ハーパーが退団したにもかかわらず、球団史上初のワールドシリーズ進出。そのメンバーはこうして集められた
昨シーズンの終盤、ワシントン・ナショナルズは、FA直前のブライス・ハーパーに対し、10年3億ドルの契約を申し出た。ハーパーはそれを断り、今年3月に13年3億3000万ドルでフィラデルフィア・フィリーズへ入団した。
フィリーズとナショナルズは、どちらもナ・リーグ東地区に属している。ハーパーが加わったフィリーズは、5月23日の時点で29勝21敗。地区首位に立っていた。一方、ハーパーが去ったナショナルズは、同じく50試合を終えて19勝31敗。フィリーズに10ゲーム差をつけられ、地区4位にいた。
だが、フィリーズは81勝81敗の地区4位でシーズンを終えた。ナショナルズはリーグで3番目に多い93勝を挙げ、ワイルドカードをゲット。ポストシーズンでも勝ち進み、1969~2004年のモントリオール・エクスポズ時代を含め、球団初のワールドシリーズへたどり着いた。
リーグ優勝を決めた時のロースターは、プロ入りからナショナルズに在籍している生え抜きの選手が7人(ドラフト5人、海外アマチュア2人)、他球団からナショナルズへ移籍した選手が9人(トレード8人、ウェーバー1人)、他球団でプレーした後にFAとなってナショナルズと契約した選手が9人という構成だった。トレイ・ターナーはメジャーデビュー前にナショナルズへ移っているので、生え抜きに近いと見ることもできる。いずれにせよ、ロースターの内訳は、ほぼ3等分。生え抜き、移籍、FAが3分の1ずつだ。
また、半数を超える13人は、ハーパーがFAとなった後、ナショナルズに加わった。そこには、ナショナルズ在籍が2度目の3人、カート・スズキ、マット・アダムス、アズドゥルバル・カブレラも含む。アダムスはここ2シーズンともナショナルズでプレーしているが、昨シーズンの終盤はセントルイス・カーディナルスにいた。8月下旬にウェーバーを経由してナショナルズからカーディナルスへ移り、オフにFAとなってナショナルズと再び契約した。
昨オフ、ナショナルズは5人のFAを迎え入れた。ただ、ハーパーを引き留めるために用意した資金を、彼らにそっくり費やしたわけではない。アニバル・サンチェス、スズキ、ブライアン・ドージャー、アダムスの契約は、4人合わせて4200万ドルだ。いずれも年平均1000万ドル未満で、期間も長くない。パトリック・コービンとは6年1億4000万ドル(年平均2333万ドル)の大型契約を交わしたが、それを足しても、合計は1億8200万ドル。ハーパーに提示した額の3分の2に届かない。
FAとの契約だけでなく、トレードを含めても、昨オフ以降に加わった13人のうち、大物はコービンしかいない。なかでも、シーズン途中に契約した3人、ヘラルド・パーラ、フェルナンド・ロドニー、アズドゥルバル・カブレラは、他球団が「捨てた」ところを「拾って」きた。
ハーパーの不在を感じさせなかったのは、生え抜きのアンソニー・レンドーンとホアン・ソトだ。2人ともホームランを34本ずつ打ち、四球も80以上。OPS1.010と.949はリーグ3位と6位にランクインした。ちなみに、ハーパーは35本塁打と90四球を記録したものの、OPSは19位だった。ちなみに、20歳のソト(と22歳のビクター・ロブレス)は、ナショナルズが迎えた「ポスト・ハーパー時代」の旗手だ。レンドーンはワールドシリーズ終了後にFAとなるが、ワシントン・ポストによると、ナショナルズは7年2億1000万~2億1500万ドルの契約を申し出ているという。
先発投手陣ではコービンが期待に応え、マックス・シャーザーとスティーブン・ストラスバーグとともに三本柱を形成した。3人とも、防御率は3.35以下。4人目のサンチェスも、防御率3.85を記録した。4人が規定投球回をクリアして防御率4.00未満は、両リーグでナショナルズのみ。ブルペンの防御率はリーグ・ワーストの5.66ながら、500.2イニングはどこよりも少なかった。
なお、25人のなかにワールドシリーズの経験者はいるが、そこで優勝した選手はいない。