W杯まで4ヶ月。大黒柱の復帰と新戦力の融合で活気づくなでしこジャパン(2)
6月に女子W杯フランス大会を控えるなでしこジャパンが、静岡のJ-STEPで5日間の候補合宿を行った。
W杯まで4ヶ月。大黒柱の復帰と新戦力の融合で活気づくなでしこジャパン(1)
ここでは、合宿中の監督・選手コメントを掲載する(写真は全て筆者撮影)。
監督・選手コメント(一部抜粋)
高倉麻子監督(合宿初日)
ーーアメリカ遠征まで1ヶ月ですが、それまでに力を入れていきたいことを教えてください。
戦術的には攻守の精度と強度にこだわりたいです。「自分たちのサッカー」と言っても、相手が変化を加えてきた時に柔軟性がないといけない。トライしながら選手たちの引き出しを増やして、試合中に判断して対応できるようにしたいです。臨機応変さとかゲームを劣勢でも勝ちに持っていくしたたかさ、巧さ、賢さをより研ぎ澄ませていきたいと思います。
ーーW杯まで残り4ヶ月という時期に、新しいメンバーを加えながら絞り込んでいくというのは、これまでにないやり方だと思いますが。
そうですね。以前の代表は割と固定しながら作っていったと思いますが、今は私自身も先発の11人がどうなるか、予想がつかないです。常日頃言っているように、2チーム分できたら良いなと思いますし、相手にとって「日本は誰が出るかわからない」とか、「交代で出てきたあの選手の方がいいじゃないか」というように、嫌がられるようなチームでいたいですね。
それほどみんなのパフォーマンスが上がってくれば、私は(選ぶのに)頭が痛くなりますが、それだけチームの力は強くなりますから。なでしこチャレンジ(合宿)の選手を含めて、日本にとって大切な選手ですし、その思いは常に伝えて、そこからは本人が掴み取るものだと思います。あとは、サッカーを思いっきり楽しんでほしいですね。大舞台でも緊張しない、そういうメンタリティーで試合に臨めるように背中を押してあげたいと思います。
(最終日)
ーー男子大学生との合同トレーニングは狙い通りでしたか。
ゲームでは最後の一歩のところでやられてしまう場面もありましたが、大柄な相手に対してボールをどう動かしていくかというころで、いいトレーニングになりました。ゴール前の一歩とか相手のドリブルについていくことに関しては、自分たちのウィークポイントを確認できました。大枠のメンバーは頭の中にありますけど、新しい戦力もやっていけるという手応えがありましたね。
ーー監督に就任された際に、代表選手に求める4つの条件(テクニックがあってクレバー、走れる、チームのために戦える、代表への思いが強い)を挙げておられましたが、チーム立ち上げから約3年間を経て、選手にさらに求めたい要素は出てきましたか?
この間もそれを考えていたのですが、やはりその基準は全く変わっていないです。その4つの基準プラス個性という点では、たくさんの選手がいいところを出してくれているので、あとはコンディションですね。
MF 阪口夢穂 (日テレ・ベレーザ/初日)
ーー久々に代表に戻ってきた感触はいかがですか?
以前同じケガをした時は若くて焦りやいろいろな感情があったのですが、今回は客観的にサッカーのことを考えたり、有意義に過ごせた気がします。気持ちは新人みたいな感じですね(笑)。
ーーリハビリで特に強化できたと感じる部分はありますか。
まだ実戦的なことをあまりやっていないから何とも言えないのですが、筋トレは続けてきました。あとは実戦にどう繋げていくかという段階なので、視野や判断の部分は試合をこなして取り戻していきたいです。
ーー阪口選手が離脱していた間にアジア大会や親善試合がありましたが、どういう風に見えていましたか?
毎回、システムも出る選手も変わっていましたね。その上で、どの選手が出ても同じサッカーができるようになっていると感じましたし、日本の選手は小さいけれど、やはり技術的に高いものがあるなと思いながら見ていました。
ーーW杯までに強豪国と対戦できる機会がありますが、どんなことが楽しみですか。
(今の時期に対戦できることは)すごいことだと思います。でも、どうなることやら(笑)。ケガをする前はアジアのチームと対戦する機会が多く、強いチームと久しくやっていないので、何が通用して何が通用しないのかな、と。それが楽しみですね。
FW 菅澤優衣香 (浦和レッズレディース/初日)
ーー去年は大きな大会をいくつも経験しましたが、連戦の中でどのようにコンディションを維持していたのですか?
