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「学校で教えてもらった」は82.0%…小中高校生のネットリスクの学習状況(2023年更新版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
インターネット利用時の注意事項を子供に教える父親(写真:アフロ)

パソコンや携帯電話、とりわけ最近ではスマートフォンを使ってインターネットのサービスを利用する際には、多様な決まりごと、トラブルの回避方法などを習得しておく必要がある。それらは知っている人、慣れている人には当たり前の内容ではあるが、知識の無い、経験の浅い人にはとても重要な事柄に他ならない。その習得実情について、内閣府が2023年3月に確定報を発表した「令和4年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の調査結果から確認する。

子供達に、これまで有害サイトやネットいじめの問題など、インターネット上で発生しうる危険について、説明を受けたり学んだりしたことがあるかを聞いた結果が次のグラフ。「学校などで教えてもらった」との事例がもっとも多く、直近では82.0%を占めている。

なお2018年以降は2017年までと質問の仕方が多少変更されており、厳密には連続性は無い。一部選択肢でイレギュラー的な変動が生じているのは、それが原因と思われる。

↑ 青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだりしたことがあるか(複数回答、全体比)(2022年)
↑ 青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだりしたことがあるか(複数回答、全体比)(2022年)

↑ 青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだりしたことがあるか(複数回答、全体比)
↑ 青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだりしたことがあるか(複数回答、全体比)

「学校などで教えてもらった」に次いで多いのは親などの保護者から教えてもらった事例で、これが3割強。テレビや本などの媒体経由、インターネット、友人経由が続く。

経年推移を見ると、携帯電話契約時の説明(特にフィルタリング関連)の促進が行われていることもあり、「機器購入時に店員に教えてもらった」とする回答値が以前は少しずつ増えていた。しかし2014年以降は減少を示しており、残念な形となっている。

他方「学校などで教えてもらった」「保護者から教えてもらった」は増加を示しており、関係界隈における啓蒙活動の促進が成されていることが分かる(2018年で大きな減少を示しているのは上記の通り、質問方法の変更によるものだろう)。スマートフォンの普及にとどまらず、携帯ゲーム機など多様な機器でインターネットへのアクセスが容易になったことから、子供を見守る立場の大人たちが一体となって鋭意努力を重ねていることがうかがえる。

2020年で「学校などで教えてもらった」が大きく減っているのは、新型コロナウイルス流行により学校そのものが休校になった事例が多々あったからだと思われる。一方で「保護者から教えてもらった」「テレビや本、パンフレットで」「インターネットで」が増えているのもそれによるものだろう。2022年では再び「学校などで教えてもらった」が前年比で大きく減り、その分「保護者から教えてもらった」が増えているのは興味深いところではある。

「保護者から教えてもらった」は直近では34.2%。見方を変えれば約2/3の子供は保護者からネットマナー・リスクについて教えてもらっていないことになる。詳細データを確認すると、照れなどもあるのだろうが、子供の年齢が高くなるに連れて保護者から教わる率は低下する傾向がある。もう少し、保護者側の積極的な教育啓蒙姿勢をお願いしたいところだ。

もっとも小学生はともかく、中高生を子供に持つ保護者の場合、それも難しい。教えさとす場合には、まず保護者自身が十分な情報知識を得る必要があるからだ。

↑ 保護者自身は青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだことがあるか(複数回答、全体比)(2022年)
↑ 保護者自身は青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだことがあるか(複数回答、全体比)(2022年)

↑ 保護者自身は青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだことがあるか(複数回答、全体比)
↑ 保護者自身は青少年に不適切なサイトやネットいじめの問題などインターネットの危険性についてこれまで説明を受けたり学んだことがあるか(複数回答、全体比)

あくまでもこれは学んだ経験があるか否かであり、最初から不足なく知識を持ち合わせていれば問題はないが、すべての保護者がそのような知識を持っているとは考えにくい。その上で、この学習・説明経験率はいくつかの項目で明らかに上昇傾向にあり(2018年で不規則的に減少している理由は上記の通り)、状況は改善されていると判断はできるが、それでもまだ不足していることも否めない。「学校の保護者会・PTA会合で」「テレビや本、パンフレットで」「保護者同士の会話で」などが減少傾向にあるのは気になる動きだが。

保護者も子供とともに学ぶ姿勢こそ、求められているのかもしれない。

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※令和4年度青少年のインターネット利用環境実態調査

2022年11月3日から12月12日にかけて2022年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(困難な場合は訪問配布訪問回収法やウェブ調査法も併用)で行われたもの。回答側の事情次第で郵送回答法を併用している。有効回答数は青少年が3230人(うちウェブ経由は450人、郵送回収法は222人)、保護者は3276人(うちウェブ経由は491人、郵送回収法は236人)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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