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ソフトバンク田中正義の表情を変えた「内川聖一の言葉」。自信と笑顔のプロ5年目

田尻耕太郎スポーツライター
この日はブルペン入り。こんな表情で投げるのも以前はあまり見なかった(筆者撮影)

「オマエだけが可能性を閉ざしている」

 ソフトバンクの田中正義投手が宮崎春季キャンプ第5クール2日目、19日の朝の声出しでプロ5年目に向けた決意を口にした。

 その中でヤクルトに移籍した内川聖一内野手とのエピソードも披露した。

「5年目の田中です。僕は過去4年間の大半を、リハ(リハビリ組)とファームで過ごしております。しかし、今年は1軍で活躍できるという自信があります」と切り出した。

「その理由としては、昨年のファームの最終試合。これは内川さんのホークスでの最後の試合でもあったのですが、そこでクローザーとしてマウンドに上がらせてもらい、人生で1番良いボールを投げることができました。その後、内川さんに『4年間ありがとうございました』と挨拶に行かせていただいた時に、内川さんから『オマエは、オマエ以外のみんなが“オマエはできる”と思ってるのに、オマエだけがその可能性を閉ざしている』と言っていただきました。その言葉が嬉しかったですし、自信になりました。なので、まずは開幕1軍を目指して、1軍の戦力になれるように頑張ります。よろしくお願いします」

入団4年で勝ち星ゼロ

創価大時代に大学日本代表でプレーした際のもの
創価大時代に大学日本代表でプレーした際のもの写真:アフロスポーツ

 田中は2016年ドラフトで5球団が1位指名で競合。大きな期待を背にソフトバンクに入団したが、度重なる故障と不振で過去4年間の一軍登板は通算11試合のみで、プロ0勝とまったく結果を残せていない。昨季は右肘痛の影響から一軍登板はなかった。

 しかし、昨年11月1日にタマホームスタジアム筑後で行われたウエスタン・リーグのシーズン最終戦の阪神戦で圧巻の投球を披露した。4点リードの九回にマウンドに上がると、150キロ台中盤のストレートを連発。先頭の高山を二ゴロ、続く小野寺は142キロのフォークで二ゴロに仕留めると、最後の藤谷の3球目に自己最速タイ156キロをマークしていた。その試合後の内川とのやり取りをこの声出しで披露した。

笑顔で冗談も

B組ブルペンに多くの報道陣。やはり注目度は高い(筆者撮影)
B組ブルペンに多くの報道陣。やはり注目度は高い(筆者撮影)

 今春のキャンプもB組で過ごしており、投球フォームを試行錯誤する姿をブルペンで見せていた。だが、今年の田中は明るいと誰もが口を揃える。球団スタッフも「最近は冗談を口にする。以前はそんな感じじゃなかった」と言う。

 俺は出来る――そんな自信が漲っているようにも感じられる。

 入団5年目。ここ数年は背水を口にして悲壮感を漂わせることも珍しくなかったが、未完の大器がついにベールを脱ぐときが来たのかもしれない。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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