「戦争反対」と自国政府に抗議し闘うベラルーシ人たちの声 18歳の息子を徴兵に取られたくない母達の想い
ウクライナへの侵略を続けるロシア・プーチン政権。隣国ベラルーシのルカシェンコ大統領はロシアに同調し参戦。
その、ベラルーシ政府は昨日、「国民投票」で憲法を改正し、ロシアの核兵器の配備を国内で可能にしたと主張している。
しかし、果たして本当に国民は賛同しているのか。
実は、2020年より独裁政権に抗議し弾圧を受けながらも声を上げ続けてきたベラルーシ市民が、今回の戦争で再び国際社会に向け「戦争反対」「独裁反対」「ロシア軍のベラルーシ占領に反対」と声を上げている。
今回は2020年にも8bitNewsで共に発信をしたー北海道大学大学院で研究を続けてきたベラルーシ人、タッチャナ ツァゲールニックさんや、抗議行動に参加したナージャさんに、1日夜、YouTubeLIVEで想いを聞いた。配信中、ウクライナ首都キーウで取材を続ける香港人ジャーナリストKoaru Ngさんも加わり、現地からのメッセージを届けた。
私たちが知るべき言葉と事実がここにはある。ぜひアーカイブもご覧いただきたい。
■自国政府に対し抗議の声を上げるベラルーシ人たち、その素顔と想い
堀:今日のテーマは「緊急配信:ベラルーシ独裁政権に抗議するベラルーシ人の声」です。実は2020年、8bitnewsでもベラルーシ現地の方、在日ベラルーシ人の皆さんとともに発信をしました。当時、覚えていますか。ルカシェンコ独裁政権に対して、ベラルーシの民主主義を愛する人たちが街で声をあげた、平和的なデモがありました。しかし、当時軍によって、激しい弾圧があったんです。それでも負けずに声をあげ続けました。2020年、つまり2年前です。
あの頃、いかにルカシェンコ政権が非道なことをしてきたかということを必死に声をあげてきたベラルーシの方々がいるにも関わらず、じゃあ国際社会は、日本政府は、私たちは、その状況にしっかりと向き合うことができたんでしょうか。結局2年経って、今向き合っている脅威というのは、あの時世界が沈黙したからではないかという悔しい思いもしています。
今日はですね、ちょうど抗議の声をあげる集会やデモなどが連日日本国内でも行われていまして、都内でも行われていました。貴重な写真をお借りしているので、見ていただきたいんですが、こちら今日の写真です。この後ご出演いただくターシャさんから送っていただきました。
このように、DO NOT KILLと、殺さないでくれと、ウクライナ人を殺さないでください、ベラルーシ人はウクライナ人を殺さないと、あくまでもプーチン政権そしてルカシェンコ政権という、2人の独裁者が引き起こした戦闘戦争であり、決してベラルーシの皆さんが支持をしているものではないんだということを訴えています。直ちに戦争をやめるべきだと、軍は引くべきだと、ベラルーシの占領をやめるべきだと、されてこられたわけです。
皆さんはこの写真を見て、どのようなことを思われますか?そしてそのことについて、皆さんはご存じでしたか?今日はですね、緊急の声掛けにも関わらず、お2人のベラルーシ人の方が応答してくださいました。さっそく呼んでみましょう。ターシャさんと、ナージャさんです。
実をいうとナージャさんにも、ターシャさんにも、私は2020年、このようにリモートで結んでお話を聞くことができていました。ところが2年経って、再びこういった状況で、皆さんと一緒に配信をするのが本当に悔しいです。ただそれは、皆さんにとってみればもっともっと、非常に胸が引き裂かれるような想いだと思います。ターシャさん、今の率直な想いを聞かせてください。」
ターシャ:「2020年からのベラルーシの問題に関して、国際社会や日本の皆さんの注目が足りなかったとか、今、そういう話はあまりしたくないと思います。なぜなら今は戦争中なので、どちらかと言うと、私たちができることについて集中したいんですが、ただ、堀さんの力を借りて日本の皆さんに私が伝えたいのは、今ベラルーシで政権を握っている独裁者・ルカシェンコという人がいて、ベラルーシは本当に意味がない戦争に囲まれて、世界ではベラルーシ人、どう見てもベラルーシ政府とベラルーシ国民の区別はできないと思うんですけど、ベラルーシ国民は戦争を望んでいない。ベラルーシ国民はこの独裁者ともずっと闘っているということを、皆さんに理解して欲しいですね。2020年の前から、1996年からですけど、こんなに世界中で注目を集めるようになったのは、2020年からですね。私たちはずっと闘っています。ベラルーシ国内のベラルーシ人もずっと闘っているんですけど、だから私たちは、今政府がやっていること、政府と呼ばれている団体がやっていることに、絶対に反対していますし、ウクライナ人は、今ロシアはウクライナと戦争をやっていますけども、ウクライナはロシアだけではなくてベラルーシとの戦争もやっていると、私は感じますね。ということはこれは私たちの戦争でもあると、私は思っています」
