阪神甲子園球場に響く大歓声に感謝!最後の“タテジマ”で臨んだ合同トライアウト
11月12日、阪神甲子園球場で『プロ野球12球団合同トライアウト』が行われました。2013年からは静岡草薙球場で3年続いたトライアウトですが、また各球団の持ち回りに戻ったのでしょう。なお昨年と同じく、ことし以降も1回だけの開催。甲子園球場では2002年の2回目、そして2009年の1回目が行われており、今回は7年ぶりと言うことになります。
2009年は大雨で新室内練習場に特設マウンドを作って実施されました。阪神からは今岡誠選手、前田忠節選手、辻本賢人投手、そして既に退団していた伊代野貴照投手が参加。狭い室内では投げる方も打つ方も、なかなか満足いく結果を出せなかったでしょうね。1回きりとなった昨年からは予備日があるものの、今回は13日に阪神鳴尾浜球場での開催となり、お客様の見学はできないところだったのです。
そう思うと空にも感謝!ですね。おまけに前日までの寒さが緩みポカポカと、日焼けするくらいの好天。参加した選手みんな、大きな拍手と声援が励みになったと言っていました。2014年が5000人、2015年は5200人だった最多記録を更新していた草薙球場ですが、今回の甲子園は12000人!掛布監督が呼びかけた5月のファーム公式戦並みですよ。開門後も正面から外野まで行列が折り返していたのにビックリしました。
さて、今回は投手42人、野手23人の合計65人が参加しています。昨年が47人(投手33人、野手14人)だったので結構多いですね。投手が多いと対戦する打者数が少なくなり、ことしも昨年と同じく3人ずつでした。野手は5打席ずつと昨年よりちょっと少なめです。
順次グラウンドでウォーミングアップとキャッチボールをした選手たちは、まずシートノックを行い、10時半からシートバッティング開始。今回もカウント1-1から始まり、ヒットや四球の場合は出塁して、投手の交代時にベンチへ。また交代で守備にもつきます。人数が多かった割には、昨年と同じ14時半頃に終了しました。
では、やはり一段と拍手や声援が多かった阪神タイガースの選手たちの結果とコメントをご紹介しましょう。( )内は年齢、その右はNPB在籍年数です。
※なお10月1日の第1次戦力外通告についての記事は、こちらからご覧いただけます。<阪神タイガース 第1次戦力外通告は9人 筒井、小嶋、坂、柴田、鶴、二神、岩本、一二三、トラヴィス>
◆坂 克彦選手(31) 13年
坂選手はまずファーストの守備からスタートしました。打席は11時15分ごろが最初です。
【ロ:木村】中前打
【西:山口】空振り三振
【ロ:川満】空振り三振
【巨:田原】右前打
【オ:佐藤】中飛
1打席目は左の木村投手から変化球を打って、次打者の二塁打で三塁へ。4打席目の右前打も左の田原投手の変化球でした。2安打という結果に「納得していませんが、とりあえずヒットが出たのはよかった」と坂選手。ただし「感覚のズレはすごくあるけど、それは言っても仕方ない」と話しています。
今後の進路については国内外問わず、という意向のようで「チャンスをもらえるのであればやりたいです。まだ体は動くので。野球しかやってこなかったから」というコメントでした。他の選手のように立ち止まってじっくりではなく、普段の甲子園での試合後みたいに歩きながらだったため短めで…すみません。
スタンドでは、茨城から来られたご両親とお兄さん夫婦もご覧になっていて「結果はどうあれ、区切りがつきました。あとは神のみぞ知る、ですね」とお母さん。坂選手にも、お父さんとお母さんにも、また必ずどこかで再会できると信じています。
◆柴田講平選手(30) 8年
柴田選手はシートバッティング開始と同時に登場。10時半過ぎ、1人目で登板した寺田投手に対する最初の打者でした。
【ヤ:寺田】空振り三振
【元ロ:荻野】四球
【西:宮田】投ゴロ
【元De:冨田】四球
【広:西原】三ゴロ
1打席目は1球ファウルのあと真っすぐを空振りして三振。あっという間に終わってしまいました。そのあと2つ四球を選んだので、対戦打者欄が空白になっていた最後の4投手のところで追加打席があるはず、と期待したものの5打席で終了です。
まずテレビの取材で「きょうの結果はくやしいです。悔いは…全力を出し切ったってのは間違いないので…」と苦い表情だった柴田選手。戦力外を伝えられてからの1ヶ月はどのように?「やっぱりまだやりたい、やれるっていう気持ちがありました。しょうがないといえばしょうがないんですけど、ことしの成績で1軍のチャンスがなくて…現実を受けとめ、新たなスタートを切らなくてはと気持ちを入れ替えて過ごしました」
