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どこが頂点に!? 甲子園準決勝

森本栄浩毎日放送アナウンサー
怪物清宮の早実は秋の王者・仙台育英と。二枚看板の東海大相模は打の関東一と激突

高校野球100年で注目された夏の甲子園も45校が姿を消し、4校に絞れられた。東日本に有力校が多いという大会前からの予想通り、関東3校、東北1校が勝ち残った。春夏甲子園で決勝を経験した名門、強豪ばかり。18日は休養日で、調整を終えた4強は節目の大会での頂点を目指す。

仙台育英(宮城)ー早稲田実(西東京)

自在の投球見せる仙台育英エース

花巻東(岩手)、秋田商と、東北勢を連破して4強入りした仙台育英は、秋の明治神宮大会を圧倒的な強さで制し、センバツでも優勝候補の一角に挙げられていた。2回戦で、優勝した敦賀気比(福井)に惜敗したが、このチームの強さは疑いようがない。

佐藤世の速球がコーナーに決まれば連打は難しい。さらにフォークを自在に操る
佐藤世の速球がコーナーに決まれば連打は難しい。さらにフォークを自在に操る

エース・佐藤世那(3年)は、140キロを超える速球とフォークボールを自在に操る。予選は好不調の波が激しかったが、本大会では安定している。初戦の明豊(大分)戦で初回、平沢大河(3年)が先制アーチを放ってチームに勢いがついた。平沢は対戦相手のマークが厳しく、2,3回戦は無安打に終わったが、秋田商戦では先制アーチを架け、打線を目覚めさせた。打線は下位までムラがなく、ビッグイニングを完成させる。26年前の夏には東北で最も優勝に近いチームと言われたが、惜しくも準優勝。第1回大会決勝で秋田中(秋田高)が京都二中(鳥羽)に敗れて以来、100年の歴史で春夏10度の東北勢決勝はいずれも準優勝に終わっている。仙台育英は地元出身者が多く、東北の雄として、今回こその期待が大きい。

早実 清宮の勢いは止まらず

大会前から「怪物」と言われた清宮幸太郎(1年)が、試合を重ねるごとに調子を上げ、チーム全体が波に乗っている。

早実打線の勢いはすべて清宮のバットにかかっている。準決勝で3試合連続アーチなるか
早実打線の勢いはすべて清宮のバットにかかっている。準決勝で3試合連続アーチなるか

初戦が1安打1打点。2回戦が2安打1打点。3回戦の東海大甲府(山梨)戦で、甲子園1号を含め3安打5打点と爆発し、準々決勝の九州国際大付(福岡)戦でも2試合連続アーチにフェンス直撃二塁打と、甲子園を謳歌している印象。九国の岩崎魁人捕手(主将=3年)が、「打たれてはいけない選手に打たれた」と悔やんだように、清宮が打つと球場の雰囲気が一変する。打線も清宮の後を打つ加藤雅樹(主将=3年)や6番の富田直希(3年)が本塁打を放つなど、相手投手は息を抜けない。懸念された投手陣は、主戦の松本皓(3年)が準々決勝を完投したのが大きい。球威はそれほどでもないが、内外角を丁寧に突いて的を絞らせない。左の上條哲聖(3年)や球威のある服部雅生(1年)も調子が上がっている。100年前の第1回大会にも出場し、9年前には斎藤佑樹(日本ハム)の活躍で甲子園を沸かせた。全国屈指の「甲子園に愛されるチーム」と言える。

自在エースが好調打線を止められるか

焦点は佐藤世が早実打線の勢いを止められるかだ。高い技術を持つ佐藤世は、凡打にしとめるフォークと三振を狙うフォークを投げ分ける。今大会は速球がコーナーに決まり、連打を許していない。清宮に打たれると全体が勢いづくため、徹底マークが必要だ。逆に早実は5回までにリードして、不安の残る投手陣を援護したい。また、清宮は九国戦で左手親指を痛めていて、その状態もポイントになる。複数の投手がそこそこの力を持つ早実に比べ、仙台育英は佐藤世が傑出しているため、控えの百目木(どめき)優希(3年)の起用には勇気がいる。むしろ百目木は、8打数5安打と好調なバットに注目だ。総合力は仙台育英に分があるが、早実は1回戦から全て涼しい第1試合で連戦がないという日程運にも恵まれている。

