文春報じたタマホームの「ワクチン接種したら5年後に死ぬ」「5Gがコロナ感染を引き寄せる」がデマな理由
7月20日、週刊文春がタマホームの玉木伸弥社長がオンライン会議にて「ワクチンを接種したら5年後に死ぬ」、「5Gがコロナ感染を引き寄せる」とのデマを発言したと報じました。
これらの主張はコロナに関する陰謀論のひとつとして有名なデマですが、なぜデマなのかを解説します。
「5年後に死ぬ」と言えるのは未来が見える予言者だけ
「ワクチンを接種したら5年後に死ぬ」との主張ですが、新型コロナウイルスが初めて確認されたのは2019年11月。ワクチン開発の見通しが発表されたのが2020年3月です。
つまり、新型コロナウイルスのワクチンが報告と同時に開発されていたとしてもまだ2年も経っていません。
それなのになぜ打つと「5年後に死ぬ」ことがわかるのでしょうか?
もしも「5年後に死ぬ」という未来のことがわかるのであれば、次回のロト6の当選番号をこっそり教えて欲しいものです。それが何度も当たるのであれば、信じても良いかもしれません。
また、本当に「5年後に死ぬ」のであれば、5年後に人口が激減した世界で生きることになります。いまのうちにその準備を進めていないのであれば、怖いと言っているだけで本当は信じていないと言えます。
5G用電波の周波数帯は世界各国で違う
もうひとつの「5Gがコロナ感染を引き寄せる」との主張ですが、これは2020年3月ごろからヨーロッパを中心に広がり始めたもので、イギリスではデマに惑わされた人たちが基地局へ放火する事件も起きました。
このデマは2020年4月に世界保健機関(WHO)が「5Gは新型コロナウイルスを広めない」と否定していますが、残念なことに1年後に日本に輸入され(文春の報道によると)タマホームの社長にまで届いてしまったようです。
ただまあ、こうした説明をしても「WHOが嘘をついている」などと否定する人もいるでしょうから、インターネットの話として説明します。
世界中で5Gサービスが開始されていますが、じつは日本で使われている5Gの電波の周波数帯と世界で使われている周波数帯は異なります。
周波数とは電波の大きさを表すものです。1秒間に何回の波が出ているかで数字が異なり、数字が小さいほど運べる情報量が少なく、高い(大きい)ほど多くなります。5Gは高い周波数帯を利用するため、運べるデータが多い=高速通信ができるというわけです。
日本では1.7GHz帯、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯の電波が5G用に割り当てられています。一方、さきほど例に出したイギリスでは700MHz帯、2.3GHz帯、3.4GHz帯、3.6GHz帯が割り当てられています。
この周波数帯、つまり700MHz帯から28GHz帯までの電波すべてが新型コロナウイルスを引き寄せるのであれば、皆さんもよく使うWi-Fiで利用されている2.4Ghz帯、5Ghz帯もそのなかにふくまれているため、「スマホの5G機能をオフ」にしたとしても(主張が本当であれば)ウイルスが寄ってきてしまいます。
また、日本では700MHz帯は4G用として利用されています。同じ700MHz帯の電波なのに、4G用と5G用でウイルスが寄ってきたり、こなくなったりするのでしょうか?
そして本当に新型コロナウイルスが電波に引き寄せられるのであれば、個人の端末よりもそれらと頻繁に通信のやり取りをする基地局の方に寄っていくと考えるのが普通ではないでしょうか?
ちなみにこのニュースが話題になったときにTwitterユーザーの方が報告(例1,2,3)していましたが、タマホーム本社ビルには5Gのアンテナ(auの基地局)が立っています。これはGoogleストリートビューからも確認できます。
念のためにauのエリアマップも見てみましたが、たしかに5Gエリア内にバッチリ入っていました。
タマホーム本社ビル、コロナウイルスが寄ってきてるんですかね……?
あやしい話が本当なのかまずは自分で考えよう
新型コロナウイルスが怖いのはわかりますが、あやしい話を信じてはいけません。それは何の助けにもなりません。
その主張は本当なのか? 検索エンジンやSNSで調べるのではなく、まずは自分で考えてみてください。
自分で考えれば「ワクチンを接種したら5年後に死ぬ」は未来がわかると言っているのと同じことだと、「5Gがコロナ感染を引き寄せる」は使われている電波の種類を考えるとおかしいと、気付けるはずです。
新型コロナウイルスに関するデマに、十分注意してください。