バレー美人姉妹や女子ゴルフの新星登場でも伸び悩む韓国スポーツ新聞事情
年末を迎え、あらゆる業界で1年を振り返りその年に活躍した人物を表彰する式典が多くなる今日この頃だ。
韓国でもプロ野球KBOリーグにサッカーのKリーグ、プロゴルフなど各種競技団体やメディア主催の授賞式が連日のように行われている。
先週12月9日には東亜日報のスポーツ新聞『スポーツ東亜』が主催する『2019東亜スポーツ大賞・授賞式』があった。
同授賞式はまだ歴史は浅いが、韓国の5大プロスポーツ(野球、サッカー、男女バスケットボール、男女バレーボール、男女プロゴルフ)を網羅する唯一の賞として知られている。日本の「報知プロスポーツ大賞」に近い授賞式と言えば、わかりやすいだろうか。
今年の『東亜スポーツ大賞』には、プレミア12にも出場したヤン・ヒョンジョン(プロ野球)、柏レイソルからレンタル移籍中ながらKリーグMPVを受賞したキム・ボギョン(Kリーグ)、日本でも「韓国女子バレー美人双子姉妹」として話題になったイ・ジェヨン(プロバレーVリーグ女子部)らが選ばれた。
(参考記事:「あの美女選手は誰?」女子バレーボール韓国代表の“双子姉妹”は何者か)
そのほか、イ・ジョンヒョン(男子プロバスケKBL)、キム・ハンビョル(女子プロバスケWKBL)、パク・チョルウ(プロバレーVリーグ男子部)、ムンギョンジュン(男子プロゴルフKPGA)、チェ・ヘジン(女子プロゴルフKLPGA)なども選ばれている。
チェ・ヘジンは以前に本欄でも紹介した通り、まだ20歳。日本で言えば渋野日向子ら“黄金世代”から選ばれたようなものだけに、さぞや韓国でも若いスター出現に盛り上がってるのだろう。
と思いきや、その後に会った顔見知りのスポーツ新聞記者たちの表情が今ひとつ浮かない。
気になって旧知の間柄であるスポーツ新聞のデスクや部長級に昇進した先輩記者に尋ねてみると、最近、韓国では新聞メディアを取り巻く状況がますます厳しさを増しているという。大手一般紙の専任記者(編集委員のようなも)も嘆いていた。
「企業や宅配の定期購読は落ちていないが、地下鉄の車内で新聞を読んでいる人はゼロに等しい。かつては新聞を販売していたコンビニでも新聞を扱う場所は少なくなり、駅の売店でも見かけなくなった。人々の関心は多様性してニュースの需要は増えているのに、紙の新聞は読まれなくなった」
実際、韓国ABC(Audit Bureau of Circulations)協会が12月6日に発表した『2019年度(2018年分)全国日刊紙発行・有料部数認定結果』によると、韓国の日刊紙174社が発行した新聞部数は938万6408部で、前年比(つまり2017年度)よりも26万4379部(2.75%)も少なかったという。
2015年と比べると5%、2010年と比べると26.6%も落ち込んでいるというだから、韓国でも“新聞離れ”に歯止めがかからないのがわかる。
そんな中でも特に顕著なのがスポーツ新聞の部数低下だという。
韓国には現在、1969年発刊の『日刊(イルガン)スポーツ』、1985年の『スポーツソウル』、1990年発刊の『スポーツ朝鮮(チョソン)』、2004年発刊の『スポーツ京郷(キョンヒャン)』、2005年発刊の『スポーツワールド』、2008年発刊の『スポーツ東亜(トンア)』、2015年発刊の『韓国スポーツ経済』など7つのスポーツ新聞がある。
その7紙合計の2019年度発行部数は52万5119部。かつてスポーツ新聞全盛期は1社で60〜70万部を発行するところもあったが、現在は7社合計でも60万に届かない状況だというのだ。
ちなみに『スポーツ韓国(ハングッ)』や『MKスポーツ』というものもあるが、紙の新聞は発行していないインターネット・メディア。『MKスポーツ』は毎日経済新聞が母体で、『もっと!コリア』のメディア名で日本展開もしている。
インターネットでの日本語版展開という点ではそのほか、『イルガン・スポーツ』が中央日報日本語版に、『スポーツ朝鮮』が朝鮮日報日本語版に、『スポーツ東亜』が東亜日報日本語版に記事提供しており、韓国スポーツ新聞協会の会長社である『スポーツソウル』の場合は昨年10月から日本語版を展開している。
韓国のスポーツや芸能関連のニュースが日本でも需要があるためだが、肝心の紙新聞の部数と売上が落ち込めばそういった海外展開にも影響が出てくる可能性がある。
いずれにしても、韓国でも今、新聞メディアの存在意義が問われているのは間違いない。
ライフスタイルの変化によってニュースに触れるのは紙の新聞ではなく、スマートフォンなどのモバイル端末という人が増加したことで、新聞のあり方も変わりつつある。
ただ、今年6月に韓国ABC協会が実施した調査によると、「韓国国民の54%が新聞メディアのニュース報道を信頼している」という結果も出ている。フェイクニュースやまとめ記事、「引用」の許容範囲を超えた無断翻訳や2次利用が横行している昨今だからこそ、新聞メディアの役割も重要になってくる。
冒頭で紹介した授賞式に価値と権威があるのも、新聞メディアが主催しているからでもある。日本でもオールドメディア、レガシーメディアと呼ばれる新聞だが、このまま衰退していくのは惜しい。