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44歳。15年間の不倫に後悔なし。今後は阿川佐和子さんを目指します~40歳からの婚活入門(8)~

大宮冬洋フリーライター
都内のアジア食堂にて。森本さんは飲みっぷりのいい女性です

***社長秘書、森本順子さん(仮名、44歳)の話***

こんな話をすると引かれてしまうと思いますが、私は25歳のときから15年間、20歳年上の男性と不倫をしていました。相手は以前に勤めていた会社の上司のAさんです。語学が堪能で、世界中を渡り歩いて仕事をしているビジネスマン。入社したときから「あんな社会人になりたい」と憧れていました。

お付き合いを始めたのは入社して2年半後です。仕事で一緒にいる時間が長いので、お互いに好きだということはわかりますよ。仕事で何を大事にするかという価値観が同じだったし、話も合うなと思っていました。

大学生時代から付き合っていた彼氏もいたんです。でも、彼は留年をして、私が先に社会人になりました。新入社員の女の子はモテますよね。いい男の人たちにチヤホヤしてもらい、彼氏のことは子どもっぽく見えてしまいました。

15年間も不倫を続けるなんて思っていませんでした。本音では「奥さんと別れて私と結婚してほしい」と思いつつ、「もし私と結婚しても、他に好きな人ができてしまったら私とも離婚を選ぶだろう」という理性が勝り、恋愛と結婚は別だと思い込むようにしていたんです。だから、Aさんの家庭を壊すようなことはしないまま、冷静にお付き合いを続けてしまいました。別れた今でも、彼とは仲良しです。

別れたきっかけは特にありません。私のほうが飽きちゃったのだと思います。不倫関係にじわじわと空しさを感じていたのかもしれません。はっきり言うと、Aさんに性欲を感じなくなってしまいました。昔はすごく素敵な人だと思っていたのに、男性として見られなくなったのです。

でも、後悔はしていません。憧れの人に近づけて、何でも話し合える関係でした。一緒にたくさん旅もして、素敵な思い出ばかり。仕事に対する考え方など、今の私に大きな影響を与えてくれた人です。

「絶対かなわない」と尊敬できる人に惚れる私

40歳のときにAさんと別れて、しばらくは何もありませんでした。結婚願望がないわけではありませんが、いわゆる婚活はしていません。「いい相手と巡り合ったら結婚したい」ぐらいの気持ちです。

ただし、男女を問わず出会いには貪欲なほうだと思います。いろんな集まりに気軽に出かけていくし、幹事をするのも大好きです。会社でも幹事役を引き受けています。

行きつけの居酒屋では常連同士で遊んだりしています。12歳年下のBさんと出会ったのは2年前。いまは会社員ですが、子どもの頃からプロを目指してバイオリンに打ち込んできた人です。私は、仕事や音楽など自分が興味のある分野で「絶対にかなわない」と尊敬できる人に惚れる傾向があります。趣味で楽器を習っているので、プロ並みにバイオリンが上手で演奏に没頭しているBさんにセクシーさを感じました。

Bさんも私に好意を持っていたと思います。私の誕生日には、仕事を休んでまでお祝いパーティーの準備をしてくれたんですよ。うれしくて勘違いしてしまいますよね(笑)。でも、彼は継がなければならない家業がある人なので、次に付き合った女性とは結婚して子どもを作りたいようです。44歳の私では無理ですよね。真面目な人なので後先を考えずに手を出してきたりもしません。

だから、姉と弟のような関係で我慢しようと思っています。深酒すると本性が出てしまい、彼の膝枕で寝ちゃったりしていますけど……。

初デートでいきなり「好き」は怖すぎます

最近、フェイスブックを使った出会いサービスを試しています。いわゆる「恋活アプリ」ですね。飲み屋のカウンター席で声をかけ合うのと同じ感覚です。私、意外とニーズがあるんですよ(笑)。

声をかけてくれた人の中で、SNSでは会話が弾んだ人と会ってみました。バツイチ子ありの50歳男性です。とてもまともな人だったけれど、最初から私のことをすごく好きなのが怖いと感じてしまいました。女性の私はデートがスタートなのに、彼はすでにゴールしたと思っているんです。男の人は寂しがり屋なのかもしれませんね。

出会いは多いほうだと思いますが、私は好きになるまでには時間がかかるタイプです。でも、将来を悲観はしていません。世の中にはとにかく楽しそうな60代の独身女性も少なくないからです。

阿川佐和子さんは特に素敵ですね。私も彼女みたいな結婚ができるかもしれないし、できないかもしれない。最終的には良きパートナーと巡り合うと信じています。目の前のことを食わず嫌いせずに楽しんでいけば、人生はなるようになるのではないでしょうか。

***筆者より森本さんへ***

いつも機嫌が良くて柔らかい雰囲気の大人でいるために

自立心が強くて、明るくて、コミュニケーション能力も秀でている森本さん。不倫の恋にも後悔していないという言葉は強がりには聞こえませんでした。筆者がアドバイスすることは何もありません。むしろ、「目の前のことを食わず嫌いせずに楽しむ」という姿勢を見習いたいなと思いました。

最近、「いい大人」について考えることが増えています。筆者はもう厄年なので、「いい加減に大人にならないと、大きなコドモのままで一生を終えてしまう」という危機感が募っているのかもしれません。

大人の条件はいろいろあると思いますが、その一つは「いつも機嫌がいいこと」ではないでしょうか。若者だったら不機嫌だったりしても許されますけど、機嫌の悪い中年はやっかいですよね。自分の感情ぐらい自分でコントロールしろよ、甘えんなよ、と言いたくなります。でも、筆者も体調が悪かったり空腹だったりすると人前で不機嫌モードになったりするので他人のことは言えません。まずは自分が気をつけたいと思います。

機嫌の良さを保つようにすると、物事にも積極的かつ柔軟になれますよね。新しいことに対して「オレはそんなの嫌いだ」と意固地にならず、「1回はチャレンジしてみよう」と前向きになれるのです。森本さんの「目の前のことを食わず嫌いせずに楽しむ」姿勢にも通じるのではないでしょうか。人生に対する謙虚さ、と言っていいかもしれません。

朗らかで謙虚な大人にはいろんなチャンスが回ってくるものです。森本さんが「良きパートナー」と巡り合う日は近いと思います。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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