ロシア軍の新兵器「ポセイドン」が超大型の原子力推進核魚雷と判明
7月19日、ロシア国防省は3月に初公表した新兵器6種類の新たな映像を公開しました。このうちの特に謎に包まれていた2種類の原子力推進兵器、海洋多目的システム「ポセイドン」と原子力推進巡航ミサイル「ブレヴェスニク」の形状が新たに判明し注目されています。
超大型原子力推進核魚雷ポセイドン
- ロシア国防省より海洋多目的システム「ポセイドン」
ポセイドンは驚くべき大きさの超大型核魚雷であることが分かりました。ロシア国防省は「海洋多目的システム」と銘打っていますが魚雷をそのまま巨大化した形状です。近くに立っている人間の大きさと比べて見ても直径2m近くはあるでしょう。通常の魚雷が直径53cm程度であることを考えると異常な大きさです。過去に超大型核魚雷は冷戦初期にソ連海軍で計画された戦略核魚雷T15がありましたが、電気モーター駆動で射程が短いことが問題となり不採用に終わっています。新たなポセイドンは原子力推進化することで無限の航続距離を得て、問題を解決する気なのでしょう。
そして今回新たに公開されたポセイドンの動画からは、以前までポセイドンとして紹介されていたスクリュー4基の無人潜水艇のCGが消え失せています。ロシア国防省は過去に大型潜水艦から発進する無人潜水艇のCG動画を作ってポセイドンと紹介しておきながら、無かったことにしようとしています。
原子力推進核魚雷ポセイドンと海洋調査用無人潜水艇クラヴェシンの関係性(2018年4月3日) - Y!ニュース
これは以前に筆者が書いた記事で予想していた4パターンの内の「戦略核魚雷が真であり、海洋調査用原子力推進無人潜水艇は偽である」だったことになりますが、相手を混乱させることが目的の欺瞞情報だったと考えても、わずか数カ月で種明かしをしたロシア側の意図は読めません。
潜水艦に規格外の超大型核魚雷を搭載する場合は新たに専用の超大型発射管を装備しなければなりません。今回の映像からポセイドンの舵は折りたたみ可能な構造であると分かり、発射管に収納することが考慮されています。今後、超大型発射管を装備した潜水艦が登場してきた場合、ロシア海軍がポセイドンの運用に本気であると示されることになるでしょう。
原子力推進巡航ミサイル「ブレヴェスニク」
- ロシア国防省より 原子力推進巡航ミサイル「ブレヴェスニク」
もう一つの原子力推進兵器、原子力推進巡航ミサイル「ブレヴェスニク」も新たに形状が判明する動画が公開されています。ただし重要な部分はカバーで隠されており、新たな情報を読み取ることが出来ません。
見た限りは大きさも形状も従来の普通の巡航ミサイルとあまり変わりがありません。折り畳み主翼は高翼式で、低翼式のKh-101巡航ミサイルとは異なるものだとは分かります。飛行中を遠距離から撮影した映像は解像度が低く、エンジンやエアインテイクがどうなっているかは何も分かりません。主翼の後退角は浅く、マッハを超えられない亜音速で飛翔するミサイルだと推定できます。全体的な印象からは、とても普通です・・・あまりにも普通過ぎるので、映像そのものが欺瞞情報かと疑いたくなるほどです。これが本当に原子力推進の巡航ミサイルなのかと、逆に首を傾げてしまいます。ブレヴェスニクについては、今回の新たな映像公開で謎は深まったかもしれません。今回の飛行試験は通常のジェットエンジンを搭載していたというロシア国内の報道もあります。それでもミサイルの大きさは同じになる予定でしょうから、大きさが普通であること自体が驚きです。
なお3月に初公表された新兵器6種類のうち他の4種類も今回同時に新映像が公開されましたが、ポセイドンとブレヴェスニクの映像のような新規性は無く、注目されている極超音速滑空翼体「アヴァンガールト」は依然として滑空翼体の形状など詳細が何も分からない状況が続いています。