強い冬型が一時的に弱まるも再度強まって新年へ
クリスマス寒波
令和3年(2021年)は、11月中旬以降、しばしば寒気が南下してきました。
しかし、北日本を除いて寒気の南下が一時的で、寒さは長続きしませんでした。
しかし、クリスマスの時に南下してくる寒気は、これまでの寒気とは違い、広い地域に2~3日顕著な気温低下をもたらしました。
気象庁では、「周りの空気に比べて低温な空気」を寒気、「広い地域に2~3日、またはそれ以上にわたって顕著な気温の低下をもたらすような寒気が到来すること」を寒波と定義していますので、まさにクリスマス寒波襲来です。
日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となり、全国的に真冬の寒くなりました。
寒気の強さの目安として、上空約5500メートルの気温を使うことがあります。
この高さでの気温が氷点下36度以下なら大雪の目安となりますが、クリスマス寒波では、この目安より低い、氷点下45度以下でした(図1)。
この氷点下45度以下というで、真冬でもめったに見られない低い温度です。
しかも、真冬とは違って地上付近の気温はまだ冷え切っていませんので、上下の温度差は真冬の時より大きくなり、激しい現象が起きます。
ただ、上空約5500メートルの気温分布でみると、氷点下30度以下は、東日本の日本海側までしか南下してきませんでした。
寒気の強さを見る目安には、上空約1500メートルの気温もあります。
上空約1500メートルで氷点下6度なら、降水現象があれば平地でも雪が降る目安、氷点下12度なら大雪が降るというものです。
上空1500メートルの気温で見ると、西日本の南海上から東日本の南海上まで氷点下6度以下となりました(図2)。
このように、上空の寒気を2つの高さで見ているのは、南下してくる寒気が立体的なものであるからです。
西日本に南下してきた寒気は、上空の寒気が下層に降りてきて広がった寒気でした。
寒気南下への厳重警戒
国土交通省は、12月24日に「大雪に対する国土交通省緊急発表」を行い、大雪による大規模な車両の立ち往生を防ぐために、冬タイヤの装着やチェーンの携行と早めの装着、広域迂回の実施や通行ルートの見直し、タイヤの摩耗劣化に注意などを呼び掛けています。
これは、国土交通省の水管理・国土保全局防災課、大臣官房参事官(運輸安全防災)、道路局環境安全・防災課、自動車局安全政策課、気象庁が連名で発表したもので、それだけ危機感を持っていました。
その危機感は不幸にもあたり、強い冬型の気圧配置が続いて北日本から西日本の日本海側を中心に1日で60センチ以上の大雪となり、北日本と北陸では、雪を伴った強い風が吹いています(図3)。
このため、滋賀県彦根市の国道8号線で大型トラックが雪にタイヤを取られて走行できなくなって2キロ以上の渋滞が発生するなど、各地で大規模な渋滞が発生しました。
また、大雪となった日本海側の地方だけでなく、太平洋側の地方でも雪雲が山脈の切れ目を抜けて、あるいは低い山脈を乗り越えて入ってきたことで、東海地方など雪となったところもありました。
年末寒波
クリスマス寒波は小康状態となって12月28日は西高東低の冬型の気圧配置は北日本だけとなります。
そして、29日には日本海で低気圧が発生する見込みです(図4)。
日本海の低気圧に向かって暖気が入り込みますので、上空約1500メートルの気温は、氷点下9度の線が津軽海峡まで北上します。
しかし、この暖気の流入は一時的で、すぐに次の寒気が南下してきます。
年末寒波です(図5)。
上空1500メートルの気温は、再び西日本の南海上から東日本の南海上まで氷点下6度以下となる見込みです。
このため、西高東低の冬型の気圧配置が再び強まり、日本海側の地方を中心に大雪となる可能性があります。
気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までの警報級の現象がおきる可能性について、「高」「中」の2段階で発表しています。
これによると、12月29日から30日は大雪警報を発表する可能性は少ないのですが、12月31日は東北南部の日本海側から東日本の日本海側、西日本の日本海側の広い範囲で大雪警報を発表する可能性が「中」となっています(図6)。
現在の段階では正確に降雪量を見積もることは難しいですが、北~西日本の日本海側を中心に降雪量が増え、年末年始の各種交通機関に影響が出ることは十分に考えられます。
厳しい寒さのなかで新年を迎えることになりそうです。
最新の気象情報の入手に努め、不要不急な外出を避け、外出が必要な場合は十分な時間的余裕を持つなどの行動に反映させてください。
図1、図2、図3、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。
図4の出典:気象庁ホームページ。