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これが古巣への恩返しだ!! プロ入りからずっと過ごしてきたチームを相手に打ちまくる2人

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェド・ジョーコ(セントルイス・カーディナルス)May 5, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ジェド・ジョーコ(セントルイス・カーディナルス)とダニエル・マーフィー(ワシントン・ナショナルズ)は、昨シーズンまで、別のチームの生え抜き選手だった。彼らは、主に二塁を守ってきた点も共通する。そして、今シーズンは2人とも、それぞれの古巣を相手に打ちまくっている。

ジョーコはサンディエゴ・パドレスと対戦した7試合で、シーズン12本塁打の半分を打っている。シーズン全体のスラッシュライン(打率/出塁率/長打率)は.268/.328/.497だが、パドレス戦に限ると.560/.593/1.360に跳ね上がる。

マーフィーは前半戦に13試合あったニューヨーク・メッツ戦で、7本塁打、.423/.446/.885を記録した。彼の場合、全般に好調なシーズンを過ごしていて、19本塁打はすでにキャリアハイを上回り、.348/.387/.612は3部門ともリーグ・トップ10にランクイン(1位、10位、2位)しているが、そのなかでも、メッツ戦の成績は際立つ。

ジョーコはパドレス戦のうち、最初と最後の1試合を除いてホームランを打っており、イライアス・スポーツ・ビューローによると、古巣相手の5試合連続アーチは1996年のアンドレス・ガララーガ(コロラド・ロッキーズ)に続く史上2人目だ。もっとも、ガララーガの相手は1992年に在籍したカーディナルスで、ジョーコのような前年までプレーしていたチームではなかった。

また、こちらもイライアス・スポーツ・ビューローによれば、直前のシーズンに在籍していたチームとの対戦で、前半戦にマーフィーよりも多くの本塁打を打った選手はいなかった。それまでは、1934年にチャック・クライン(シカゴ・カブス)がフィラデルフィア・フィリーズを相手に放った6本塁打が最多だった。

ジョーコとマーフィーが移籍した経緯を踏まえると、古巣に対する打棒爆発は――単なる偶然かもしれないが――興味深いものがある。ジョーコは数年前まで若き二塁手として期待され、マーフィーは過去4シーズンにわたり、正二塁手としてプレーしていた。

2013年の開幕戦でメジャーデビューしたジョーコは、翌年4月に6年3551万900ドルの延長契約を交わした。だが、パワー以外の面で伸び悩んで二塁のポジションを失い、昨年12月にジョン・ジェイとの交換でカーディナルスへ放出された。

マーフィーは2012~15年に4年続けて二塁打37本以上を放ち、昨年のポストシーズンでは6試合連続ホームランの新記録を打ち立てた。けれども、オフにFAとなったマーフィーに対し、メッツが申し出たのは1年1580万ドルのクオリファイング・オファーのみ。マーフィーがこれを受け入れないことは、承知の上だったと思われる。メッツは12月に、後任の二塁手としてピッツバーグ・パイレーツからニール・ウォーカーを手に入れた。マーフィーは年が明けてから、3年3750万ドルでナショナルズと契約した。

ちなみに、ジョーコとチームを入れ替わったジェイは、古巣のカーディナルスに対して3試合で.167/.231/.167、0本塁打だが、メッツでマーフィーの後釜に座ったウォーカーは、ジョーコとマーフィーには及ばないとはいえ、パイレーツ戦4試合で.333/.412/.600、1本塁打を記録している。彼らもまた、昨シーズンまでは生え抜き選手だった。昨年12月のトレードで、初めて移籍を経験した。

ジョーコ、ジェイ、ウォーカーの3人は、今シーズン、すでに古巣との対戦を終えている(この夏にチームを移れば可能性はあり、移籍の有無にかかわらず、ポストシーズンの対戦はあり得る)。ただ、マーフィーのいるナショナルズは、9月に6試合のメッツ戦を残している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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