堀:「ありがとうございます。そして広島にいらっしゃるナージャさんです。ナージャさんは今日、広島の原爆ドームの前で開かれたウクライナの皆さんとの集会に参加されたと、先ほど番組が始まる前に伺いました。どんな想いで、今、声をあげていらっしゃいますか」
ナージャ:「ものすごく複雑な想いです。私はベラルーシ出身なので、ベラルーシはチェルノブイリの経験をした国なので、放射能の汚染がどれだけ恐ろしいか、どれだけ被害をもたらすものか、よくわかっている国なので、ルカシェンコが今、核兵器をベラルーシに置こうとしているというニュースを聞いた後だったので、ショックというか、ものすごく怖くなりました。これ以上怖いことはないです。戦争より危ないです。世界の終わりのようなものなので、それは何としても止めないといけないと思い、今日のイベントに参加することにしました。それだけではなく、実は私の夫のお母さんは被爆者なんです。広島の人にとって核兵器で世界を脅すというのがどれだけ恐ろしいことか。ルカシェンコのことをまったく理解できない。怒りのあまりマスメディアと一般人が集まって、色々話してくださって、どうやったら止められるかを討論してきました」
堀:「どんな意見が出ましたか。どうしたら止められるのか、どんなお話をされたんですか」
ナージャ:「やはり、独裁者を甘く見るな。甘く見ると戦争に繋がります。狂ったルカシェンコ、狂ったプーチンのやりたい放題になってしまいます。もし2020年の時、世界がもっと厳しい制裁にしてくれていれば、そこまではいかなかったでしょうというのが、ほとんどの人の意見でした。また私たちは2020年のもっと前から、独裁者と闘い続けてきたのに、特にこの2年、日本で、ベラルーシで起きていることはマスメディアと話し合っていっぱい番組をつくってもらったのに、今日話し合ったマスメディアの多くの方は、ごめんなさい、ベラルーシについてはほとんど何も知りません、と言いました。えー、本当なの?あなた達、自分のニュースを見てないんですか?と、ちょっとびっくりしました。でも私たちは、できる限り話さないといけません。ベラルーシで何が起きているか、ウクライナでは何が起きているか、ロシアでは何が起きているか、私たちは日本の皆さんに伝えないといけないと思っています」
堀:「皆さん、今からでも遅くありません。ターシャさんやナージャさん、そして当時ミンスクで声をあげた現地のベラルーシ人の皆さんも協力してくださって、このようにライブの配信をしたんです。そのリンクをこのyoutubeの概要欄に貼ってあるので、見ていただきたいんです。どれだけ独裁者が非人道的な行為を行って、自由と民主と平和を愛する、文化を愛する人たちを弾圧したか。必死に声をあげていたんですよね。今回も、恐らくそうした背景を知らないで、ただニュースを見ていると、ルカシェンコ政権は国民投票によって非核化の憲法を改正したと。つまり国民投票が行われたということであれば、ベラルーシの国民が賛成しているんじゃないかという風に誤った印象を持つかもしれません。でも今ナージャさんの言葉を聞いた、ターシャさんの言葉を聞いただけで、少し変わったんじゃないでしょうか。これはそのように報道されていますが、私も現地、ミンスクで取材をしているわけではありません。どのようなことが起きていたのか、もっと知りたいです。ターシャさんやナージャさんのところには、どんな情報が入っていますか?あの国民投票というのは何なのか」
■独裁政権側が語る「国民投票」という言葉の意味
