韓国で深刻なキムチ不足 背景に「長梅雨」と「記録的台風」
「焼肉屋のランチセットに、キムチが付かなくなってしまったんだよ。」
先日、師と仰ぐ方からこんな話を教えてもらいました。その店には張り紙が貼られてあり、そこにはこのようなことが書かれてあったようです。
『悪天続きの韓国で、原料の白菜の生育不良が起きており、キムチの調達が困難になりました。』
白菜6割高騰
韓国における一人当たりのキムチの年間消費重量は、22キロとも言われています。これは日本人一人当たりの漬物の消費量である3キロをはるかに超える量です。
それだけキムチは韓国人の食生活にとって欠かせないと言えます。キムチ作り、いわゆる「キムジャン文化」は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。
しかし今年の悪天は、野菜の価格に大きな影響を与えています。9月の生鮮食品の価格は22%上昇し、2011年以来の最高値を記録したとBloombergは伝えているほどです。さらに白菜は、60%も値上がりしたようです。ある主婦は店頭で白菜の値段を見て驚き、目をこすって再び確認したといいます。
間の悪いことに、新型コロナウイルスの影響で「家食」が増え、キムチの需要が高まっていて、到底日本にキムチを輸出している場合ではなさそうです。
最長の梅雨に、幾度もの台風
一体どれほどの悪天だったというのでしょうか。
今年日本の梅雨は記録的な大雨となりましたが、同じ梅雨前線がかかる韓国でも、前例のない雨季となりました。
6月下旬に南部から始まった梅雨は50日以上も続いて、観測史上最長となりました。また6月1日から8月15日にかけての中部の平均雨量が920ミリと、例年の570ミリを大きく上回って、観測史上2番目の雨量となりました。
さらに追い打ちをかけたのが、度重なる台風の襲来です。
朝鮮半島には、1951年以降で最多となる5つの台風が上陸しました。そのうち台風9号は、韓国の観測史上最大級の勢力で上陸し、国内史上2番目に低い気圧となる952.5hPaが観測されました。そして数日後に9号とほぼ同じような勢力で10号が韓国に上陸しています。
キムチ漬けシーズン到来
11月後半からは、キムチ漬けシーズンが到来します。
どのような天候が最適かというと、日平均気温が4℃以下、または日最低気温が0℃以下になった時といわれています。仮にこれよりも気温が高いと発酵が進みすぎ、反対に気温が低いと白菜や大根が凍ってしまって、味がよく染み込まないのだそうです。
幸いにして、このところ韓国の天候が安定しており、11月には白菜の価格も下がって、キムチ不足が解消されると当局は予想しているようです。
日本のランチセットにキムチが戻ってくる日も、そう遠くないかもしれません。