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徳島ISからホークス入団の育成左腕が示す驚異の「0.73」。一方「2.55」の課題とどう向き合うか

田尻耕太郎スポーツライター
藤田淳平投手。「阪神・伊藤将司」タイプと紹介された記事も。たしかにフォームは酷似

 7月19日、福岡ソフトバンクホークス3軍は、四国アイランドリーグplusとの交流戦(練習試合扱い)で香川オリーブガイナーズとタマホームスタジアム筑後(以下タマスタ筑後)で対戦した。

【7月19日 交流戦 タマスタ筑後 204人】

香川     `000001000  1

ソフトバンク `01410131× 11

<投手リレー>

【香】八尋、田代、西坂

【ソ】藤田淳、古川、渡邊佑、中村亮、岩井

<本塁打>

なし

<スタメン>

【香】3山田倫 4山田航 5良亮 7梶木 Dムロー 8山下 9置鮎 2川上 6新居

【ソ】9シモン D渡邉陸 2牧原巧 8大泉 7佐藤航 6藤野 4西尾 5三代 3佐久間

<得点経過>

2回裏【ソ】佐久間が先制タイムリー(ソ1-0香)

3回裏【ソ】西尾が適時二塁打、三代の2点タイムリーなどで4得点(ソ5-0香)

4回裏【ソ】佐藤航のタイムリー(ソ6-0香)

6回表【香】良亮の犠飛で反撃(ソ6-1香)

6回裏【ソ】藤野の適時内野安打(ソ7-1香)

7回裏【ソ】満塁で盛島が右越の3点三塁打(ソ10-1香)

8回裏【ソ】シモンの犠飛(ソ11-1香)

<トピックス>

【ソ】西尾と佐久間が3安打

【ソ】渡邉陸は2打数1安打4四球で5度出塁

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安定感は折り紙付き。「欲しいときにとれる」奪三振能力を

 ソフトバンク育成7位新人の藤田淳平投手が安定した投球を続けている。この日は先発で5回を投げて3安打1三振で無四球無失点の投球内容だった。

 これが3・4軍戦主体の非公式戦では8試合目の登板だった。24回2/3を投げて自責点は2点のみ。防御率0.73と優秀な成績を残している。さらに特筆すべきなのが制球力の良さ。与四球は2つで与四球率(9回投げた場合に四球を与える確率)でも0.73という驚異的な数値を叩きだしている。

 藤田淳は徳島県出身の24歳左腕。東亜大学時代もリーグ戦で1位の防御率(0.73)を記録したことがあり、昨年プレーした四国IL・徳島インディゴソックスでは防御率1.51をマークして同部門のタイトルを獲得した。

 ソフトバンク入り後も持ち味を発揮して、アピールを続けていると言える。しかし、5回無四球無失点の藤田淳だが、この日の投球の感想を問うと悔しげな表情で厳しい言葉を並べた。

「ある程度試合を作ることに関しては自分の中でも得意としています。でも、上(1軍)に求められるのは球速だったり、欲しいときに三振とれるようなピッチングだと思います。テンポの良さに、プラスアルファして、もっと圧倒するピッチングをしないと今のところはまだ厳しいかなと自分の中で思っています。抑えるのは当たり前。プラスアルファを求めていきたい」

 防御率や与四球率が超優秀な一方で、奪三振率は2.55しかない。「3軍なのでNPB相手というわけでもない。去年の独立時代は三振も取れていました(昨年の奪三振率は10.28)」。徳島時代は最速148キロを計測したが、この日の3軍戦での投球を見ると直球は140キロ前後が主体だった。

「昨年も先発でのアベレージは140ちょっと。148キロは中継ぎでマークしたものなので。でも、自分は先発がしたい。先発でもそれぐらいの出力が出せるように」

 ただ、課題は明確に理解していると話す。

「今まで柔らかいマウンドで投げてた分、投げやすかったのもあります。硬いマウンドになると、自分の筋力で耐えたり、持っていく(ボールに伝える)強さが足りない。それは明確に分かっている。ただ、筋力アップについては、やり続けて(結果が)出るのを待つしかない。だから、そんなに焦りというのはないですけど」

 入団時のプロフィールで身長182cm、体重92kg。体重はトレーニングや食事の成果もあり増えているという。

「筋量も増えてはいます。各種目で20キロずつくらい負荷も上がっています。筋力は上がっているけど、まだ投球自体やフォームに繋がっていない。いかに使いこなせるか、そこを意識してやりたい。そして、筋量自体もまだまだ。自分の身長や体重からすれば足りていないので」

 ただ、ソフトバンクの育成環境に身を置いてトレーニングを積んでいけば、体が劇的に変化していくのは間違いない。一方でコントロールやゲームメイク技術を習得するのは本来難しいことだが、藤田淳の場合はそれをすでに身につけている。

 投げる球が一気に進化した時、どんな投球を見せてくれるのか。また楽しみな投手が1人現れた。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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