ブルガリア・ボリソフ政権、内閣総辞職-次期新政権の手腕問われる
ブルガリアのソフィア通信社(電子版)などが伝えたところによると、同国のボイコ・ボリソフ首相は20日、先週末の17日から首都ソフィアなど全国20都市余りでチェコ電力大手CEZの現地法人ブルガリアCEZによる電気・暖房料金の大幅引き上げに抗議する大規模な市民デモが起きた事態を重く受けとめ、早期の混乱収拾を図るため、内閣を総辞職する方針を明らかにした。
これを受けて、ブルガリア議会は21日にもボリソフ内閣の総辞職を承認する見通しで、その後、ロセン・プレブネリエフ大統領は次の議会選挙が開かれるまでの暫定内閣を決めるもよう。もともと議会選挙は7月に予定されていたが、今回の内閣総辞職により、4月に早まるとの見方が有力だ。ボリソフ首相はすでに18日に社会混乱を鎮めるため、不人気のシメオン・ジャンコフ財務相を解任していた。
市民デモは首相による内閣総辞職の発表後も続いており、約1000人の首相反対派と数百人の首相支持派がソフィアの中心部に集まり、対峙する形となったが、現時点では警察隊の介入で暴動は回避されているもようだ。
政府は事態の収拾を図るため、ボリソフ首相は19日の記者会見で、ブルガリアCEZの電気事業者免許は同日中に取り消されるとの見通しを示していたが、20日の会見では3月1日までに電気料金を8%引き下げることを明らかにしている。
一方、ブルガリアの電力・水道事業の監督当局である国家エネルギー・水規制委員会(DKEVR)は19日の時点では、ブルガリアCEZの電気事業者免許を取り消す手続きを開始していたものの、20日にはDKEVRは即時の免許取り消しから一歩後退し、その代わりに、4月16日までにCEZに対し、すべての違反行為を是正させる方針に転換。免許取り消しについてはDKEVRの新体制下で再度調査するとして先送りしている。CEZも事態収拾に向けて、必要があれば賠償金の支払いに応じる方針を示している。
しかし、チェコ紙プラハ・デイリー・モニターによると、チェコ政府は、ブルガリアのボリソフ政権がCEZの電気事業者免許のはく奪は外国企業による投資保護を定めているEU(欧州連合)規則に抵触するとして猛反発しており、また、ブルガリアの市民デモではすべての電気事業の国営化を求めていることから、今後、ブルガリアの新政権はEUを巻き込んだ形で国内外からの厳しい政治圧力にさらされ、対応に苦慮する恐れがある。
ソフィアでは17日、数万人の市民が抗議デモに参加し15年ぶりの大規模な市民デモに発展。一部の市民は石やガラス瓶を投げるなど暴徒化し、議会やCEZの本社に向かったため、これを阻止する警官隊と衝突し、4人が逮捕されている。CEZはブルガリア西部で200万軒の一般世帯や企業に電気や暖房サービスを提供している。(了)