Yahoo!ニュース

冷凍調理食品の購入性向をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
お手軽に美味しい料理が作れる冷凍調理食品(写真:イメージマート)

冷凍技術の進歩による味の向上や量産効果による低価格化、そして中食需要の拡大に伴い、総菜同様に冷凍食品も注目を集めている。家計単位での購入性向の実情と過去からの推移を、総務省統計局の家計調査の公開結果から確認する。

まずは直近データとなる2022年第4四半期(Q4)の、冷凍調理食品の世帯購入頻度(※)と支出金額を、一か月分に換算したのが次のグラフ(総世帯(全部の世帯)、単身世帯、二人以上世帯が揃って取得可能なデータのうち、更新間隔が一番短いのは四半期単位。「Q」は四半期を意味する)。単身世帯の場合、一か月の購入額は309円、世帯購入頻度は66.0%なので、10世帯に7世帯近くが月あたり1パッケージを購入している計算になる。

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(一か月あたり)(2022年Q4)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(一か月あたり)(2022年Q4)

冷凍調理食品は単身世帯で需要があるように見えるが、案外買われていない。一方、二人以上世帯では月2回ほど、世帯単位の購入金額も900円近くと、結構な額が出ている。二人以上世帯の1世帯あたり平均人数は3人近く(2.90人)であることを考えると、おおよそだが単身世帯と同じような頻度・金額が二人以上世帯で生じている(例えば単身世帯の支出金額309円に二人以上世帯の平均人数2.90をかけると896円となり、二人以上世帯の支出金額に近いものとなる)。

「冷凍調理食品の購入性向」の推移だが、残念ながら月次の具体的な数字は二人以上世帯でしか調査されていない。そこで月次で二人以上世帯について前年同月比でグラフを作成し、実情を確認する。

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、前年同月比、月次)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、前年同月比、月次)

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、世帯購入頻度:100世帯あたり・支出金額:円、月次)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、世帯購入頻度:100世帯あたり・支出金額:円、月次)

前年同月比では世帯購入頻度・支出金額ともにプラス圏の月が多く、明らかに購入度合が増えていることが分かる。具体的な数字の動向を見ても、右肩上がりであることが確認できる。2014年4月・2019年10月の消費税率引上げの影響を受け、支出金額が底上げされているのも一因だが、その影響だけならば世帯購入頻度までは上昇しない。明らかに利用性向はアップしている。お弁当に添えるおかずとして、食卓の「もう一品」的な彩りとして、食生活に彩りを添える便利な存在として、大いに有効活用されているようだ。数年前までは「食卓のおかずに一品を加えるため、冷凍食品や総菜を購入するのはアリかナシか」との議論がされていたのも、今や懐かしい話ではある。

とりわけ2015年に入ってからは、前年同月比においては世帯購入頻度・支出金額ともにプラス圏での挙動がほとんどとなっている。食生活に小さからぬ影響が生じている感は強い。また、2014年夏から2016年夏ぐらいまでは支出金額の上昇幅が世帯購入頻度を上回っており、価格の値上げが大きく影響していることがうかがえる。他方2011年夏から2014年夏まで、2016年夏以降は両者の動きはおおよそ一致しており、単純に世帯購入頻度が増して、結果として支出金額も増えていることが推測できる。また2018年に入ってからは世帯購入頻度の前年同月比が支出金額のそれを上回っており、支出金額そのものは少数ながらも利用する世帯が増えていることを想起させる。

また2020年の春ぐらいからそれ以前と比べて明らかに増加の度合いが顕著になっているが、これは新型コロナウイルスの流行により巣ごもり現象が生じ、買い置きができて調理が容易な冷凍調理商品の需要が増えたのが要因だろう。世帯購入頻度より支出金額の上がり度合いの方が大きいことから、まとめ買いのスタイルが進んだものと推測される。2021年後半にかけて大きなマイナスが出ているのは、前年同月の反動以上のものでしかない。新型コロナウイルスの流行による巣ごもり化は継続中だが、前年同月と比べて落ち着いたと判断し、冷凍調理食品の購入が減ったという人もいるのだろう。

冷凍調理食品の技術は常に向上中であり、販売種類数の増加だけで無く、自然解凍で美味しく食べられるもの、調理のサポートを果たす提案型食材(切り分け済みの野菜や、特定料理用の素材としての提供)など、多方面の開発が行われている。場所を取るのが難点ではあるが、買い置きができるのもありがたい。また電子レンジで解凍するだけで調理が可能なものが多く、手間を省きたい時には大変頼もしい存在となる。

今後時間が惜しい就業単身世帯層、調理に難儀する高齢層を中心に、冷凍調理食品はさらに浸透していくに違いない。

■関連記事:

【子供の夜食に冷凍食品、最上位に選ばれたメニューは!?】

【お弁当の冷凍食品利用率約8割、専業主婦のお昼では7割近く】

※世帯購入頻度

世帯単位での該当期間の購入頻度。例えば特定の世帯において該当期間に誰かが2回冷凍食品を購入すれば、その世帯における冷凍食品の世帯購入頻度は200%(100世帯あたり200)になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事