歴史や風景を紡ぐ 観光地でテレポーテーション【黒部市】
今回は、「黒部市美術館」で開催されている、「小林耕平 テレポーテーション」を紹介します。
小林耕平 テレポーテーション
埼玉県在住の小林耕平さんは、空間に配置するオブジェクトや日用品、小林さんご自身が出演する映像などで作品を作られています。
今回の「小林耕平 テレポーテーション」では、宇奈月温泉や生地中橋などの観光地でロケを行い、作品を作られました。小林さんご自身が出演する今回の映像は、約90分。長いように感じますが、漫才を聞いているような面白さがあるので、見始めると最後まで観ずにはいられない作品です!
映像作品では、小林さんの他に、“山形くん”と呼ばれる重要人物が登場します。山形くんは、観客目線で、小林さんの作品や考え方について容赦なく質問してくれます。この二人の問答のユニークさ、二人の絶妙な間の取り方は、台本があるのかと思うほど面白いのです!
また、カメラワークも巧妙!問答を繰り返すうちに、二人は画面からフェイドアウト…言葉だけが宙ぶらりんとなり、滑稽な印象を与えます。
この映像をご覧になった方は、小林さんはもとより、山形くんのファンにならずにはいられないと思います!
作品の一部を紹介します。
イメージの所在:閃き方 生地中橋/源兵サの清水
この水車のような展示品は、「源兵サの清水(しょうず)」でロケが行われた「イメージの所在:閃き方」です。用水にこの作品を浸け、水車のように回しながら、小林さんと山形くんの問答が繰り返されます。
この場面の中で、「湧き水っていうものは(中略)自然界から湧いてくるわけですよね。(中略)イメージも実は自分が考えて出てくるものではなくて、もっと遠くからやってくる。」という小林さんの言葉があります。
知識や味覚のように、経験や教養によって培われたものがイメージとして生まれる。そして、そのイメージを取り出す、つまり、テレポーテーションする。ということだと感じました。
物体とイメージ:イメージの持ち運び方
額装されているのは、下立(おりたて)の観光マップです。穴が開いているのは、紹介されている観光地の画像を、小林さんが切り取ったからです。
切り取った画像は、お土産などで貰ったキーホルダーに貼られ、ホワイトボードに描かれた下立の地図上に飾られていました。
例えば、「愛本姫社」の「花魁」画像は、警察署で配布されていた“子供用の防犯ホイッスル”に貼られホワイトボードに配置してありました。もはや、それは防犯ホイッスルとして存在していませんでした。笑
物体とイメージは一体のはずが、キーホルダーが移動したりすることで、物体とイメージが切り離されます。移動した物体は、他と出会い組み合わさることがあり、他の組み合わさった物は、他の意味を持つ物へと変貌を遂げることがあるのです。
最後に
今回の展覧会では、得体の知れない展示品の合間を縫って、先ずは上映作品を観覧しました。作品を観終わり展示室に戻ると、得体の知れなかったはずの展示品はイメージをまとっていました。映像で、観客目線の山形くんが小林さんと問答してくれることで、作品への理解が深まり、観方や思考が見えてきました。初めて体験する、とても面白い作品でした!
「小林耕平 テレポーテーション」は、12月18日(日曜日)まで。
小林さんと山形君、そしてカメラマンの渡邉さんの世界観を、どうぞお見逃しなく!
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黒部市美術館
住所:富山県黒部市堀切1035
電話番号:0765-52-5011
開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般500円、高校・大学生400円
※ 中学生以下無料
※障害者等手帳をお持ちの方と付添1名無料