供述の嘘と真実:新潟女児殺害事件
容疑者の供述
新潟市西区で小学校2年生の女児が殺害された事件。容疑者は次のように供述していると時事通信などが報じています。
「車で女児にぶつかってしまい、泣かれてパニックになり車に乗せて、首をしめてしまった」
<動機の解明焦点=「ぶつかりパニック」疑問も―新潟小2殺害、逮捕1週間(時事通信)>
報道によれば、彼は、最初から殺意があったわけでもなく、性的な動機があったわけでもなく、交通事故がきっかけの犯罪だと主張しているようです。彼の主張通りなら、殺人罪には問えずに傷害致死になってしまうことも考えられます。
彼の供述が完全に嘘から全部本当までの全ての可能性はあるでしょう。嘘と事実が混ざっているかもしれません。
少女が狙われる事件
少女に危害を加える犯罪の多くは、金目当てなどでなければ、小児性愛者等による性的行為が目的の犯罪です。
幼い子供が昼間の住宅街で連れ去られ、殺害されました。警察は小児性愛者などによる性的な動機の犯罪と推定します。そうすると、犯罪統計から考えて、犯人は見るからに怪しい不審者などではなく、近隣に住む成人男性(20代半ばから40代ぐらい)であり、むしろ優しく子供の扱いが上手いような人で、さらに性犯罪の前歴のある人と推論し、捜査を進めます。
その捜査の網に一人の男性がかかり逮捕され、殺害も認めました。男には、当初報道された1ヶ月前の中学生連れ回し以外の前歴もあるようです。しかし、彼の供述が全て本当なら、これらのことは全て偶然であり、無断欠勤も偶然で、殺人は偶発的なことだったというようなことになります。その可能性は0ではありませんが、考えにくいでしょう。
嘘か真実か、それとも
もしかしたら彼はわざと車をぶつけたのかもしれません。あるいは車で近づいて何かをしようとして、車が接触し、彼女が倒れたり泣いたりしたのかもしれません。
彼は、女児に泣かれて動揺して車に乗せ殺害したと供述していますが、騒がれて動揺したのは本当かもしれません。ただ、性犯罪が目的だったからこそ大きく動揺したのかもしれません。
あるいは、小児性愛犯罪者に見られることですが、本人としては可愛がろうとしたのに(客観的に見れば犯罪的ですが)、騒がれ、侮辱されたと感じて、殺害に至ったのかもしれません。泣きじゃくりながら、「やめて!」「ばか!」などと言われたり暴れたりされたことで、常識的な程度を超えて激昂してパニックになってしまった可能性です。
さらに、その日は初めて無断欠勤をした日で、その道は彼の自宅場所からみて通常は通る必要のない細い道であることからも、ただの交通事故とは考えにくいでしょう。
では、最初から計画的だったのかといえば、そうではないかもしれません。もし最初から計画的なら、無断欠勤などせず、別の日に有給休暇をとったことでしょう。
彼の会社は9連休でした。連休明け、「会社にたどり着けなかった」という彼の言葉が本当なら、何かの原因で、彼の心が折れてしまったのかもしれません。
また彼は、「運転中、胸が締めつけられるような気持ちになり、事故で女の子とぶつかった」とも供述しています。
供述が本当なら、運転中に体調が急変し事故を起こしてしまったことになります。あるいは、「胸が締めつけられ」は、体ではなく心の変化を言っているのかもしれません。またその両方かもしれません。
事件の背景とこれから
彼は、仕事や人生に疲れ、書類送検されるなどいくつかのトラブルを起こし、とうとう無断欠勤をしてしまうまで心理的に追い詰められ、歪んだ欲望が膨れ上がり、車から一人歩きの女児を見かけた時に、胸が締めつけられるほどの心の高鳴りを経験したのかもしれません。
いずれにせよ、彼はまだ死体遺棄・損壊の容疑者です。彼は全て事実を話しているのかもしれませんし、全て意図的な嘘かもしれません。あるいは、客観的な事実とは違いますが、彼が感じたことを話しているのかもしれません。事実の解明には時間がかかるでしょう。
メディアの人から個人的に聞いた話によると、新潟県警は他の警察よりも口が堅いそうです。警察外に出ていない情報も多いでしょう。「事実の解明」は、正しい裁判と判決のためだけではなく、苦しんでいる地元の人々の願いでもあり、そして今後の同種の犯罪防止のためにも、重要なことなのです。