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スウェーデンとノルウェーでの留学生活は今 新型コロナで激変した暮らし

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
スウェーデン南部のべクショー市の街並み 撮影:ルーさん

ルーさんは、スウェーデンのべクショーという街でリンネ大学に通っている(本人の希望で匿名)。

授業はオンラインに切り替わった。

本来ならば対面で行うはずだった議論などは、オンラインでは難しいと感じることもあるという。

寮での時間を有効に使う

外出は週に1回の食品の買い出しと、湖に散歩に出かけるだけにしている。

「人と会う機会を控えているので、精神的に辛い時もあります。しかし、こんなにも部屋の中に籠ることは一生のうちで今しかないと考え、エントリーシートを書いたり、料理をしたり、言語を勉強をしたりとできるだけ有効に、かつ楽しむようにしています」

「寮ではキッチンが共有なので、そこで会う人との会話や現地の友人、日本にいる家族や友人と電話をして過ごしています」

日本の大学の教授が定期的に元気かどうか連絡をくれるため、精神的にも心強い支えになっている。しかし、不安も残る。

就職活動はどうなるのだろう

「私の滞在地は感染が広がっている都市とは離れているので。まだ感染者はいません。それでも、もし現地で感染してしまったら、自分はひとりでどう対応できるのかが不安です」

「現在就職活動中なので、先が見えない不安もまた大きいです」

キャンパスに隣接する湖に散歩に出かけた際の一枚 撮影:ルーさん
キャンパスに隣接する湖に散歩に出かけた際の一枚 撮影:ルーさん

ノルウェー留学、勉強する場所がなくなった

片岡澪奈(かたおか れいな)さん(21)は、ノルウェーのベルゲン大学に通う。

3月11日から4月中旬頃まで学校が閉鎖となった。授業はオンラインになったが、突然の変化に全てがうまく対応しているわけではない。

「授業の1つは先生の都合でオンライン授業が開講されず、講義のパワーポイントのみ掲載という状態です」

「いつも図書館や学校のカフェテリアで勉強していたのですが、今は閉鎖されているので自分の部屋で勉強することしかできません。壁の薄い寮なので、どうしても周りの音が気になってしまい集中しにくいです」

「今は5人以上で集まることすらできないので、友人との交流が減りました」

ベルゲン市内のバスでは、社交的距離のために、運転手席に乗客が近づかないようにされている Photo:Reina Kataoka
ベルゲン市内のバスでは、社交的距離のために、運転手席に乗客が近づかないようにされている Photo:Reina Kataoka

できるだけ一人で過ごすようにはしているが、ストレス解消も必要だ。

「時々2~3人の友達と集まって、ご飯やお菓子を作っておしゃべりすることでストレス解消かつ、いい交流になっています。健康のために外を歩くことは許されているので、天気のいい日は散歩したり、ノルウェーでのアクティビティの一つである山登りをしています」

ひっそりと静まり返った市内 Photo:Reina Kataoka
ひっそりと静まり返った市内 Photo:Reina Kataoka

「これは友達の話なのですが、日本の大学から留学中止の連絡が来て急遽帰国することになり、4月からは寮に住まないのにもかかわらず、退寮予定の5~6月まで家賃を払わなければならないそうです。多くの帰国者がこのような状態になっておりFacebookを通して署名活動を行っているようですが、話を通すのは難しいようです」

「バスや電車、お店などに新型コロナに関する情報が書かれているものを見かけるのですが、ノルウェー語だと、外国人である私にとっては理解が困難です」

「コーヒーが好きなのですが、現在はほとんどのカフェが閉まっています。帰国までにある程度再開してほしいと願っています」  Photo:Reina Kataoka
「コーヒーが好きなのですが、現在はほとんどのカフェが閉まっています。帰国までにある程度再開してほしいと願っています」  Photo:Reina Kataoka

心ない一言に傷つくことも

片岡さんは現地に半年以上住み、移民の多い街でもあることから、差別という経験はなかったという。新型コロナがくるまでは。

「日本人の友達と路面電車に乗っていたのですが、窓越しに現地の4~5人の中学生くらいの男女のグループがいました。そのうちの1人の男子に、『コロナ!』と指をさされました。おそらくアジア人だということを根拠に」

「他の国の日本人学生も差別にあっている話を聞いていましたが、まさか自分がこの町でされると思っていなかったので、少し驚きました。中学生くらいの子だったのでショックではなく少し腹が立ちました」

帰国前に、大好きだった街をもう一度見たい

途中で帰国はしないと判断したが、帰国する時には飛行機が運行しているだろうか?片岡さんの頭に、不安はふつふつと沸いてくる。

ノルウェーとスウェーデンから、日本へ戻る前に、彼女たちが願うことがある。

「自分の大好きな街を、この身でまた感じたい」。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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