ホークス捕手事情に今季は異変か。「甲斐拓也」を脅かす26歳コンビが春季キャンプで台頭中!
福岡ソフトバンクホークスの正捕手といえば甲斐拓也捕手。2017年シーズン以降毎年100試合以上に出場し、その間に6度のゴールデングラブ賞を獲得した。侍ジャパンの一員としても東京五輪金メダルやWBCでの世界一などに貢献した、日本球界を代表するキャッチャーだ。
だが現在宮崎で行われているソフトバンクキャンプでは“次世代”の捕手がいいアピールをしている。
「捕手一本」で勝負する谷川原
まず存在感を際立たせたのが9年目の谷川原健太捕手(26)だ。もともと俊足巧打が武器の「打てる捕手」として期待されていたが、その武器を活かすべく去年までは外野手としても出場機会を与えられていた。しかし、小久保裕紀新監督は「捕手一本化」を明言。さらにチームの「強化指定選手」へと任命されている。
意気に感じた谷川原はこのキャンプでもグラブは福岡に置いて、ミットのみを持参。正マスクを目指し「今までと投手陣とのコミュニケーションの取り方1つから考え方が変わった」と話している。城島健司会長付特別アドバイザー兼シニアコーディネーターからも「今までのキャッチャーよりも走れますから、20盗塁、30盗塁は将来してくれるんじゃないかなと、新しいキャッチャーとしてやってくれるのを僕は期待しています。それに長打もある」と絶賛の言葉をもらっていた。
チーム1号を連発した海野
そんな中、キャンプが実戦モードに入ってきた中で猛追撃してきたのが海野隆司捕手(26)だ。谷川原と同い年だが、こちらは大卒選手のため今季が5年目。もともとインサイドワークに定評はあったが、打撃が課題とされてきた。
一昨年は一軍47試合に出場したが、昨季は8試合出場で打率.000に終わった。昨年は2軍を率いた小久保監督から「2番手という立場じゃないからな」と厳しい言葉も浴びせられていた。
海野は昨オフ、並々ならぬ覚悟で自主トレに臨んだ。「アイツは変わったと言わせないと」。出場機会を増やすというのではなくあくまでレギュラー獲得を目指した。ならば打撃力向上と、とにかくバットを振った。
やみくもに振り込んだわけではない。「去年までバットが遠回りしていた。内側から出す。それを徹底した」。その成果が春季キャンプで表れている。13日のシート打撃でチーム1号本塁打を含む2長打を放った。
そして18日の紅白戦では5回表無死、横手投げ左腕の渡邊佑樹投手から左翼ポール際へ、またもチーム1号となる豪快アーチを放り込んだ。「去年までならば切れてファウルになっていたと思います」と自信を深める一発だった。小久保監督も「海野は秋からいい成長をしている。十分変わった。インサイドアウトの打撃を習得するのは相当難しいこと。その打ち方をする選手をドラフトでは取ってこいと言われるほど。それくらい修正は難しい」と賛辞の言葉を送っている。
とはいえ、甲斐が「絶対的存在」という評価は今も聞かれる。ただ、本人はその声に甘んじるつもりもないだろう。育成6位の立場から這い上がってきた男。負けん気と根性は誰よりも強い自負がある。
捕手はチームの扇の要だ。「固定」か「併用」か、はたまた正捕手「逆転」か――。
2024年のソフトバンクの大いなる見どころの1つとなるだろう。
(※写真はすべて筆者撮影)