大きな声援だったでしょう。「後押ししてもらったのに、いい結果が出なかった。申し訳ないです。期待に応えられなくて、そこに悔いはありますね」。背番号00のユニホームで最後の野球となりました。「トラヴィスが投げて、センターで守れて、このユニホームでその景色を最後まで堪能できたのは満足といえば満足です。ファンの方に感謝です」
もう一度、悔いはないかと聞かれ「…そうですね。ないと言ったら嘘になります。でも先へ進めないので、自分の中で踏ん切りをつけて」とうなずきながら答えました。最後にスタンドへ一礼したのは「いろいろあった8年間、お世話になった球場なので。感謝ですね」と少し寂しそうな笑顔です。
そのあと、もう少し追加で質問させていただきました。やっぱり悔しさが一番?「その気持ちは消えていません。消えたら野球できないので。悔しい気持ちがあるから、また野球をやりたいと思う」。NPB以外に関して「今のところは考えていない」そうで、まずはトライアウトの結果待ちということでしょう。
追加でもう1打席があるかと柴田選手も思っていたみたいで、それがやっぱり残念です。終盤は内野陣が守備についていなくて、外野も2人くらいしか守っていませんでした。そんな中、最後までセンターにいた柴田選手。「トラヴィス、よかったですよねえ」と笑ったあと、しみじみと話しています。
「センター、気もちよかった。センターが一番いい景色ですね。あそこから見る甲子園が一番いい。噛みしめて守っていました」
◆鶴 直人投手(29) 11年
続いて投手陣は、登板した順にご紹介します。最初に出てきたのは鶴投手ですが、それでも17番目、正午すぎでした。お客様には登板順がわからないので、お昼ご飯を食べそびれた方もあったのでは?選手のご家族も朝からドキドキしっぱなしで大変だったと思われます。鶴投手のご家族もきっと。お疲れ様でした。
【オ:原】空振り三振
【De:井手】二飛
【元オ:深江】遊ゴロ
※合計11球 最速144キロ
いきなりボール、ボールと続いたけど緊張していたのかな。「緊張しました!メッチャ緊張して。いつも以上に力むだろうなとは思っていましたが、その、“力むだろうな”の上をいきましたね(笑)」。もしかして1軍初登板並みだったかも。投げた11球のうち「変化球は2球だけ、他は真っすぐ」だったようです。
ものすごい拍手と声援、聞こえた?「はい!逆に緊張がやわらぎました。タイガースのユニホームを着て、これだけ応援していただいて、幸せだなあと。そういう思いをかみしめながら上がりましたね」。どなたが来られていた?「家族と両親、だと思います」
今後はNPBを第一志望に?「こればっかりは、ちょっとわからないことなので。気持ちは置いておきながら、いろんな選択肢の中で悩んで決めていきたい。プロでできるなら、もちろん嬉しいです」。トライアウトを振り返って「結果どうこうじゃなく、思い切って腕を振ること。最後だと思って投げたので、それに関しては納得しています。もちろん球とか具体的に上げていけるところはあるので。でも現状としては納得できる球を投げたと思います」と、清々しい表情でした。
◆岩本 輝投手(24) 6年
岩本投手は12時50分ごろに登板。鶴投手に負けない歓声が迎えてくれました。昨年は1軍のローテーションに入り、何度も投げたそのマウンドで、最後のタテジマを披露しています。
【De:内村】四球
【巨:加藤】空振り三振
【オ:堤】中越え二塁打
※合計9球 最速136キロ
ちょうど坂選手が守備につくところで、鶴投手の時と同じく何か声をかけられた岩本投手。先頭打者に3つボールが続いて四球を与え、そのあと二盗も決められました。次は真っすぐで三振だったのですが、堤選手に138キロの真っすぐを打たれています。
「とりあえず自分のボールを出せればいいかなと。最初ストライクが入らなかっことに悔いは残ります。ストライクゾーンにあまり行っていなかったんですけど、真っすぐで空振りを取れたりするのが中にはあったから、そういうのは納得しています。全体的にはちょっとコントロールが、ストライク取るのに精一杯だったかなと」
久しぶりの甲子園でマウンドに立った、その心理状態を問われて「特に何もあまり感じなかった。ただ自分のいいところを見てもらおうと準備もしたし、これが今の力かなと思います」
今後、まずはNPB優先で連絡を待つことになるようで「だいたい連絡が来るのは1週間以内と聞いているので(期限)いっぱいまで待ちます。次はそこからでいいかなと。次が何になるのかわからないですけど。今のところは何もないので」
岩本投手のご両親もスタンドで見守っておられ、お母さんは「甲子園球場の階段を一歩一歩踏みしめながら登った」と、お父さんは「皆さんの声援を受けていたのを見られて、よかったです」とおっしゃっていました。ユニホームが変わっても、ここで再び投げる姿が見られるのを期待しています。その時にまたお目にかかれますように…。
◆西村 憲投手(29)
