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札幌―室蘭結ぶ「特急すずらん」 ダイヤ改正で「利用者激減騒動」から8ヵ月の現状は…室蘭駅は無人駅に

鉄道乗蔵鉄道ライター
特急すずらん号(写真AC)

 2024年3月のダイヤ改正で、全席指定席化と窓口での往復割引切符の廃止を行った札幌―室蘭間を結ぶ特急すずらん号。この影響で利用者は激減し、ダイヤ改正以降は空席が目立つ車内の様子が相次いでSNS上に投稿され、大きな注目を集めていた。

 ダイヤ改正前までは、札幌―室蘭間は当日購入可能な自由席の往復割引切符であれば約5000円で利用できたが、現在は当日購入では正規の運賃と特急料金で往復約1万円と2倍近い値上げとなった。一方で、高速バスであれば札幌ー室蘭間は片道2500円、往復割引で4680円となっている。

 インターネット予約のえきねっとで前日までに予約をすれば、割引された金額で利用できるが、ネット上で完結したシステムではなく、駅窓口などで紙の切符を発行しなければ予約した列車に乗車することはできない。

 特急すずらん号は当日に予約なしでお手軽な金額で乗車できることが魅力であったことから、予約システムが煩雑になってしまったことも利用が敬遠されるひとつの要因となっているようだ。こうした騒動からはや8カ月が経ち、特急すずらん号の現状はどうなっているのか、筆者は札幌―室蘭間で乗り通してみた。

えきねっと予約したきっぷ(筆者撮影)
えきねっと予約したきっぷ(筆者撮影)

指定席uシートの4号車以外は空席が目立つ

 特急すずらん号は、1日6往復が設定されており、うち1往復は札幌―東室蘭間で、5往復は札幌―室蘭間で運行されている。札幌発の列車については、朝7時30分発の特急すずらん2号は東室蘭行で運行されていることから、次の11時24分発の室蘭行特急すずらん4号に乗車することにした。途中の東室蘭駅には12時54分に到着、終点の室蘭駅には13時7分に到着する。全区間の所要時間は1時間43分だ。

 筆者は、11時過ぎに札幌駅の自動改札機を通り、特急すずらん4号が発車する7番ホームへと向かった。線路を挟んだ隣側の9番ホームには、特急すずらん号で使用されている785系電車が停車していたが、しばらくすると小樽方面に引き上げていき、この車両が発車5分ほど前に7番線へと入線し、そのまま特急すずらん4号となった。

 特急すずらん号は、えきねっとを使えば割引金額で利用でき、前日までに予約できる特急トクだ値1であれば3,380円、14日前までに予約できる特急トクだ値14であれば2,860円となる。筆者は、トクだ値14で4号車を指定したが、特急すずらん号は自由席車を主体として運行されていた時代の名残で、指定席uシートとされていた4号車とその他の車両では車内設備に大きな差があるにもかかわらず金額は変わらない。

 こうした事情を知っている乗客は4号車を優先して予約を入れることから、特急すずらん号の4号車はほかの車両と比べて混雑しがちであるが、それでも左右の窓側が埋まる程度の乗車状況で他の車両では空席も目立つ。

 特急すずらん4号は、苫小牧、登別と終点に近づくにつれて、乗客数を徐々に減らし東室蘭駅で大半が下車。終点の室蘭駅で降りたのは20名弱となっていた。

 JR北海道ではダイヤ改正以降、北海道内各地で「えきねっと」の説明会を実施。報道によると7月4日までに東室蘭では最多となる17回の説明会を実施したという。

 なお、JR北海道が11月20日に発表した10月31日までの収入・利用状況については、特急すずらん号と特急北斗号が走る東室蘭―苫小牧間の4月1日から10月31日までの年度累計が前年比98.9%。新型コロナウイルスの影響がない2019年4月から10月の平年比では84.4%とされていた。

室蘭駅に到着した特急すずらん号(筆者撮影)
室蘭駅に到着した特急すずらん号(筆者撮影)

終点の室蘭駅は10月から無人駅に

 特急すずらん号の終点となる室蘭駅は、この10月1日から無人駅となってしまった。現在は、みどりの窓口に代わって特急指定席などの発券が可能な「話せる券売機」が1台導入され、近距離きっぷの販売と併せて対応しているという。

 北海道の室蘭登別エリアを拠点に活動するフリーライターの日下部千里さんによると「室蘭駅の無人化により、管理上の都合からか室蘭市の掲示物が駅から撤去されるなど、地域の拠点としての駅の役割が低下し、寂しく思っている人もいるようだ」が、「室蘭市の中心エリアが東室蘭地区に移っていることもあり、現在の室蘭駅周辺は官公庁がメインの地区になっている現状がある」そうだ。

 特急すずらん号についても、「予約が煩雑になった上に、前日予約可能な特急トクだ値1であっても高速バスと比較して割高となっていることから、室蘭市周辺に拠点を置く企業では出張時に高速バスの利用頻度が高くなったところもある。また、鷲別駅など特急停車駅であるにも関わらず、ネット予約したチケットの受け取りができない駅もあるなどの点が気になっている」といい、本当であればJRを使いたいが値段が高く不便であることから、やむなく高速バスを利用せざるを得ないという地域の本音が垣間見えた。

 特急すずらん号の利用客回復のためには、えきねっと利用の理解促進だけではなく、沿線利用者が許容できる料金体系と、インターネット上で完結できる分かりやすい予約システムの構築が必要なのではないだろうか。特急すずらん号の利点としては、定時性や速達性、さらに広々とした車内はバスよりも快適な面がある。

 利用者のニーズは複合的な部分があり、こうした特急すずらん号の利点と、価格面で利用者が許容できる範囲内に収まっているのかのバランスで考える必要があり、例えば、現在の利用状況を見て「利用者は安さを求めている」と判断し、車両のグレードを落とし快速化を検討することなどは、やや安直なのではないだろうか。

10月から無人駅となった室蘭駅(筆者撮影)
10月から無人駅となった室蘭駅(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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