ターシャ:「国民投票と呼ばれていますが、ベラルーシで、大統領選挙や国民投票がきちんと民主主義的に行われたのは、1994年です。それ以降は全部、政府が選挙の結果や国民投票の結果を、政府が自分にふさわしい数字をただ書いているだけです。1996年からはずっと、選挙や国民投票があった際はベラルーシで抗議活動が行われていたんですけれども、それでたくさんの人が拘束されたり、1999年、2000年は政治家や何人かの活動家が行方不明になって、殺されたんですね。今回の国民投票も、国民はほぼ100%が反対していたし、今回の国民投票は憲法を変更することに関しての投票だったんですけれども、もちろん誰も賛成しないのに、投票率が7割以上で、国民の6割以上は賛成したというのが正式な数字です。でもその背景に何があるか、そういうことについては、今はほぼメディア、海外のメディアはほぼ、そういうことについて伝えないですね。それはちょっと悔しいです」
堀:「僕も悔しいです。昨日も、Abema primeでベラルーシのことが話題にのぼったのですが、スーッと、憲法を改正して核の保有を可能にしたんですと、そういうリポートだったのでちょっと待ってくださいと、憲法改正国民投票って、まるでベラルーシの国全体がそれを支援支持しているような印象だけれども、そこはちょっと注釈をつけさせて欲しいと思って、割り込んでお話をしたんですね。そういう背景が伝わりきっていないのに、そんなに簡単に国民投票っていう言葉を使って欲しくないなっていう想いもありました。その時にターシャさんやナージャさんを始めとした皆さんの顔が思い浮かびました。ナージャさんはいかがですか」
ナージャ:「私の家族も投票に行きました。民主主義のリーダーであるチハノスカヤの呼びかけで、投票用紙には両側に×印をつけてください。その行為で、今の政府に反対を示してくださいという呼びかけでした。それだけではなく、投票所で長い列をつくってください、この長い列に並んでいる人は、今ベラルーシが巻き込まれている戦争に反対する行為になる、というプランでした。ベラルーシはもう2年、ものすごく残酷な抑圧の中で国民が生きていたわけですから、誰も集まらないと実は私も思っていました。ですが実際は、私の家族も含めて多くの人が外に出て、長い行列をつくって、戦争反対を叫んで、ウクライナの旗を持って、ベラルーシ人もウクライナ人も闘わないと叫んだりしました。私の兄はギリギリで警察から逃げることができました。しかしながらかなりの人数の知人がつかまりました。今、刑務所に入れられています。今からどうなるか、誰もわかりません。2週間後に解放されるといいのですが、もっと長くなる可能性もあります。私の出身の、ミンスクでのことです。国民のリーダーであるチハノスカヤの発表によると、2月27日、ベラルーシ全国で外に出て反対活動に参加した人数は7万人にのぼったそうです」
ターシャ:「日曜日と比べると人数が減ったんですが、昨日も反対の声をあげた人がいて、この2日間で850人以上の人が逮捕・拘束されたんですね。ベラルーシの人口は900万人ですので、結構大きな数字です」
■ロシアに同調するベラルーシ政府 弾圧で逃れたベラルーシ人が苦境に
堀:「ロシアが、ああいう形でウクライナ全土に攻撃を開始した時というのは、ターシャさんはどのような想いで見ていらっしゃいましたか」
ターシャ:「そうなるんじゃないかなという想いがあったんですけど、最後まで信じたくなかったです。私は24日、現地時間だと朝の5時、日本は昼の12時にclubhouseでベラルーシ人のコミュニティがあるんですが、ちょうど誰かが会話していると思って、時間があるからちょっと参加しようかなと思って参加したら、キーウにいるベラルーシ人は今ミサイルの音が聞こえているとか、窓が揺れているとか話していて、驚いてどこにいるの?と聞いたらキーウだよって。本当に信じられなかったですね」
堀:「ルカシェンコ政権の弾圧から逃れるために、ベラルーシからウクライナに避難しているベラルーシの方が大勢いらっしゃるということを、現地で取材している香港人ジャーナリストのKaoruさんから聞いています。実際にこの2年の間で、隣国ウクライナへの避難というのは結構あったんですか」
