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日本代表指揮官の腰手術はサンウルブズが発表。ジェイミー・ジョセフが談話。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
都内グラウンドにて。左がジョセフ。身振りを交え病状を説明する(著者撮影)。

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦するサンウルブズの運営法人、一般社団法人ジャパンエスアールは、6月26日、1本のリリースレターを配信した。日本代表の指揮官でもあるジェイミー・ジョセフヘッドコーチの一時離脱についてだ。

 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの運営法人である一般社団法人ジャパンエスアール(東京都港区、会長:上野裕一、CEO:渡瀬裕司)(以後、JSRA)は、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが自身の腰痛の治療に専念するため、6月のテストマッチシリーズ終了後、ニュージーランドへ一時帰国することが決まりましたことを、お知らせいたします。

 スーパーラグビー2018シーズン残り3試合(ラウンド17ブルズ戦、ラウンド18ワラターズ戦、ラウンド19レッズ戦)は、トニー・ブラウン アシスタントコーチがヘッドコーチ代行として指揮をとります。

 JSRAは、11月のテストマッチシリーズおよび来年開催されるラグビーワールドカップ2019TMを見据え、ジョセフヘッドコーチが万全の状態で望めるよう、スーパーラグビー2018シーズン終了を待たずに、彼がサンウルブズのヘッドコーチ職から一時離れ、帰国することを決断いたしました。ジョセフヘッドコーチは今後2カ月間に渡り腰の治療に専念いたします。

 この決定に伴い、ジャパンエスアールは26日の午前練習後にジョセフの取材機会を設定。当日は指定された集合時間から約1時間後、チームミーティングを終えたジョセフが報道陣に約17分間、囲まれた。

 ジョセフは6月24日まで約1か月、日本代表のテストマッチ3連戦ツアーを指揮。サンウルブズは6月29日以降のスーパーラグビー再開に向け17日に集合しているが、ジョセフは練習に姿を見せていなかった。

 

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――症状は。

「長年、腰痛を抱えていました。下半身まで連なるものです。1年目(日本代表ヘッドコーチ就任後のことか)は注射を打っていましたが、最近はその効果が出なくなりました。今季に入り、4回注射を打ち、強い鎮痛剤を毎日飲んでいました。手術はワールドカップ後までで待とうと思っていましたが、グラウンド上に1日中立っていると痛みが強くなる一方。そうなると機嫌も悪くなる。

 いまのうちに手術しないとトップリーグ(8月下旬開幕)の最初の4週目ごろに戻ることとなり、それはセレクションにも影響が出そう。いま手術をするとトップリーグの開幕(視察)には間に合う。

 日本代表とサンウルブズの両チームを見ていますが、優先順位を考えると(日本代表の挑む)来年のワールドカップ(日本大会)が一番。苦しい決断でしたが、いま手術をするという選択をせざるを得ませんでした。

 サンウルブズのスポンサーの方々へは感謝を述べたいです。彼らの支援なくしてサンウルブズは成り立ちません。シーズン終了前にヘッドコーチがチームを離れるのは理想的でないことは、よく理解しています。ただステークホルダーの方々に理解して欲しいのは、コーチングチームの意思統一はできています。絆は強いです。トニー・ブラウンもスーパーラグビーのチームを何年も見ていて、戦術的にも経験値的にもうまく束ねられる人に代行を任せます」

――離脱中、サンウルブズの試合は。

「常に見ます。日本代表勢で、今週はオフを与えている選手がいます。去年、6月のテストシリーズ終了後のライオンズ戦で完敗しています。その反省を活かし、選手にレストを与えています。いま参加している日本代表勢は、非常にモチベーションを高く保っています。それは、テストシリーズであまりチャンスを得られなかったからです。あれだけ成功を収めたシリーズが終わったなか、いいエナジーを出してくれます。その翌週は、リーチ マイケル、流大、姫野和樹が戻ってきます。2つのチームを見たことの良さは、両チームのコーディネーションが取れ、戦えるチームを2つ作れたことです」

