「手ぶらで買い物可能」生体認証と電子タグ(RFID)による無人販売の実証実験、東京大手町へ行ってみた
「手ぶらで買い物」が可能に?
三菱地所が、東京・大手町ビル6階で「いろんな人が集まり、ここで会話をしながら新しいビジネスが生まれる」コラボラティブスペースを運営している。名前はInspired. Lab(インスパイアード・ラボ)。
この一角に、いわゆる「セルフコンビニエンスストア」がある。指紋認証で冷蔵ケースを開けることができ、決済は、登録口座から引き落としのキャッシュレス。
株式会社Liquid(リキッド)とパナソニック株式会社が、手ぶらで商品を購入できる「無人販売ショーケース」を共同開発したのだ。その場に行かずとも、遠隔地で在庫管理や賞味期限の把握ができ、食品ロス削減にも繋がる。
パナソニック株式会社のプレスリリースで見つけて、早速、現場へ行ってみた。
商品に付いた電子タグで情報を把握
冷蔵庫に入っているものは、比較的、賞味期限が長めのもので、単価が高いもの。たとえば蔦屋書店でも販売されていた「食べる削り節」1,000円、など。
商品一つ一つに電子タグ(RFID)が付いており、冷蔵庫に付いている読み取り機が、どの商品を何個取ったのかを読み取る。いったん、手に取ったものをやめたい場合、戻せばいい。
冷蔵庫の内側面にアンテナがあり、これが、冷蔵庫の中に電子タグ(つまり商品)が何個あるかを読み取れるようになっている。
冷蔵ケースの扉に電磁ロックが付いており、これが鍵になっている。指紋認証で解錠するとドアが開く。ドアを閉めると、冷蔵庫の中に入っているものを全て数え、入っていたものと無くなったものとの差を見て冷蔵庫に表示される仕組み。
メリット:遠隔地でも購買数や在庫管理、賞味期限の把握が可能
このシステムを使えば、たとえ店舗でなく、遠隔地の物流センターや本社でも在庫数などの情報を把握できる。在庫数の管理はどの企業もやっているが、スーパーで今、まさに弁当が売れた、となると、在庫数をリアルタイムに把握するには、その場にいればわかるが、遠隔地ではわからない。
これが普及すれば、「今、ここに何個入っているから、もうこれ以上作り過ぎると余るよ」とか、「今、どんどん売れているから、もう少し作ってもちゃんと売りきれそうだね」など、過剰生産による食品ロスを防ぎながら、経済的なメリットも果たすことが可能になる。
今回の「無人販売ショーケース」は、自動販売機にも似ている。が、既存の自動販売機は、あらかじめ決められた商品しか置けない。入れるのも大変だし、賞味期限の管理もある。だが、この実験で使っているショーケースなら、ありとあらゆる商品を置くことが可能だ。電子タグが付いているので、賞味期限の把握も遠隔地からできる。
無人販売ショーケースであれば、ここのカフェの営業時間が終わる21時以降でも購入できる。
家庭用はもちろん業務用でメリットが高いのでは?
経済産業省が2019年2月28日まで実施していた実証実験では、経産省の本庁舎1階に、電子タグを読み取る機能がある家庭用冷蔵庫が展示された。
今回の実証実験のメリットは、業務用で、より発揮されるかもしれない。
話によれば、冷凍マグロが保管されている倉庫はマイナス50度以下の極寒らしく、いつどこで獲れたものかを確認したくても、その現場に行かないと確認ができない状況だという。
そのようなケースでは、電子タグを付けておけば、たとえマイナス50度以下の倉庫に行かずとも、詳細情報を読み取ることが可能になる。
パナソニックの先進性
パナソニック株式会社は、IoTを活用した食品ロスの実証実験に熱心だ。2017年にはローソンと電子タグの実証実験を実施。福岡県のスーパーセンター「トライアル」でも、期限に応じて価格が自動的に変わるダイナミックプライシングの実証実験を行い、2018年2月には三社共同で日本初のスマートストアをオープンした。
実証実験は、今年度末(2019年3月31日)までは確実に実施されている。実際の無人販売ショーケースで購入してみたい方は、東京・三菱地所の大手町ビル6階、Inspired. Lab(インスパイアード・ラボ)に足を運んでほしい。
プレスリリース:
株式会社Liquid(リキッド)「生体認証とRFIDを活用した無人販売ショーケースの実証実験を開始」
パナソニック株式会社『生体認証とRFIDを活用した無人販売ショーケースの実証実験を開始 三菱地所大手町ビル「Inspired.Lab」にて』
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