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ヤクルト緊急補強で火の国サラマンダーズ・中川拓真に白羽の矢! 今季は「完全試合」の捕手も務める

田尻耕太郎スポーツライター
ヤクルト入りが決まった中川拓真

 ヤマエグループ九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズで今季プレーしている中川拓真捕手が2日、東京ヤクルトスワローズとの契約書にサインした。中川は昨季まで3年間、オリックス・バファローズでプレーしておりNPB復帰を果たすことになった。

ヤクルトでの背番号は「90」に

 熊本市内のホテルで報道陣公開での契約書署名と会見を行った中川は「NPBに戻りたい一心で熊本に来ました。独立リーグなので決して整った環境ではなかったけど、野球に打ち込めたのは(火の国の)荒西監督代行や野島球団社長、色んな方々の支えがあったからだと思っています。その感謝の気持ちを忘れず、恩返しができるように必死にプレーしてまいりたいと思います」と意気込みを語った。また、会見の中でヤクルトでの背番号が「90」に決まったことも明かした。

 中川は愛知県生まれの21歳。豊橋中央高校時代に通算44本塁打を放って注目され、2020年ドラフト5位でオリックスから指名を受けた。プロ入りすぐの筋力測定では、同期の山下舜平大や来田涼斗らをおさえて高卒新人の中でトップの数値を叩きだしたと報じられるなど、好素材の捕手として期待された。しかし、オリックスでは3年間で一軍出場ゼロ。二軍公式戦も2年目は46試合出場で111打席に立つも打率.210と振るわず、3年目は20試合で19打席、打率.167と低迷。昨年10月30日に球団から戦力外通告を受けていた。

昨年12月、火の国サラマンダーズへの入団会見で撮影
昨年12月、火の国サラマンダーズへの入団会見で撮影

 再起の地として選んだのが熊本だった。試合出場の機会に飢えていた若武者はグラウンドで躍動。今季、九州アジアリーグの公式戦ではここまで29試合に出場して打率.298、2本塁打、15打点、3盗塁、出塁率.365の成績を残した。シーズン序盤は主にクリーンナップで出場。また、6月9日の佐賀インドネシアドリームズ戦(ひぜしんスタジアム)ではマスクを被ってフル出場し、松江優作投手の完全試合の快挙を好リードで演出した。

完全試合前日、6月8日の試合で撮影
完全試合前日、6月8日の試合で撮影

捕手補強を望んだヤクルトの思惑

 ヤクルトは6月中旬に深刻な捕手不足に陥った。昨年のWBCに出場した中村悠平が一時離脱した際には、高卒ルーキーの鈴木叶が緊急1軍昇格し、これに伴って2軍でマスクを被れる捕手が橋本星哉ただ1人という時期があった。

 現在は中村が1軍復帰。さらにコンディション不良で実戦から遠ざかっていた内山壮真が6月27日のイースタン・オイシックス戦(戸田)で復帰後初マスクを被り、育成枠でもフェリペが同26日の同戦で久々に捕手の守備に就いている。

 捕手不足は解消されつつあるが、6月末時点で、セ・リーグは1位から最下位までが7ゲーム差以内にひしめく大混戦状態。現在5位タイのヤクルトにも逆転優勝の望みが十分にあり、中川はチーム戦力整備のための重要なピースとして期待されている。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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