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キャリアメール持ち運び、「出戻り」はできる?

山口健太ITジャーナリスト
携帯3社がキャリアメール持ち運びを発表(各社Webサイトより)

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が「キャリアメール」の持ち運びサービスを開始しました。乗り換えの促進が期待されるものの、「出戻り」にはまだ制限があるようです。

携帯キャリア独自のメールサービスとして、ドコモは「docomo.ne.jp」、KDDIは「ezweb.ne.jp」、ソフトバンクは「softbank.ne.jp」「ymobile.ne.jp」などで終わるアドレスを利用者に提供しています。

総務省の調査では、携帯キャリアの乗り換えを考えていない人の20%程度がキャリアメールのアドレスが変わることを理由に挙げたとのこと。もしアドレスの持ち運びができるならば74%の人が「利用したい」と回答しています。

そのうち、どれくらいの人が「有料でも利用したい」かは不明ですが、キャリアメールのアドレスを変えたくない人が相当数いることは間違いなさそうです。

キャリアメールはもう使わないという人も少なくないでしょう。シニア世代でも家族との連絡にはLINEやインスタのDMを使いこなす人が増えています。問題は、キャリアメールのアドレスだけでつながっている親族や知人などがいる場合です。

固定電話の番号と同じように、利用頻度が下がってもつながりが切れてしまうことを恐れて、変えられない人がたくさんいるわけです。そこで総務省はアドレスの持ち運びを可能にすることで、キャリア間の乗り換えの障壁を取り除くことを狙ったといえます。

サービス名称はドコモが「ドコモメール持ち運び」、KDDIが「auメール持ち運び」、ソフトバンクが「メールアドレス持ち運び」で、大まかな仕組みは似通っています。料金はドコモとKDDIは税込みで月額330円、ソフトバンクのみ年額3300円ですが、2022年夏以降に月額330円の月払いに対応する予定です。

使用する環境によってはメールサーバーなどの設定が必要です。また、乗り換え先のキャリアが新たなアドレスを割り当てる場合は、2つのメールアドレスを使いこなすスキルが必要になりそうです。

ahamo以外は「出戻り」不可

各社のサービスを比べていて気になったのは、持ち運びサービスを利用して他の事業者に乗り換えた後、元のキャリアに戻れるのかどうか、という点です。

というのも、安さを求めて格安の事業者に乗り換えるようなケースでは、サービス内容などに満足できず、元のキャリアに戻りたいという人が一定数存在するためです。

しかしこの場合、3キャリアともに元のメールアドレスを維持したままMNPで転入することはできないとのこと。どうしても同じアドレスを使い続けたい場合は、通常の通信料金に加えて、持ち運びサービスの料金を払い続けることになるようです。

たとえばドコモの場合、以下のような注意事項があります。

・キャリアフリーユーザーの場合、ドコモメール持ち運びに紐づくdアカウントでahamo契約を行うことができません。新しくdアカウントを作成することで、ahamoへお申込みいただくことが可能となり、引き続きドコモメール持ち運びをご利用になれます。

ドコモメール持ち運びに紐づくdアカウントでahamoのご契約をご希望の場合は、ドコモメール持ち運びの解約をしていただく必要があります。

・キャリアフリーユーザーの場合、ドコモメール持ち運びに紐づくdアカウントで新規にドコモの回線契約をする際は、現在ご利用いただいているメールアドレスを引継ぐことはできません。

ドコモメール持ち運び | サービス・機能 | NTTドコモ

ただしドコモによれば、「ahamoからドコモに戻ることは可能」とのことです。具体的には、ドコモ利用者がahamoへのプラン変更と同時に持ち運びサービスを契約し、その後ドコモにプラン変更した場合、持ち運びの契約は解除され、ドコモの料金のみで同じアドレスを使い続けられるそうです。

これ以外のケースでは、アドレスを持ち運ぶ人の「出戻り」は想定されていないため、いわば片道切符のような印象を受けます。利用者が戻ってくること自体は各キャリアともに歓迎しているので、ニーズが多ければ検討が進む可能性はありそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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