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韓国人プロゴルファーの大きな悩みの兵役問題 「除隊後は苦しむ」という現実

金明昱スポーツライター
軍隊に行くことを決断した韓国人プロゴルファーの黄重坤。約2年はツアーから離れる(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 母国のみならず世界のツアーでプレーする韓国人プロゴルファー。

 彼らには大きな悩みがある。兵役問題だ。

 韓国では「兵役法」ですべての成人男子(韓国では満19歳で成人)に兵役の義務が課せられている。しかし必ずしも19歳ですぐに入隊するわけでもなく、進学や芸能・スポーツ活動など、やむを得ない理由がある場合、延期もできる。

 ただ、遅くとも30歳までに入隊しなければならない。期間は最短でも21カ月(最長24カ月)となっている。

 男子ツアーのマイナビABC選手権で4年ぶりの優勝を果たした黄重坤(ファン・ジュンゴン)は、「優勝したら軍隊に行く」と話していた。ファンは今27歳なので、タイミング的には良かったかもしれない。

 しかし、約2年も実戦から離れるのだから、除隊したあとすぐにいい結果を残せるのかは未知数だし、実際にそう簡単なことではない。

 他の選手の例をいつくか見てみよう。

 2011年から日本ツアーに参戦し、14年のミズノオープンで優勝しているジャン・ドンギュは18年2月に兵役を終えて、ツアーに戻ってきた。この時「(2月に兵役を終えてから)1カ月間、タイで合宿をしてシーズンインしましたが、韓国と日本合わせて7試合で予選落ちでした」と話している。

 そんな中でも18年のダンロップフェニックスで4位タイの成績を残し、賞金ランキング51位でシードを獲得。今季も賞金ランキング40位と健闘しており、シードを手中に収めている。

 14年のトーシンゴルフトーナメントで初優勝したI・H・ホは、15年から2年間の兵役に就いた。

 当時、「ミリタリーワールドゲーム」の開催に合わせて軍隊にゴルフチームが作られたため、I・H・ホはそこでゴルフの練習ができる環境にあった。

 除隊後、17年に日本ツアーに復帰し、賞金ランキング63位でどうにかシードを獲得したが、18年は再びシードを喪失。

 今季はAbemaTVツアー4試合に出場し、レギュラーツアーで唯一出場した日本オープンでは5位タイの成績を残しているが、実戦から遠ざかった影響はあるに違いない。

 軍隊に行ったあと、もっとも苦労しているのがベ・サンムンだ。

 2年間の兵役を終え、17年10月から米ツアーに復帰した。その後、出場9試合目(18年2月)でようやく初の予選突破を果たしている。この前週までは6試合連続予選落ちを喫していた。

 実戦から遠ざかったことから、「すべての面で苦労しました。ショットもウェッジもパットも。距離感が合わないし、コントロールもうまくいかなかった」と韓国メディアに語っている。

 1年には日本ツアーで年間3勝して賞金王に輝き、韓国人選手の中で「マスターズ優勝に最も近い男」と呼ばれていたほどの実力者でも、兵役後は感覚を取り戻すことに苦労している。

 ちなみに2019シーズンは米ツアー22試合に出場したが、14試合で予選落ち。最高位はカナディアンオープンの27位と、いまだ不振をかこっている。

 一方、今年1月に兵役に就くことを自身のインスタグラムで発表していたソン・ヨンハンは、軍隊生活の真っ只中だ。

「韓国の男として、国を守ってきます!2年という時間は、僕の人生にとって多くの助けになると思います。これまで私を信じて応援してくださった方々と、スポンサーのみなさん、本当にありがとうございました」とメッセージを残した。

 16年にSMBCシンガポールオープンでツアー初優勝を飾った実力者で、甘いマスクで女性ファンも多い。再び日本で見られるのは21年だろうか。

 20~30代はゴルフの実力的にも脂の乗った時期だけに、兵役は大切な2年を棒に振るようなもの。とはいえ国民の義務を果たさなければならないという思いも韓国人選手には確かにある。

 そんな彼らには日本ツアー選手の一員として、これからもトーナメントを盛り上げてもらいたいものだ。

(『週刊パーゴルフ』2019年11月26日号 掲載記事より)

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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