酢コショウ餃子発祥の店「赤坂珉珉」 酢コショウはどうやって生まれたのか?
ここ数年の昭和レトロブームも相まって、「町中華」の人気が再燃している。
昭和の時代から長く続く個人経営の町の中華屋さん。昔から通っている人からすると当たり前の風景だが、昭和を知らない若い世代からは“リアルに残る昭和”として新鮮に映るらしい。最近の町中華の人気店には若者客が増え、人気の再燃とともに客層も広がってきている。
先日11月27日放送のTBS系「サタデープラス」(MBS制作)に出演し、「マニア厳選!絶対行くべき町中華ランキング」を紹介させていただいた。タレントの彦摩呂さんとモデルのゆうちゃみさんと名店3軒を回った。
今回はその中で取り上げた赤坂の「赤坂珉珉」をもう少し詳しくご紹介する。
「赤坂珉珉」は赤坂8丁目の住宅街の中に潜む隠れ家的な町中華。1965年創業。
どの駅からも割と距離があり、便利な場所ではないが、昼夜行列のできる大人気店だ。
戦後の焼き餃子ブームを牽引したといっても過言ではない名店「珉珉羊肉館」(現在は閉店)で修業し、暖簾分けしたお店と言われる。
こういった歴史もあり、のちに餃子が有名なお店になったが、いちばん初めに話題になったメニューは「ドラゴン炒飯」。メニューボードの中でもひときわ目を引くこのメニュー。どんな炒飯なのか?
中毒性の塊「ドラゴン炒飯」
その正体は、ニラとニンニクたっぷりの超暴力的なお味の炒飯。一度食べると病みつきになってしまう。
茨城産のこだわりのお米を、一晩寝かせた卵と炒め、大量のニラを加える。
非常にシンプルな製法だが、ここでしか食べられない独特な炒飯に仕上がる。
酢コショウ餃子は「赤坂珉珉」が発祥
先代から店を引き継いだ二代目は、先代の大きな壁に苦しみながら、「ドラゴン炒飯」に次ぐ新たな看板メニューを模索していた。
「伝説の餃子店出身の店なのだから、もっと餃子を話題にしたい」
そう思った二代目は、餃子をもっとたくさん食べてもらうにはどうしたらいいか考えた。
餃子といえば、醤油・酢・ラー油で食べるのが定番。
だが、これでは味が強すぎて何個か食べると飽きてしまう。そこで二代目は酢とコショウをつけて食べることを思いつく。
こうすると驚くほどさっぱりと食べられ、何個でも食べられてしまうのだ。「珉珉」の餃子は決して味が強いわけではないが、結構な量の酢コショウをつけても味が壊れないから不思議だ。餡が皮パンパンに入っているので、さっぱりと食べられることが大事だったのだ。
こうして“酢コショウ餃子”が生まれた。今ではツウの食べ方として知られるが、酢コショウは「珉珉」が餃子を話題にするために生まれたものだった。今では1日1000個出ることもあるという。
「珉珉」では店員さんが酢コショウを作ってくれるのがお決まりの光景。卓上には醤油は置いていない。醤油のない餃子店は本当に珍しい。
味はさっぱりだがジューシーな鶏の唐揚げ
そしてもう一つのオススメは鶏の唐揚げだ。
豪快に盛られた唐揚げは、見た目以上に味がさっぱりしていて本当に美味しい。
山椒塩をかけて食べるのが「珉珉」流。外側はカリッと仕上げてあり、中はジューシーで理想の唐揚げといえるだろう。
長い歴史の中で、二代目が考案した酢コショウ餃子が「珉珉」を長く愛される人気店に成長させた。
今や「赤坂珉珉」は常連客のみならず若者客がいっぱい。さっぱりと食べられる酢コショウ餃子が、若い世代の町中華ブームにぴったりハマったのだから面白い。
赤坂珉珉
東京都港区赤坂8丁目7−4
※写真はすべて筆者による撮影