オートバイのあれこれ『三代目マジック9・ZX-9R』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今宵は『三代目マジック9・ZX-9R』をテーマにお話ししようと思います。
カワサキには、900ccのオートバイでバイク市場を賑わせてきた歴史があります。
「Z1」こと『900SUPER4』、「元祖ニンジャ」こと『GPz900R』。
最近では、『Z900RS』が我々バイクファンを楽しませてくれていますね。
こうした背景から、カワサキ製バイクの文脈において「マジック9(ナイン)」というワードも生まれました。
「世のバイク乗りを虜にするカワサキ流の魔術」
とでも言いましょうか。
そんな「マジック9」によって生まれたひとつが、1994年(平成6年)デビューの『ZX-9R』です。
Z1や900ニンジャもそうだったように、このZX-9Rは我々バイクファンへ新たな世界観をもたらしてくれました。
どういう世界観かというと、「スパルタンなスーパースポーツと快適なツアラーの融合」です。
カワサキは、当時ラインナップしていたレーサーレプリカの『ZXR750』とフラッグシップツアラーの『ZZR1100』の“間の子”的存在としてこの9Rを開発。
ZXR750の車体をベースに、ZZR1100の強みである実用性をトッピングするやり方で開発を進め、9Rを仕上げました。
完成した9Rは、ピークパワー139ps&車重243kgと、まさにZXRとZZRの間を縫うスペックを獲得。
ZXR750(1993):118ps/221kg
ZZR1100(1993):147ps/256kg
ワインディングロードではZXR譲りのシャープなハンドリングを、高速道路等ではZZRの余裕と安定性を味わえるモデルとして9Rは登場し、世間からは新感覚のオートバイとして注目を集めました。
デビューした90年代半ばはネイキッドスタイルが流行っており、9Rの登場はZ1や900ニンジャの時ほどのニュースとはなりませんでしたが、それでも「快適スーパースポーツ」という新たな価値を創造したのは事実で、カワサキはこの9Rでまた新たなオートバイの世界を切り拓いたのです。
現在、『ニンジャ1000SX』やスズキ『GSX-S1000GT』、海外モデルだとドゥカティ『SuperSport』といったスポーツツーリング系モデルがありますが、ZX-9Rはこういったモデルの先駆けだったといえるでしょう。