「社内SNS」のメリット・効果とは? 組織風土を変える方法
組織風土はどうして、なかなか変わらないのか?
ビジネスの世界では、理不尽なことが多々あります。どんなに論理的に正しいことを言っても、所属している組織の「空気」がその発言を受け入れるような状態になっていないのであれば、多くの人から相手にされません。私はセミナーや講演で目標予算をどのように「絶対達成」させるか、テクニックや思考ノウハウを紹介していますが、受講者がその話を聞いて感化され、組織に持ち帰っても、
「目標の絶対達成といっても、達成できないこともありますよ」
「それ以前に、目標予算の妥当性を検証すべきだ」
「逆立ちしたってできない目標を設定する経営陣がおかしい」
などなど……。「目標はあくまでも目標であって、達成できたらいいけれど、なかなかそういうわけにはいかない」という空気が組織内に蔓延していたら、どんな施策を打っても、なかなか人は変わりません。同調さえしてくれないのです。
苫米地英人氏の書籍でよく登場する「コンフォートゾーン」という言葉があります。居心地のよい領域のことを指します。
たとえば「目標未達成」が常態化している組織があるとします。そしてその構成員が「目標未達成」の状態をコンフォータブル(快適)だと潜在的に受け止めていると、どんなに経営者が「目標を絶対達成させよう!」と声高に煽っても、目標未達成の状態のほうが居心地がよいわけですから、その「領域」から抜け出すことができません。
外部環境が変化しても体の状態を一定に保とうとするホメオスタシスのようなものです。頑張って目標達成しようとしても、結局元に戻ろうとしてしまうものです。エアコンのサーモスタット(温度調整機能)と似ています。
社内SNSの効果は2つ
組織風土改革の手法と3つのポイントに書いたとおり、時間をかけて既成概念――「古い空気」を「新しい空気」に入れ替える必要があります。
このとき、意外に使える仕組みが「社内SNS」です。社内フェイスブックのようなツール。社内SNSの効果、メリットは大きく分けて2つです。
1)単純接触効果
2)自己開示効果
社内メールと大きく異なるのは、特定の送信先を考慮することなく「個人的なつぶやき、意見、感想が書きやすい」という点です。事務連絡のみならず、
「今日は得意先を7件まわった。意外と手ごたえがあった」
「見積り資料を4時間かけて作ったが、社内で雛形を作っておけばもっと効率化できたと思う」
「朝早く出社して、デスク周りをキレイにした。ああ、スッキリ!」
このような「つぶやき」「独り言」が書けます。しかも、何度でも、です。だいたいSNSへの書き込みをする場合は、見ている人から肯定的なコメントをもらうことや、「いいね!」ボタンを押してもらうことを前提にする場合が多いため、自然発生的に前向きな発言が増えていきます。
「今日のお昼は350円のコンビニ弁当。明日からはもっと健康に気をつけたい」「来週から3日間、福岡へ出張! とんこつラーメン食べるぞ!」といったより個人の内面を表現した内容も増えることでしょう。こうすることで「自己開示効果」が働き、さらに単純接触が増えることで相互信頼が増していきます。
経営者はどのように社内SNSと向き合うべきか?
経営者や管理者が組織内の「古い空気」を入れ替えるためには、「新しい空気」の基礎概念を大量に刷り込んでいく必要があります。それを社内メールで書いて送り続けると、事務的で堅いイメージです。相手に強い緊張感、プレッシャーを与えてしまう恐れもあるでしょう。社内SNSなどを活用し、さりげなく書いて発信していくと、知らず知らずのうちに「空気」が浄化されていくものです。
「昨夜、地元の経営者6人と飲みました。わが社が目標達成に向けて順調だと話すと、みんなから『うらやましい』『当社も見習いたい』と言われて気持ちよかった!」
「アシスタントのKさんが、営業の後方支援のために役割分担表を作ってくれました。こういう心配りに感謝したいです!」
「なんだか最近、目標達成しよう! という意欲をみんなからもらっているようで私も頑張れます」
このようなことを、経営者みずから呟く、独白し続けると、徐々に空気が変わってくるものです。
ポイントは、当然のことながらネガティブ発言は控えること。読んでいる人から肯定的なコメント、もしくは「いいね!」がもらえるように書くことが基本です。「前向きな書き込みをしようと思っても、そんな出来事がない」という方は、まずその思考に問題があります。肯定的な何かにアンテナを張り続けましょう。リアルなコミュニケーションもそうあるべきなのかもしれませんね。そして何より焦らないこと。すぐに結果を求めようとするその姿勢自体が、組織の空気を汚していく根源だからです。