ターシャ:「そうですね。結構たくさんのベラルーシ人がウクライナに亡命したんですね。リトアニア、ジョージア、ウクライナ、オランダ、チェコ、ラトビア、アメリカ。色々な国ですけれども、ウクライナは文化的にも近いし、言葉もベラルーシ語とウクライナ語で分かりますし、ロシア語を使っても大丈夫な国なので、ウクライナに何人とかそういう統計はないと思うんですけど、かなり人数が多かったですね。私の知り合いにはいませんが、SNSでフォローしているベラルーシ人の何人かが、今は家族と、子どもを連れてキーウからポーランド、亡命するために時間もかかったし、とても大変だったし、しかもウクライナの国境を超える時には、ベラルーシのパスポートを持っているのならあなたは敵だよと言われたりとか、もちろんウクライナ人のボランティアが色々助けてくれたそうなんですが・・・」
堀:「ウクライナ人のボランティアの方が。NPOのような組織の方なんでしょうか?」
ターシャ:「ちょっと分からないのですが、普通の市民かもしれないんですが・・・。向こうの警備も厳しかったみたいです」
堀:「こういう状況になった時に、ベラルーシのパスポートというのが不利に働いてしまうような状況になっているということですよね。ナージャさんはいかがですか」(22:30)
ナージャ:「こんなニュースを聞いて、まず信じられない。最後の最後まで、こういうことがまさか起きるなんて、信じる人はほとんどいませんでした。理解を超えるところです。今日は戦争が始まってから6日目です。この6日間ほとんど寝ていない。ずっとニュースを見ながらどうしようと。ベラルーシに残った家族も心配ですし、ウクライナからポーランドに逃げている真っ最中の友達のことも心配ですし、ウクライナにはともに働いたことのある同僚がかなりたくさん住んでいますし、もう恥ずかしくて怖くて、すごく複雑な気持ちで、一言で表すのは難しい」
堀:「そうですね。ポーランドに避難をしている最中のご友人からは、連絡は随時入ってくるんですか」
ナージャ:「ほとんどないです。まずインターネットが難しいし、電話の充電が難しい。歩いたり、ボランティアの人の車に少し乗せてもらったり、国境に向かって。怖いし危ないので直接のルートではなく、森の中などとても難しい、グルグルと迂回するルートになるので、とても難しいです。連絡が入ったり入らなかったり、別の友人から聞いたり、そういうような状況です」
■戦地に送られる18歳の息子をどこに逃すか 母の想い
堀:「戦争が始まった時には、ベラルーシ国内にいるご家族の方はどんなことをお話されていましたか」
ナージャ:「日本ではそういう悪い言葉が存在しないくらい。罵りました。」
ターシャ:「向こうもずっとニュースをチェックしたり、どうしたらいいのか。ベラルーシ国内にいるのに、何かしたいのに何もできない」
ナージャ:「私の友達には、18歳のミニタリーの息子がいるお母さんが多いです。息子たちのこれからがどうなるのかすごく心配している。徴兵。どうやって逃がそうかと思っても、今の状況はベラルーシから逃げられない。ものすごく難しい。だからベラルーシ国内で隠す。誰かの知り合いの知り合いの家や、遠い田舎に避難してもらうとか、どうしようという声ばかり」
堀:「そうですよね。もともと徴兵制だったのでしょうか」
ナージャ:「はい。もともと徴兵制です。明日からは18歳から60歳までの男性は緊急的に呼ばれるのではないかという噂が流れています」
ターシャ:「私の出身地の街ではもう、昨日から呼ばれたりしているんですね。でもまだこれが定期的なものなのか、今のためなのかは分からないのですが」
堀:「今日付けのニュースで、ルカシェンコが緊急の拡大安全保障会議を招集するということで、明らかに戦時体制に組み込まれる様々な変更というのが国内でも行われるんだろうなとは思っていましたけども、皆さんのお知り合いの方や仲間の皆さんが、そういう形で徴兵に行きたくないと、お子さんをかくまう、どうやったらいいのかと悩んでいる様子というのは、本当に胸が張り裂けそうです。実際に兵士の皆さんは、いくらプーチンそしてルカシェンコから動員がかけられたとしても、果たして本当に戦うんだろうかという、ロシアも最前線のほうでは、伝えられている報道だと、装甲車と乗り捨てて退避するような部隊もいたとか、戦意が低いのではないかとか、開戦前はちょうど国境沿いではマッチングアプリを使っている若いロシア兵のアイコンが色々な地域に出ていたとか、本当に等身大の若者たちが最前線にいるんだなということも伝わってきました。果たして動員をかけられた、兵士とならざるを得ない人たちが本当にどんな想いなのか、このあたりは、直接聞かれる機会などはありますか。報道されているような声とか、友人から伝わってくる声とか」
