『海のはじまり』複雑な家族の物語が最後に伝えたシンプルなメッセージ
フジテレビ月9ドラマ『海のはじまり』の最終話が放送された。
母がいたことを話したい、母といた場所に行きたがる南雲海(泉谷星奈)を、知らず知らずのうちに傷つけてしまっていた父・月岡夏(目黒蓮)は、家を出た海を水季(古川琴音)側の祖父母の家に迎えに行く。
そして、水季の存命時に3人で過ごせなかったことを謝り、水季がいないことへの気持ちを正直に伝え、これから寂しいときはどうすればいいかを話して、海に笑顔が戻る。父になったばかりの夏と、母を亡くした寂しさを抱える海が父娘としてお互いの愛を確認した。
ふたりが夏の家で再び生活をスタートさせると、夏は休日出勤になり、海の面倒を見るために、夏に頼まれた津野晴明(池松壮亮)、海から連絡を受けた百瀬弥生(有村架純)と月岡大和(木戸大聖)が夏の家に集まって、1日を過ごした。
そこには、彼らそれぞれが親子や血縁関係、中絶の過去を抱えながら向き合ってきた現在への答えがあった。
これまでに3人それぞれの人生が揺れ動いてきた。
その結果、たどり着いたのがその1日だ。彼ら全員がそれに納得している。そこに後悔も未練もなく、それぞれの幸せに向かってこの先を歩いていく。ラストでの大逆転は誰にも起こらないが、それが現実。そんな姿を映していた。
そして、そのあとに、このドラマがもっとも伝えようとしていたメッセージがあった。水季の母であり海の祖母の南雲朱音(大竹しのぶ)が夏へ放った言葉。
「娘が自分より先に死ぬことを想像してみて」
もともと朱音は大学生だった水季の出産を反対していた。しかし、水季は海を生み、両親の手を借りながら育てていくが、病気で早逝する。
これまでの話のなかで、朱音は夏に辛辣な言葉を投げかけることが多々あり、つらくもあたってきた。その言葉の数々は、ほかの誰よりも重く鋭かった。そんな朱音のすべての言動の裏には、娘を失った親の痛苦があり、親になる夏への覚悟の問いかけがあった。
12話にわたって、複雑な家族の関係性とそこに生じるそれぞれの立場の思いをえぐるように描いてきた本作が、芯に置いて伝えようとしていたことはシンプルだった。海は朱音にとってかけがえのない存在。水季は夏にただ海と一緒にいてほしかった。そこには、これ以上ないほどの家族への大きな愛があった。
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