東海大相模(神奈川)-関東一(東東京)

ダブルエースの優勝候補・東海大相模

大会前から優勝候補一番手の呼び声高く、2,3回戦を危なげなく勝った東海大相模は、準々決勝で初めて追う展開を強いられた。ようやく8回に追いつき、花咲徳栄(埼玉)をサヨナラで振り切ったが、苦戦を経験したことは今後に生きるはずだ。

吉田は準々決勝で速球が走らず、KOされた。準決勝以降チャンスは訪れるか
吉田は準々決勝で速球が走らず、KOされた。準決勝以降チャンスは訪れるか

左腕の小笠原慎之介(3年)、右腕の吉田凌(3年)の豪腕2枚は、投手力で4強他校を寄せ付けない。特に小笠原は、救援登板した徳栄戦で追加点を許さず、逆転につなげた。吉田は速球の調子が上がらないようで、変化球に頼った投球になっているのは気になる。打線は4番の豊田寛(3年)がやや不調だが、徳栄戦サヨナラ打の3番・杉崎成輝(3年)、5番・磯網栄登(3年)が絶好調で得点源になっている。7日目に初戦を迎え、調整は難しかったようだが、消耗は少なくチーム状態もいい。同校は、昭和45年夏に強力打線を擁して甲子園初優勝。その後センバツでも優勝し、5年前の夏も準優勝と、激戦神奈川では横浜と並ぶ強豪として知られる。15日には、同校を初優勝に導いた故原貢氏の育成功労表彰に、長男の原辰徳・巨人監督が訪れた。原親子が甲子園で果たせなかった甲子園優勝を後輩たちが成し遂げられるか。

関東一はオコエ軸に積極走塁

関東一は、春の都大会で早実を18-11で破った。このスコアが示すように、今年の東京2代表は、打撃優位の評判だったが、早実がそうであるように、関東一も投手陣の復調が4強につながっている。初戦の高岡商(富山)には、序盤8点をリードしながら、先発の左腕・阿部武士(3年)が連打を浴びて流れを失った。この試合は4投手が全員失点という失態で、打線の援護がなければ負けていた内容。それが3回戦の中京大中京(愛知)戦では見違える投球を披露した。2試合連続先発の阿部が好守にも助けられて4回を無失点で切り抜けると、金子尚生(3年)が5回2安打無失点の完封リレー。準々決勝の興南(沖縄)の粘りも、田辺廉(3年)-金子のリレーで凌ぎ切った。

オコエは打棒だけでなく、ダイナミックな走塁と俊足を生かした堅守も兼ね備える
オコエは打棒だけでなく、ダイナミックな走塁と俊足を生かした堅守も兼ね備える

打線は1番のオコエ瑠偉(3年)が出塁すると活気づく。2試合連続本塁打の5番・長嶋亮磨(3年)の好調さが目を引くが、このチームの強さは積極的な走塁にある。オコエに刺激を受けたことは間違いないだろうが、先の塁を狙う姿勢はすばらしい。相手の守備陣にプレッシャーをかけ続け、流れを渡さない。28年前のセンバツでは、PL学園(大阪)に敗れたが準優勝。その後もコンスタントに甲子園を経験し、安定した成績を残している。

先発起用とその出来が勝敗左右

投手陣に厚みがある東海大相模が優位。ただ、ポイントは両校とも先発投手の起用とその出来だ。東海大相模は、ダブルエースと言われたが、現状、小笠原の方がはるかに好調。準々決勝でKOされた吉田は悔し涙にくれていたが、奮起を促す意味で起用するか、小笠原に全てを任せるか。関東一は、好調の金子を救援に温存したいだろう。先発は左の阿部かエースナンバーの田辺か。関東一はオコエが出塁して、相手投手を消耗させたい。両校とも予選から苦戦が少なかったが、準々決勝の激闘を経験したことで、終盤の粘り合いになれば熱戦が期待できる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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