休めるところはしっかり休む時間を作ってくれたりと、長期間の連戦を乗り切れるように(代表の)スタッフにうまくコントロールしてもらっていました。それは有り難かったですね。シーズン半ばでの怪我は少なくなりましたし、アジア大会(8月)の時は一番調子が良かったです。
ーー去年はアジア大会で優勝を決定づけるゴールを決めました。自分の中に調子の良さを見極める物差しはあるんですか?
周りの選手が自分のプレーをわかってくれていますし、コンディションが悪くなくプレーできたのが一番のポイントだったのかな、と思います。
ーー今年はW杯本大会までに強豪との対戦が続きますね。
アメリカやフランスとは対戦したことがあるのですが、ドイツは対戦したことがありません。フランスやアメリカとはまた違った感じだと思うので、それを体験して成長の糧にできるのが楽しみです。
ーー菅澤選手にはヘディングやポストプレーという強力な武器がありますが、今年、新たにチャレンジしたいと思っていることはありますか?
アジアでは通用しても、ヨーロッパやアメリカ相手になると自分の身長(168cm)は小さい方ですから、飛ぶタイミングもうまく変化させていきたいし、ミドルシュートも武器として持ちたいですね。
ーー今年の具体的な目標を教えてください。
一番の目標はW杯優勝です。そのために、まずはメンバーに入ることが大前提で、そのためにはケガをしないことが大切です。一つひとつクリアしていって、最終的に優勝に貢献できるようにしたいと思います。
DF 北村菜々美(C大阪堺レディース/合宿初日)
ーー初めてなでしこジャパンの合宿に参加して、いかがですか?
すごく緊張しています。なでしこチャレンジもレベルが高かったですが、なでしこはさらに個人個人が上手くて、レベルの差を感じています。
ーーA代表でアピールしたい自分の良さは何ですか?
チームでもやっているように、サイドバックからでもしっかり仕掛けて攻撃参加をたくさんしていくことです。U-20よりもさらに相手の体が大きくなると思いますから、しっかり、まずは体づくりからしていきたいと思います。今は、上半身を中心に鍛えています。
ーーW杯出場への思いを聞かせてください。
メンバーに入ることは簡単ではないのですが、このキャンプが終わったら、リーグ戦が始まります。そこでしっかりアピールして、またなでしこジャパンによんでもらえるようにしたいです。
DF 有吉佐織(日テレ・ベレーザ/2日目)
ーー今回、新しく入ってきた選手も多い中で、積極的にコミュニケーションをとっていますね。
世代別で代表の雰囲気に慣れている選手もいれば、全然慣れていない子もいるので、そういう選手が入りやすい空気感を作るように意識しています。このチームも立ち上げの頃はすごく大人しかったけど、今は楽しみつつ、「やる時はやる」というメリハリが出てきました。
ーー昨年、アジアでタイトルを取ったことで余裕が出てきた部分もあるのでしょうか。
それもあると思います。やってきたことが結果に出たと思うし、みんなが自主性を持って前向きにチャレンジしてきましたから。その中で、みんなが自分の意思を伝えるようになってきたことはすごくいいことだと思います。
ーーアメリカやドイツ、フランスなど、強豪国との対戦を経て本大会に向かう流れはいかがですか?
重要な試合になると思います。ラインを高くして前からボールを取りにいくのは理想ですが、不意のボールで裏に出されてヨーイドンだと絶対にやられてしまう。それに、本番の観客の中ではほぼ声が聞こえないから、臨機応変にやらなければいけません。ですから、そういう国と対戦する中である程度、ベースとなるライン設定を決めていきたいですね。アジアよりはボールを回せる時間も増えると思いますが、W杯では失い方が悪いと負けてしまうので、リスク管理とか判断の部分も高めていきたいです。
ーー今年はプレーをどんな風に研ぎ澄ませたいと考えていますか。
サイドバックでは相手との駆け引きとか、動きの質を突き詰めていきたいです。例えばオーバーラップをする時に何度も駆け上がるのではなくて、ここぞというタイミングで上がって、上がった時は必ずシュートで終わるとか、下手な取られ方をしないで終わるようにしたいですね。チームとしても運動量で勝つのではなく、いい意味で、省エネで質が高い動きを追求したいです。
DF 三宅史織(INAC神戸レオネッサ/3日目)
――昨年は、センターバックでいろいろな選手と組んできましたが、組む選手によって役割分担は決めているのでしょうか?
