Yahoo!ニュース

クボタとNTTドコモ、好調の裏に気配りと献身&第5節私的ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
写真左から立川主将、ボタ、井上。(写真:松尾/アフロスポーツ)

 最後の国内トップリーグはレギュラーシーズンの第5節までが終了した。

 優勝候補と目される神戸製鋼、パナソニック、サントリーがそれぞれ加盟するカンファレンスで全勝をキープするなか、以前と比べて成績を大きく上げているのがクボタとNTTドコモだ。

 クボタは2003年のリーグ参戦以来、最高位は2017年度の7位で2012年は下部を経験。しかし今季は開幕5連勝中だ。4月3日の第6節では、サントリーとのレッドカンファレンス全勝対決に挑む(東京・秩父宮ラグビー場)。

 スーパーラグビーのブルズで実績を残したフラン・ルディケヘッドコーチが就任して5季目。指揮官は、個人間の信頼関係に基づくクラブ文化を構築してきた。

 控え選手へのケアは当然のタスクのようで、引退した元選手も「外されても丁寧な説明があり、納得がいった」と口にするほど。元日本代表の立川理道もこう証言する。

「フランはどの選手へもリスペクトしているというか、真摯に向き合っている。(選手が)それに応えたい気持ちにもなっている」

 そこへ今季は、南アフリカ代表フッカーのマルコム・マークスら世界的な大物が参戦。豊饒な大地に穀物を実らせている。外国人枠の関係で控えに回ることの多いライアン・クロッティ(ニュージーランド代表)も、こう言い切る。

「自分の仕事はチームをよくすること。試合に出てなくても他選手の成長(を助けること)など貢献できることはたくさんある」

 指揮官の人柄と控え組の献身ぶりは、NTTドコモでも見られる。4月3日はホワイトカンファレンスの第5節でヤマハとぶつかる。過去5年で4強入りの経験があるチームとぶつかるのは、パナソニックとの第4節に続き2回目だ。

 ずっと下部との昇降格を重ねていたクラブが開幕3連勝を含め4勝1敗と際立つのは、新加入したニュージーランド代表スクラムハーフのTJペレナラが活躍しているから、だけではない。

 南アフリカのライオンズを強豪に育てたヨハン・アッカーマンが来日したのは昨秋のこと。練習の合間の給水もゆったり歩くのを許さない反面、合宿中はグループごとのレクリエーションで親睦を深める。

 開幕後は、アッカーマンの前所属先であるイングランドのグロスターからやって来た外国人選手(ウェールズ代表スタンドオフのオーウェン・ウィリアムズら)がタフなセッションから逃げない。これまで挙げた4つの白星のうち3つが5点差以内での勝利と劇的なストーリーを支える日本人選手の1人は、このような趣旨を述べる。

「いまは『こういう練習はしたくない』という外国人はいなくて、今季は戦術的な理由でメンバーから外れる外国人がノンメンバー(控え)のきつい練習でも全力を出す。グロスターから来た選手はヨハンの基準を知っている」

 実力のある控え選手の献身が主力組の働きを促す現象は、他の優勝候補勢、ひいてはワールドカップ日本大会で8強入りした日本代表の内部でも起こっていると伝わる。今季好調の2チームは、フロックと異なる要素で順位を引き上げていると言える。

 さらに2022年1月からの新リーグ(※)では、「ディビジョン1」と呼ばれる最上位層でのプレーに近づいている格好だ。

「ディビジョン1」の参加チーム数は12と、現行トップリーグの16から4枠も絞られる。すでに審査の約8割が済むなか、両軍はホームスタジアムを確保できる可能性、地域での貢献度、小中学生向けのアカデミーおよびその関連イベントの実績で高く評価されていそうだ。今季のトップリーグで最後まで現状の好調を維持できれば、基準が不明瞭な点などから一部のクラブが疑義を投げかける「ディビジョン1」への参戦争いも文句なしで突破できるだろう。

※新リーグ=トップリーグに代わる国内リーグとして発足。ホスト&ビジター形式の実施で、チームの事業化と社会化を促す。

<私的第5節ベストフィフティーン>

1、眞壁貴男(リコー)…出場時間、スクラムを圧倒。

2、坂手淳史(パナソニック)…キックチャージ。自陣で鋭いタックル。防御ラインで責務果たす。

3、垣永真之介(サントリー)…スクラム。スイープ。

4、ルアン・ボタ(クボタ)…序盤は雨の影響からかラインアウトの呼吸が合わなかったものの、接点の周辺での素早い位置取りから相手のボックスキックへ圧をかけた。チョークタックルも際立った。

5、ブロディ・レタリック(神戸製鋼)…グラウンド端からの折り返しの攻撃の際、厚い防御を破る。オフロードパスで局面を打開。

6、ダン・プライアー(宗像サニックス)…決死のカバー防御。接戦で迎えた後半17分頃好ジャッカル。

7、リアム・ギル(NTTコム)…自陣でジャッカルを重ねる。

8、ジャック・コーネルセン(パナソニック)…モールディフェンス。タックル。

9、井上大介(クボタ)…雨天のなか両角のスペースへ鋭くキック。チームの持ち味を勝利に直結させた。ターンオーバーも決める。

10、アイザック・ルーカス(リコー)…味方と連係してマークを外してラインブレイク。

11、山下楽平(神戸製鋼)…タッチライン際にスペースが空くのを待つ。簡単に球を失わない。

12、マイケル・リトル(三菱重工相模原)…再三のジャッカル、ラインブレイク。

13、ジェシー・クリエル(キヤノン)…自陣深い位置でのジャッカルで反則を誘うや、速攻を仕掛けた味方をサポート。切れのある走りで脅威を与える。

14、ベン・スミス(神戸製鋼)…ブレイクダウンでのスローダウン、サポート、防御の裏へのキック。

15、ウィリー・ルルー(トヨタ自動車)…好タッチキックで地域を獲得。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事