ナージャ:「私が聞いたところによると、彼らは携帯電話を持つことが許されていない。だから外の世界からニュースがまったく入らない状況です。唯一の希望は1週間に1回か2回許されている家族との電話。公衆電話みたいな感じで。彼らはずっと洗脳されています。テレビの前に座らされて、ルカシェンコがどれだけ偉大なリーダーか、プーチンがどれだけ世界の平和のために闘っている指導者か、ずっとその映像を見続けないといけないことになっている」
堀:「2020年の時にも軍人は洗脳されているんだ、情報が隔絶された中にいるんだという話をされていたなと、今改めて思い出しました。たしかに今日国連の場でも、ウクライナの大使が、ロシア兵が母親にあてた手紙、何も知らされずに戦地に赴いたというその手紙の内容を明らかにしていましたよね。同じような状況が起きるのかなと思います。今夜は皆さんとともに、ご出演いただいているのはベラルーシにルーツをもつ皆さんです。ナージャさんとターシャさんに出演していただいています。そして今、キーウにいるKaoruさんが入ってきてくれました」
Kaoru「急に街中のネットが切られてしまって、今帰ってきてネットを繋げています。もしかすると、僕の単なる僕のデータの使いすぎかもしれません」
堀「通信環境の不安定な中、ありがとうございます。紹介します。2020年にも一緒に発信をしてくれたターシャさんとナージャさんです。ターシャさんはKaoruさんの取材の様子などもご存じだということで、今日ひょっとしたらKaoruさんが参加してくれるかもしれないことも伝えてありました。Kaoruさんはまさに2020年、ベラルーシのミンスクで取材をして・・・」
Kaoru:ベラルーシの旧国旗(ルカシェンコ政権への抵抗の象徴)を画面に掲げる
堀:「その旗は、どこから?」
Kaoru:「これは、ベラルーシに入った時に友達がくれたもので、ずっと持っていました」
堀:「キーウにも、たくさんベラルーシから退避した、Kaoruさんのご友人がいるという話もされていましたよね。彼らは今どうしていますか」
Kaoru:「ほとんど国外に出ていきましたね。一部ここに残ってウクライナ人とともに戦うという人もいます」
堀:「戦うというのは、それは具体的に武器を持ってということですか」
Kaoru:「そうですね。武器を持って戦車も持って、普通の軍隊のような。ただひとつ違うのは、腕の紋章がベラルーシのもの、それをつけた人が戦っています」
堀:「ナージャさんとターシャさんからお話を聞いていた時に、やはりベラルーシのパスポートを持っていることによって、隣国に避難しようとした時に敵国と見なされて非常に辛い思いをする。心ある方のサポートでなんとか退避できたという話もあったのだけれども、こんなに自由と民主のために声をあげてきた方々が、再びこういう境遇になるということに関して、どのように感じながら取材をしていらっしゃいますか」
Kaoru:「本当に悲しいことです。今この時点でここに、キーウにいるということは、彼らもルカシェンコ政権の弾圧を受けて余儀なく避難している人であることは間違いないでしょうし、それでもベラルーシのパスポートを持つことによって、“向かい側の人”と扱われてしまうのは、とても悲しいことだと思います」
堀:「香港から取材に行って、当時のミンスクで、ベラルーシの皆さんと連帯して声をあげている姿も非常に胸を打ちましたが、香港人として、ベラルーシの皆さんやウクライナの皆さんと、どのような関係を築きながら発信をしていくべきだと考えているのでしょうか」
Kaoru:「戦争が始まる前に実はベラルーシの友達と会っていたんですけど、彼女は昔香港にも住んでいて、香港が独裁者によって滅ぼされ、ベラルーシが独裁者によって滅ぼされ、そして今ウクライナも。人生で3回目、住んでた地が独裁者に滅ぼされようとしていますと語っていました」
ナージャ:「悲しみしかない。でも私たちは今、歴史的な瞬間を体験していると思います。結論づけるのはまだ早いけれど、今は、世界の歴史が変わっていると感じています」
■日本で、ベラルーシで起きてきたことがどこまで伝わっているか?
