ヨーハウグ選手が涙声で語る「私の正直な言葉を信じない人がいることは変」 ノルウェー禁止薬物陽性騒動
禁止薬物陽性反応を示したノルウェーのクロスカントリースキーのテレーセ・ヨーハウグ選手。13日の記者会見以降、一度も現地取材に応じないことに、地元の記者などからは批判の声があがっていた。
27日、同選手は緊急でインタビューに応じる。通常であれば、記者会見だが、特定の大手メディアを厳選しての短い単独インタビューとなった。NTB通信社と国営放送局の生中継映像で、「記者会見後、落ち込みがひどく、時間が必要だった」と涙声で説明し、ナショナルチームと合同トレーニングをできないことなどに落胆していると話す。
「私は無実、(薬品の確認は)医者の仕事だった」
現地メディアへのインタビューで、同選手は、「箱ごとクリームをフレデリック医師からもらい、部屋で箱を開け、説明書などは見ないで捨てました。箱にドーピング注意印があったかはわかりません。私は箱を全くみなかったのです」。
「私にはフレデリック医師ほどの医療の知識はありません。彼は私の医者、チームの医者です。それが彼の仕事です。私は彼の言うことを100%信用しました」
また、ダーグブラーデ紙の取材に対し、「信頼は崩されました。私が今いる状況に失望しています。間違いを犯したのは、フレデリック医師です」と答える。
「ノルウェー国民は、あなたのことを信用できますか?」という国営放送局からの質問に対し、「はい」と答える。また、「自分のせいではないという主張に、変わりはありませんか」という問いに、「変わりはない」とする。
「私は現実主義者です。処分がくだるまでに、時間がかかるだろうと思っています」
「自分の身体の中にあるものは、自分の責任だとはわかっています。私は、医師に聞くことで、その責任をとっています」と記者会見で答えていたヨーハウグ選手。VG紙のインタビューでは、だからこそ、信頼する医師からもらった薬を、「ネット検索する理由はなかった」と答える。
ライバル国である北欧他国では厳しい報道が相次いでいる。フィンランドではスーパーが「ノルウェーサーモンを買ったら、リップクリームが無料」という皮肉キャンペーンを実施。スウェーデンでは、26日スウェーデンのAftonbladet紙の世論調査で10人中4人のスウェーデン人が、「ヨーハウグ選手は故意にドーピングしたと思う」と答えた。
フィンランドやスウェーデンの人々が選手を信用していないことに対して、「変だと思います。私はオープンで、正直に話しているのに。人は、自分が信じたいことだけを信じます」。
選手生命を諦めることも考えた
「もう無理だ、とも考えましたが、心の中で、どうしても熱くくすぶっているものがあります。ノルウェー中から、たくさんの愛と応援の声をいただいています。だから、もう隠れたくないと思ったのです。私はカムバックして、ノルウェーのために戦い、メダルを獲得します」。
彼女を信じましょう
国営放送局のクロカン専門コメンテーターのビョーン氏は、「彼女がつらそうであることは見ていてわかります。私たちは、私たちがずっと知っているヨーハウグ選手を信じることができるでしょう。彼女は医師のせいだと言っていますが、医師もそのことには青信号をだしています。私は彼女を信じます。彼女はずるいことはしません。ヨーハウグ選手は、無事にカムバックしてくるでしょう」と生中継でコメントした。
国営放送局が記事を掲載したフェイスブックのコメント欄には、「信じています!」、「かわいそう」、「悲劇」と選手を応援する声が殺到している。「箱をしっかり読むべきでは?」、「医者に全責任を負わせるのはおかしい」という声もあるが、少ない。
国内は応援したい感情論であふれる
クロカンという国技で、国民からの圧倒的な後押しがあるだけ、「信じる・信じない」、「人間もミスをする」などの感情論が中心で議論されているのは、ノルウェーの特徴といえる。選手の処分が最終的にくだされるのは、年明けになるとみられている。
Photo&Text: Asaki Abumi