阪神を退団後、ルートインBCリーグの石川ミリオンスターズでプレーする西村憲投手は、これが3度目のトライアウト受験となっています。昨年とことしは青い石川のユニホームでの受験ですが、甲子園球場に来られたタイガースファンは誰も彼の名前を忘れていません。ものすごい拍手と声援でした。
【楽:榎本】左飛
【巨:小林】四球
【元オ:深江】見逃し三振
合計7球 最速141キロ
まず感想を聞かれ「本当に気持ちよかったですし、ファンの方の歓声が本当に嬉しかった。感動しました!」と答えた西村投手。ファンの皆さんはあの活躍をちゃんと覚えていますからね。「きょうは、ちょっとウルッとするくらいで。ちょっと危なかったというか、こみあげてくるものがあった」。また思い出して感無量の様子です。
投球を振り返って「思いきり腕が振れたんで、まだもうちょっとかなとは思いますが、まあまあです。力はまだ出せたと思うところも。いいとこ、悪いとこありました」と言っています。最後の打者は141キロの真っすぐで見逃し三振で「あそこを(ストライク)取っていただけたのはよかったと思います」とのこと。
去年のトライアウトより球速が出ていたのでは?「去年は自分の中でしっくりきていなかった。きょうは、ちょっと力が入ってしまったけど、もうちょっと出したかったですね」。でも全体的にスピードガンの数字があまり出ていなかった印象はありますから。
久しぶりの甲子園のマウンドは「投げやすかったです。ファンの方を含めて」と振り返ったあと、NPBへの思いを問われた西村投手の返事は「ああいう歓声を聞くと、より一層強くなりますね。また投げたい」。拍手を送ってくださった皆さまも同じで、また見たい!と思われたでしょう。やっぱり甲子園球場が一番似合うと。
◆トラヴィス投手(23) 5年
トラヴィス投手は一番最後の42人目で、14時半過ぎに登板しました。対戦打者は38人目の投手までしか決まっておらず、残りはそこまでの打席で四球が多かった選手などが入ります。
【楽:後藤】空振り三振
【楽:榎本】二ゴロ
【元日:大平】遊ゴロ
※合計7球 最速140キロ
現場での取材と、のちほど電話で聞いた話を合わせてご紹介します。「緊張しました!」と言いながらも、まず初球にスロライクを取って追い込み、3球目は139キロの真っすぐで空振り三振!次も3球目、最後は初球を打たせて内野ゴロと上々の結果でした。投げたのは真っすぐとスライダー、フォークだそうです。
「自分が今持っているものを出し切れたかなと思います。きょうは一番最後に投げさせてもらったんですけど、長い時間なのに最後までファンの方々が残って声援してくださって…。(阪神には)2年しかいなかったけど、非常に力になりました。感謝したいです」と、トラヴィス投手らしい言葉。
終わった時にマウンドでお辞儀、一塁線を越えたところでも一礼して下がったのは「来てくださった方にまずお礼の挨拶をと思って全方向に。それとタイガースのホームなので、球団の方々に。あとは球場にも挨拶をしました」と言います。そんな姿に、スタンドのお客様も一層大きな拍手で迎えてくださったのでしょう。
また柴田選手が「トラヴィスの背中を見て守った。いいピッチングだった」と話していたと告げたら「最後の方は守る人も少なくなって、でもセンターで柴田さんがずっといてくださって嬉しかったです!」とのこと。
最初で最後だった、タテジマでの甲子園
ところで、まだ聞けていなかったタイガースでの思い出を教えてもらえますか?「2年という短い期間でしたが、獲っていただいたことに感謝しています。試合でほとんど投げられなかったので、このトライアウトが思い出といえば思い出かも…」
DeNAでは故障が多かったけど、阪神に来てケガなく過ごせたとすごく嬉しそうだったのは記憶に残っていますよ。「そうですね。ケガがなかったことと、試合で投げなくてもしっかりゲームの準備ができていたので、これからも続けていきたいです」。その努力と成長は必ず生きてきますよね。
ことし3月、ウエスタン・リーグの開幕戦でリリーフ登板して、幸先のいいスタートだと話していたんですが「結局その1試合だけでした」という公式戦登板。そういえば、甲子園のマウンドもなかった?「はい。ファームのゲームで何度も来たけど、投げたのはきょうが初めてでした」
つまり、タイガースのユニホームを着て最後に投げたのが甲子園だったわけです。それはよかった、と言っていいのでしょうか?「うーん。嬉しいというよりは…悔しかったですね」。思い出ではあるけれど、喜びではない。ならば、もう一度ここに戻ってきましょう。もっともっと強く大きくなって。
なおトラヴィス投手は、11月いっぱい寮にいて鳴尾浜でトレーニングと練習を続けるそうです。見かけられたら、ぜひ励ましてあげてください。
※昨年の合同トライアウトの記事はこちらからご覧いただけます。