現金と預貯金の比率、日本54.1%・米国13.4%…日米の家計資産構成比率の推移(2023年公開版)
家計のお財布事情は人それぞれで、さらに国により金銭関連の制度も異なるため、金融資産の中身も大きく違ってくる。日本とアメリカ合衆国の前世紀からの推移をOECD(経済協力開発機構)の公開データベース「Household accounts」で確認する。
次に示すのは「Household accounts」に収録されているデータを基に、日本とアメリカ合衆国における家計の金融資産の主要項目に関する平均的な構成比率を算出したもの。なお「株式以外の証券」とは主に債券を意味する。
まずは日本。最新値は2022年分。
日本は現金と預貯金による金融資産の保有スタイルを好む傾向がある。元々の貯蓄スタイルとして浸透していることに加え、リスク系資産に係わる制度整備が他国と比べて遅れていること、そして何よりも高齢者比率が高いことから、安定的な資産の保有を望む人が多くなるのが原因。保険・年金の比率が高めで一定率を示しているのも特徴的。
また株式・出資金の値を見ると、ITバブルや金融危機ぼっ発以前の株高の時期に比率が拡大しており、株価上昇に合わせて株式投資を行う人も増え、相乗的に株式・出資金額が増加し、比率も増加したようすがうかがえる。少なくとも1995年以降の年ベースでは、現金・預貯金の比率が5割を切ったのは1995年、そして2005年と2006年のみとなっている。もっとも投資信託に目をやると、多少の振れ幅を見せながらも少しずつ増加している。これもまた興味深い動きではある。
続いてアメリカ合衆国。こちらも最新値は2022年分となっている。
青色部分、つまり現金と預貯金が多かった日本と比べ、緑色、つまり株式・出資金が極めて大きくなっているのが一目でわかる。また株式以外の証券(≒債券)や投資信託の値も大きく、いわゆるリスク系資産が大いに好まれている。他方、保険・年金は日本とさほど変わらない。
極めて大雑把な例え方になるが、日本の現金・預貯金のうち4割程度を株式や投資信託などのリスク系金融資産に振り分け、残りを低リスクの保険・年金に配分したのがアメリカ合衆国のスタイルといえるだろうか。
また金融危機ぼっ発以降の動きを見ると、株式・出資金比率が減ったのは多分に評価額の減退や損切りによるものだが、現金と預貯金や株式以外の証券(≒債券)の比率が大きく増加しているのも注目に値する。この増加は単なる相対的なシェアの上昇によるものだけでなく、実際に額面も増加している。株式以外の証券(≒債券)は景況感の回復とともに比率・実額双方とも減少しているが、現金と預貯金は比率こそ減っているものの額面は大きな変化が無く、アメリカ合衆国の金融資産の保有スタイルに変化が生じてきたことを表す指標の一つといえる。
ただし直近数年に限ると、株式・出資金や投資信託が増え、株式以外の証券や保険・年金が減る傾向が見られる。特に2021年では記録のある1995年以降初めて、株式・出資金の比率が4割に届き、保険・年金が3割を割り込む形となった。アメリカ合衆国の家計金融資産における大きな変化の前触れなのだろうか。直近年では株式・出資金の比率は39.2%と再び4割を切ったが、保険・年金は3割を割り込んだままだ。
残念ながら国全体の家計資産総額は公開されていないものの、家計単位での金融資産の中身の違いがよく分かる結果となっている。今後も多少の変動はあるかもしれないが、基本としては両国ともこのスタイルを維持することだろう。
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