ノルウェー・ノーベル委員会「ICANはナイーブで理想家ばかりの集団ではない」
ノーベル平和賞の受賞者となった核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)。7日、ノルウェーの首都オスロで、ノルウェー・ノーベル委員会のニョルスタッド秘書が、一般市民向けの公開スピーチをおこなった。
ノーベル平和賞の受賞者は、発表されたその瞬間から人生が劇的に変わる。
「委員会からの受賞者への最初の電話は特別なもので、大きな変化が受賞者を待ち受けています」と話す秘書。
核兵器のことを「最も非人間的な武器」と例え、条約で禁止しようとするICANの努力を平和賞が後押しするだろうと述べた。
一方で、核兵器廃絶を求める側がよく受ける批判が、「お花畑に住んでいる左派の理想家で、非現実的」などだ。
ニョルスタッド秘書は、ノーベル委員会を代表して「ICANは、ナイーブで理想家ばかりが集まった集団ではない」と言い切った。
「ICANは、明るい見通しをもって、核廃絶条約を進め、他国がいずれ後を追うだろうと考えています」。
「ICANはナイーブで理想家ばかりが集まった集団ではありません。彼らは、核のない世界が、明日にでも待ち受けているだろうとは考えていません。もちろん、そのような簡単なことではありません。複雑なプロセスが待ち受けているでしょう。だからといって、条約や活動に意味がないというわけではなく、核のない世界に向けて、確実に一歩ずつ踏み出しています」。
「左派的な動き」という指摘を、ICANノルウェー代表や現地の活動家たちは否定。ノーベル委員会には右派ポピュリスト政党「進歩党」推薦の委員もいること、核問題は右派・左派関係なく、アプローチ方法は違えど、みんなで議論するべきという主張が相次いだ。
ニョルスタッド秘書は、「核保有国に国際社会が圧力をかけていくことが重要」として、ICANは新しい手法で核問題を再び国際的議論として活発化させたことを評価した。
会場のトークショーでは、ノーベル平和賞を受賞したことで、「これまでよりも真剣に、国際社会やメディアに話を聞いてもらうことができるだろう」とされた。
会場からは、現実的には問題解決は難しいだろうという指摘も飛ぶ。
これに対し、ニョルスタッド秘書は、「難しいことには時間がかかることは、歴史が証明している」として、かつてのノルウェー人平和賞受賞者であり、「難民の父」と呼ばれたフリチョフ・ナンセン氏の言葉を引用した。
『難しいことには、時間がかかる。不可能なことには、もっと時間がかかるだろう』。
Photo&Text: Asaki Abumi