Kaoru:「日本の皆さんがベラルーシに対してどう思われているのか知りたいです」
ターシャ:「私の知り合いは、もちろん私がやってきた活動や、ベラルーシでどんなことが起きているかを皆よく知っていますし、札幌で日曜日にもデモがあったんですけど、呼びかけをしたら、知り合いが何人も来てくれたし、応援してくれている。広く言えば日本の皆さんがどう思っているかは分かりませんが、私がデモのスピーチでベラルーシの状況を説明しようとしたら、多くの方が納得してくれていたと思う。今は日本のメディアではベラルーシという名前は出ているんですが、まだまだ悪者にされていないので、日本の皆さんが、私たちが2020年から闘ってきたということを覚えていらっしゃるのか、まだ分からない」
堀:「そうですよね。本当にそこが、僕は悔しいと思っているので、今日こうして改めて、当時も繋がってくださった皆さんが集まってくださって、話をしてくださっているのは、大変心強いです。何をするべきか、ですよね。今、経済制裁ということで日本政府もベラルーシ・ルカシェンコ政権に対しての制裁をということですが、そうした国に対しての制裁というのは最終的に国民の皆さんを苦しめることになってしまうことが非常に辛いんですね。だからこそ、何ができるんだろうかということも、いつも非常に考えさせられます。ナージャさん、今、世界は、日本国にいる私たちは、何をするべきなのか。今日もウクライナの皆さんと一緒に広島で語り合ったと思いますけれども、改めて、今日見ている人と、今日Kaoruさんも加わってくれましたし、お話いただけませんか」
ナージャ:「私は政治的経済的専門家ではないので、少し答えづらいですが、まず、ルカシェンコ=独裁者を大統領として認めていない。正式な大統領とは認めていないという決定をして欲しいです。第二は、国民のリーダーであるチハノスカヤさんと交渉して欲しい。会って欲しい。話し合って欲しい。彼女についている政治専門家、経済専門家と話し合って、日本は何ができるか、何をすればベラルーシの国民のためになるか、自由、民主主義のためになるのか、話し合って決めればいいと思います。日本は今すごく、国民のリーダー達は、民主主義のリーダー達に会うのを避けています。それはこの2年間ずっと見続けてきました。これはやめて欲しい。実は、ベラルーシでは、政治家である日本国籍を持つ男の子がいます。この間21歳になった男の子。この子のために、外務省はもっと積極的に動いて欲しいです」
堀:「たしかに、チハノスカヤさん達のことをサポートするというのが、日本政府にはできるはずだなとは思います。同じことがミャンマーでも起きていて、日本政府がなぜ、ミャンマー国軍政府と交渉するのかと、なぜ民主統一政府と交渉しないのかと、ミャンマー市民の皆さんからは聞いています。同じようなことをやり続けてきてしまっているんだなということに今、改めて気付かされました。ターシャさんいかがですか」
ターシャ:「ナージャさんが言ったことに賛成です。やはり今までは、ベラルーシ、ミャンマーもそうかもしれないんですけども、そういう問題は、その国ごとの問題として見られていたのではないかと思うんですけども、べラルーシ国内の問題であると思われていたことが今、とても大きな国際問題になっています。結局、問題の責任、世界が責任を誰に持たせているのかというと、ベラルーシ国民に持たせているんです。この戦争が早く終わって欲しい、終わると信じているんですけれども、終わったら、ベラルーシの国民のための支援や、ベラルーシで民主的な社会を立て直すサポートがあればいいなと思います」
Kaoru:「ベラルーシの国民が、ベラルーシ政府が言っていることをほとんど認めていないということを、まず日本の皆さんに知らせておくべきだと思います」
堀:「そこがまずしっかりと伝わるべきですよね。誤った印象でベラルーシの市民の皆さんのことを見てはいけない。差別をうむ、分断をうむ・・・」
Kaoru:「本当にベラルーシだけではなくて、たくさんのロシア人も今のロシア政府に反発していますし、変な方向で人々を差別してはいけないと思います」
堀:「先ほどKaoruさんが現地のインタビューを送ってきてくれて、その中に、核に関して、核兵器の使用の可能性について、市民の方に聞いているインタビューもありました。家族連れでしたね。どんなことを言っていましたか」
Kaoru:「彼らは、今のところ核の使用を信じていないんですけども、プーチンのことですから少しだけ不安は残ります(と言っていました)」
