100mとリレーで出場すること。そのためには9秒台は必須。9秒台を出してしっかりパリ五輪の代表になりたい」

 その選考がかかった日本選手権に向けて、ギアを上げていく。

 三者三様、それぞれの目標に向かって走り続けている。

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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