――症状などについては。

「腰骨の一部が神経にぶつかっています。神経にぶつかっている部分を取る手術をします。ヘルニアは以前、抱えていて、すでに手術は1度しています。まぁ、何せ痛いです。手術は選手時代にいっぱいしていますが、常に怖いです。この年だと、余計にそう感じます。

 痛みがこの選択をプッシュしました。私はタフで、ある程度のことは耐えられると思っていましたが、この痛みだけはどうしても耐えられない。あと3週間なのでスーパーラグビーも最後までやりたかったですが、5~6週間前のバイウィークでニュージーランドへ帰った時、担当医から『手術した場合はリハビリに数か月かかる』と言われました。自分の年齢(48歳)も考慮してこの時期にやると決めました。

 スーパーラグビーの残り3週が不在になるのか、トップリーグの開幕から数週間が不在になるのかという2つのオプションがありました。前者のオプションを取ると決めたのは、つい最近です」

――ニュージーランドへの帰国と手術のタイミング。

「明日帰り、来週手術をします」

――来日時期は。

「未定ですが、トップリーグ開幕前となります」

――この発表を日本代表サイドの日本協会からではなく、サンウルブズサイドのジャパンエスアールからおこなったのはなぜですか。

「(日本語で)わかりません」

――離脱中の選手選考は。

「トニー・ブラウンが全権を握ります。長年の相棒ですので、考えは共有できています」

――選手へは何と伝えたか。

「選択せざるをえない決断に迫られたこと、こういう形になり残念だということと、いま皆さまと共有している事実関係を伝えました。日本代表の選手には6月のテストシリーズ終了後に伝えていましたが、外国人選手にはさっき言いました」

――ここまでのスーパーラグビーを通し、収穫と課題は。

「いい仕事ができたと思います。トップリーグが終わってすぐにプロ集団としてやらなくてはならないなか、よくやったと思います(以前からジョセフは、トップリーグを「社員選手もいるアマチュア(のリーグ)」と表現)。勝つのが難しい状況下、移動も多く、どのチームより経験値が少ない。それでもやろうと思ったのは、6月のためです。今年6月の結果を見ると、サンウルブズでの仕事が功をなしていると思います」

――来季の指揮は。

「たぶん。ただ、未定です」

――改めて、日本のスーパーラグビー参戦の意義は。契約は2020年までとなっていますが。

「個人的にはそれ以降も続けた方がいいと思います。外国人選手の代表資格取得者は、今後どんどん少なくなります。(2019年のワールドカップ日本大会後から)資格を得るまでの連続居住期間が3年から5年に延びるためです。今後、外国人の日本代表選手は、高校か大学から日本へ来る選手が主となりそうです。海外のスーパーラグビープレーヤーが来日するのは大体27~28歳くらいで、彼らが代表資格を得るのは30代ということとなります。日本ラグビー界が自問自答すべきは、国際舞台で戦う組織になりたいのか、国内リーグだけで満足するのかということです。それは皆さま(報道陣)にも聞きたいです」

 大本番を見据えて身体へメスを入れることとなったジョセフは、プロクラブのボスとしてまずステークホルダーへの説明責任を果たした。「グラウンド上に1日中立っていると痛みが強くなる一方。そうなると機嫌も悪くなる」という言葉に、サンウルブズが初勝利を決めた5月ごろの選手の談話が重なる。

「勝つとコーチ陣の機嫌がいい」

 ジョセフが今季からサンウルブズのヘッドコーチとなったのは、2016年秋から率いる日本代表の強化を促すためだった。とはいえ今回の発表を日本代表側かサンウルブズ側のどちらがおこなったかについて、本人はさほど重要視していないようだ。

 担当者から「質問はあと2つ」と言われてから2つ目に出たスーパーラグビー参加継続に関する問いかけへは、「国際舞台で戦う組織になりたいのか、国内リーグだけで満足するのか」と回答。日本という国が世界で戦うための最善策については、継続した議論が求められそうだ。

 ジョセフは27日、日本代表のヘッドコーチとしても会見予定。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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