日本は個人所得税18.8%・法人所得税13.4%…国民負担率の内訳の国際比較をさぐる
消費税や社会保険料の料率や金額の動向が話題だが、これは生活に直結するお金の話だから。これらの国や社会全体のための個人や組織の金銭負担に関する諸外国の実情を、租税部分を少し詳しく区分して、OECD(経済協力開発機構)のデータベースOECD.Statの公開値(※)から確認する。
次に示すのはこの区分に基づいた国民負担率の内情の対GDP比と、構成比率。実データは原則2022年が最新だが、一部の国ではまだ2022年分が算出しきれていないため(オーストラリアなど)、その国では2021年の値を適用している。
日本の国民負担を他国と比較すると、消費税や個人所得税の割合が小さい一方、社会保障費が大きい実情が見て取れる。また資産税も大きい。
消費税に関してはチリは別としても欧州圏でおおよそ高めの値が出ている。これは【諸外国における付加価値税の標準税率の推移(財務省)】の説明にある通り、EU諸国においてはEU指令によって付加価値税の標準課税が15%以上とすることが定められているため。欧州圏の国は「大きな政府」となりがちで、文化的な後押しがあるのかもしれないとの仮説があるが、この取り決めもその文化的傾向によるものかもしれない。
他方日本だけでなくアメリカ合衆国、カナダなど非欧州圏ではおおよそ消費税の構成比率が低め。日本でもすでに消費税率は10%に達しているが、そして上記の解説の通りたばこ税や自動車税などが合算されても、OECD内では対GDP比、国民負担の構成比ともに小さい水準にとどまっている。
消費税の対国民負担における構成比率で日本とほぼ同率のアメリカ合衆国を比較すると、アメリカ合衆国は個人所得税の比率が日本の2倍以上ある一方で法人所得税の比率は低く半分以下。
他方、社会保障費では日本はアメリカ合衆国の2倍に迫る構成比率を示している。両国の国民負担の実情、消費税による国民負担が低い国のそろばん勘定の違いがよく見えてくる次第ではある。
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※OECD.Statの公開値
言葉の定義は次の通り。国に対する金銭的な負担(国民負担)は大きく租税と社会保障に分けられる。図式としては国民負担=租税負担+社会保障負担。OECDでは社会保障負担に関して「Social security contributions」で定義をしているが、それによれば将来における何らかの不利益に対して国から便益(社会給付)を受ける資格を得るために必要な強制的支払いであると定義している。具体的には事故や障害、病気に対するサポート、老化や障害などに対する年金支払い、医療費などへの対応などが該当する。日本ならば健康保険料や年金保険料が該当する。会社組織の場合、従業員が支払う額に加え、会社側が負担する額も含まれる。社会保障や租税の仕組みは国々で異なるため、個々の値を単純比較するのは問題が生じるが、OECD側では極力同一の基準で合算し、比較ができるような値として公開している。
租税負担の区分は次の通り。
・個人所得税
「1100 Taxes on income, profits and capital gains of individuals」。個人の所得(収入から経費や控除を引いたもの)。国と地方の合算。
・法人所得税
「1200 Taxes on income, profits and capital gains of corporates」。法人の所得(収入から経費や控除を引いたもの)。国と地方の合算。
・社会保障費
「2000 Social security contributions」。一般政府から社会給付を受けるための義務的徴収金。各種社会保険料。
・賃金・労働力税
「3000 Taxes on payroll and workforce」。賃金の一定率や人数あたりで就業者に課せられる税。社会保障費と異なり、一般政府からの社会給付との連動性は無い。
・資産税
「4000 Taxes on property」。資産の所有や取引(贈与や相続など)などに課せられる税。資産の売却益は個人所得税や法人所得税に分類。
・消費税
「5000 Taxes on goods and services」。付加価値税、消費税。それ以外に個別の商品やサービスの売買や利用などに課せられる税(日本ならたばこ税や自動車税など)。
・その他の税
「6000 Taxes other than 1000,2000,3000,4000 and 5000」。上記のいずれにも該当しない租税。
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