そこまではっきりは決めていないのですが、試合までにその人の特徴を掴むようにはしています。(熊谷)紗希さんは前に強いので前で奪い切ってもらう形が多いのですが、サメ(鮫島彩)さんの場合は、前よりも後ろにスピードを活かせる部分があるので、自分が前に行った方がやりやすい時は、自然にそういう感じになりますね。
ーー去年はアジアやヨーロッパの国と対戦しました。強豪国との対戦で楽しみなことは何ですか?
去年、アメリカとブラジルとオーストラリアと対戦した大会で、フィジカルをもっと強化しないといけないな、と思いました。アメリカとの対戦(●2-4)では、相手の攻撃の威力に対して対応しきれない弱さに気づけました。攻撃面では日本の強みがビルドアップだと再認識できましたが、アジアカップでは相手が前から守備に来た時に(パスが)ずれてしまうことがありました。優勝はできたけれど、納得いく戦い方ではなかったですね。日本は相手に合わせて慣れていけることが強みだと思いますが、まずは試合の入りで負けないようにしたいです。
ーー実は人一倍負けず嫌いな性格だと聞きます。ピッチではどんな風に気持ちを表現していますか。
あまり、そういう風に見られないんです。悪く言えば「勝ちたい」という気持ちが見えにくいと思うのですが、自分は絶対に目の前の相手に負けたくないんです。昨年のアメリカ戦は本当に悔しい思いをしました。初めてあの速さと強さを体感してショックでしたし、これまでの相手と全然違うな、と感じました。センターバックの本職は守ることなので、もっと強さを身に着けるために鍛えていきたいです。
ーー残り4ヶ月間をどう過ごしたいと考えていますか?
まずメンバーに選ばれることを目指していますが、そこがゴールではありません。アメリカ遠征の時のように「試合をしてびっくり」になってしまわないように、しっかり準備していきたいと思います。
DF 南萌華(浦和レッズレディース/合宿最終日)
ーー代表招集は2度目ですが、雰囲気には慣れましたか?
(昨年11月の)鳥取遠征の時よりは慣れました。緊張感もありますが、リラックスして臨めています。
ーーどんなストロングポイントをこのチームで生かせると思いますか?
1対1の強さは、前回の合宿から課題として取り組んできました。その点で、前回より手応えはあります。ビルドアップのところは今後、さらに高めていく必要があると思います。パスにこだわるだけではなくて、自分がボールを持ち運ぶプレーを入れたりして、味方が余裕を持って受けられるタイミングでパスを出すことも意識しています。
ーー紅白戦では、ワンツーでゴール前に飛び出すプレーも見られました。
6対6の紅白戦では、パスをした後に下がるだけではなくて、前に抜けた方が味方がやりやすいと思った時は、変化を起こそうと思って上がりました。
ーー今年、チームで背番号も変わりましたが、どんなことを楽しみにしていますか?
背番号が「3」に変わったことはチームから期待してもらっていることだと思うので、すごく嬉しいですし、去年よりもさらに頑張っていかなければいけないと感じています。その中でなでしこジャパンの合宿にも選ばれ続けるように、さらに意識高く、練習も試合にも取り組んでいくつもりです。
MF 中島依美(INAC神戸レオネッサ/合宿最終日)
ーー練習中、積極的に声を出していましたね。
はい。守備では、速い相手に対して声を出して協力していかないと守りきれない時もありますから。(どんな状況でも)最後は1対1になるのですが、連動して奪えるように、練習から意識しています。攻撃でも、「ここにパスをちょうだい」とか、周りを見ながら声を出していますが、その声の質も高めていかなければいけないですね。
ーー今年、ランキング上位のチームと対戦する機会がありますが、チームとして高めたい部分を教えてください。
ボールをつなぐ自分たちの良さを出しつつ、しっかりゴールまで行けるというところを示したいなと思います。ボールを持っているだけじゃなくて、そういう怖さも与えたいですね。自分でも、もっとシュートの意識を持ちたいですし、コンビネーションやワンツーで崩す形をもっと増やしたいです。
ーー代表が立ち上がって約3年ですが、自分の中で特に変化したなと実感する部分はありますか?
サイドハーフをやることが多いのですが、ポジショニングは、当時に比べて、(考えながら)整理して動けるようになったと思います。
ーー直近の目標を教えてください。
まずはメンバーに入ることです。入ることができたら、チームでW杯優勝することが目標ですね。そのために自分ができることを精一杯やりたいです。