堀:「今日前段では、ナージャさんは広島にいらっしゃるということもあって、この核の問題に関しては強いメッセージを打ち出してくれました。それはもう、ナージャさんや皆さんじゃなくて、私たち日本人こそがもっともっと声高に叫ばなければならないことだなとも実感しています。今日のキーウの状況はいかがですか。昨日は少し落ち着いていると言っていましたが、ハリコフなど各地ではミサイル攻撃もあった・・・」
Kaoru:「昨日は落ち着いていたのですが、今日は街には雪が降っていて、通行人も減りましたし、明らかに街中の守備が強くなっています。色んなところにバリケードがはられていて、そのバリケードを兵士たちが守っています。そして地下鉄などの出入りにもパスポートが必要になりました。やはり臨戦状態、西北のほうにちょうど僕が住んでいた街のあたりに、たくさんのロシアの戦車などが列になって、いつでもキーウに攻め込むかもしれないという緊張感が、守備軍の守備もかたくなっています。撮影できない場所も増えてきました。写真がなかなか撮れない状態になっています」
堀:「カメラを出したらすぐに止められるということですね?」
Kaoru:「そうですね。止められたり・・・」
ターシャ:「本当にKaoruさんが安全な場所で・・・Please stay safe. 本当に気をつけて欲しい。香港からベラルーシ。私はKaoruさんのFacebookをフォローしていますけれど、キーウにいるのは、見てとてもびっくりしました。日本の皆さんに堀さんを通じて、現地からの情報を伝えてくださり、本当にありがとうございます」
Kaoru:「実は僕の知り合いの中で、僕の報道を見て、ここウクライナとベラルーシのことに興味を持ってくれて、来週からでも10人くらい香港のジャーナリストがここキーウに入ってきます。多くの香港の人の声を、期待してください。1人だけ日本人も入ってきます。フォトグラファーの方です」
堀:「その発信をより多くの人に届けられるように、僕も一緒にサポートしていけたらなとも思います」
■今、「わたし」がすべきことは?
堀:「最後に一言ずつメッセージをください。今5,000人近くの方々が見てくれています」
ナージャ:「私たちは今まで経験したことのない世界に生きていかないといけないので、どうか落ち込まないで前向きに、できることをやりましょう。自分には何もできないと思わずに、自分が何ができるか、よく考えて、動くのはとても大事だと思います」
ターシャ:「ウクライナは地理的に日本からは遠いんですけれども、日本の皆さんはニュースを見て、これは他人事だと思わないで欲しいですね。この戦争を、全世界が力を合わせて止めたら・・・止めないと、これはもっと大きな問題になると思います。ウクライナの次はまた次の国が攻撃されるので、本当にこれはとてもシリアスなことだと考えて欲しいです。今、私たちは日本にいるんですけれども、直接ウクライナに行って戦うことはできないんですけれども、でも支援もできますし、情報配信もできますし、あと今全国で、大きな街でも小さな街でも、日本人の皆さん、ウクライナ人、ベラルーシ人、ロシア人もですけれども、主催しているデモ、抗議活動が行われています。どこでデモが行われているか調べて、そのデモを応援してください。たくさんの人に、問題について声を届けることができます。国民だけではなくて、政府、日本の政府にも、声を届けないといけない。今は皆で力を合わせて何とか全力で、何とかしないといけないと思います」
堀:「今youtubeライブにもたくさんコメント寄せてくださっていて、今はナージャさん、ターシャさん、Kaoruさんリアルタイムで見られていないと思いますけども、アーカイブに残りますので、本当にたくさんの励ましの声も含めて、届いています。もしよかったら読んでみてください」
Kaoru:「僕もほとんど、ターシャさんと同じ意見で、前回このようなことが起きたのはドイツのポーランド侵攻ですね。その時はインターネットもなかったですし、世界中にそんなにはやく、情報が流れる世界ではありませんでした。今回こそ、インターネットがあるので、世界中がひとつになっていますので、新しいテクノロジーを利用して、このウクライナで起きていることの不条理さを世界中に共有して、今度こそ悪が広まる前に止めましょう。ベラルーシの人も、ウクライナの人も、世界中の人が頑張って、本当に世界中の人ひとりひとりの問題です。政府なんかに頼っていないで、世界の人間として、今度こそ自分の一歩を踏み出して欲しいです」
以上