水道水のPFOS・PFOA調査公表、暫定目標値超え「ゼロ」でも考えておくべき課題
PFASとは有機フッ素化合物の総称で、多くの製品に使用されています。PFASは非常に安定した性質を持ち、自然界でほとんど分解されないため、人体や生物の体内に蓄積しやすく、さらに長距離を移動するという特徴があります。
PFASの中でも、防汚剤や撥水剤などで利用されてきたペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、人体への影響が懸念されてきました。これらは現在、製造、輸入、使用が禁止されていますが、自然界で分解されることはほとんどなく、水に溶けやすい性質から、川、地下水、水道水などに流出することがあります。
こうした背景を受け、国土交通省は全国の水道におけるPFOSおよびPFOAの検出状況を調査しました(「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査の結果について」)。調査結果によると、暫定目標値を超過した事業は2020年度には11事業ありましたが、年々減少し、2024年度(9月30日時点)にはゼロとなりました。
今後の課題として、以下の3点が挙げられます。
①検査を実施する事業者の増加
全国には約3,800の水道事業者(2024年時点/国土交通省)が存在しますが、検査を実施したのはそのうち1,745事業者、全体の46%にとどまります。検査の徹底が課題となる一方、小規模な事業者では人材不足や検査費用の負担が障壁となっている可能性があります。
②暫定目標値の今後
厚生労働省は2020年4月にPFOSおよびPFOAを「水質管理目標設定項目」に指定し、暫定目標値を合計で50ng/L以下と定めました。この値は「体重50kgの人が一生涯、毎日2Lの水を飲み続けても健康に悪影響が生じない」とされる水準です。一方、欧米では基準値がより厳しくなる傾向にあります。例えば、ドイツは2023年に飲料水1リットルあたりのPFOSやPFOAを含む代表的な4種類のPFAS濃度を合計で20ng以下に抑える規制を導入しました。また、デンマークでは2021年にさらに厳しい規制を設け、4種類のPFASの合計を2ng以下に制限しています。仮にこのレベルの基準が日本でも採用された場合、多くの水道事業が該当することが予想されます。現在、PFASをめぐる研究は急速に進展しており、評価基準が見直される可能性もあります。
③排出源の特定
PFAS問題を根本的に解決するためには、排出源を特定し、その対策を講じる必要があります。米軍や自衛隊の基地・空港、過去にPFOSやPFOAを使用していたとされる工場などが発生源として指摘されていますが、具体的な特定作業はほとんど進んでいません。特に、日米地位協定による制限で米軍基地への立ち入り調査が難しいことが、大きな障壁となっています。