「料金引き下げ」指示に対する、携帯大手3社の”当たり前の言い分”
安倍首相が出した「携帯料金引き下げ」指示が波紋を広げています。「家計負担増」を懸念した安倍首相の”思いやり”かもしれませんが、一国の首相が特定の産業の、特定の商品サービスの料金体系に”ケチ”をつけるなんて前代未聞だ、という声も上がっています。
携帯電話、スマートフォンの料金が世界的に見て高いかどうかはともかく、端末価格と通信料金が一体化している点、何をどう使えばいくらかかるのかわかりづらい点、どのような条件ならどれぐらいの値引きが実現するのかも非常にわかりづらくなっていることは事実です。携帯、スマホを使わない人ほど高いお金を支払っているケースもあり、”フェアではない”料金体系が不満の温床となっています。
社会インフラに対して支払うお金は、企業や家庭の支出において「固定費」となります。契約するときは料金を気にしますが、いったん契約してしまうと、あまり気にならなくなるという特性があります。これがいわゆる「ストックビジネス」のうま味と言えるでしょう。
企業側としては、「いったん契約してもらえばこっちのもの」という思惑があります。契約するときは、1ミリでもハードルを低くする努力をしますが、解約されるときは1ミリでもハードルを高くしようと努力をする。携帯やインターネットプロバイダなどの通信事業のみならず、保険やクレジットカードなどの事業も同じ。健康食品や化粧品販売でも、こういったストックビジネス的な販売方法は存在します。
これがストックビジネスの正体。業界が成熟していれば事業主の利益率は非常に高くなり、実際のところ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの収益力はバツグンです。もし今後、収益が悪化するようなことがあれば、単純に経営努力を怠っているからに違いありません。
料金体系のわかりにくさ、値引き条件のわかりにくさ、解約方法のわかりにくさ……多義的で紛らわしくて不透明な料金体系を作るのがストックビジネスのコツであるわけですから、いくら安倍首相の指示とはいえ、この圧力に屈することはないでしょう。それこそ曖昧模糊な言い分で、のらりくらりと交わすか、とってつけたような改善案で幕引きをはかるかのどちらかです。
前述したとおり、社会インフラに支払うお金は、企業や家庭の支出において「固定費」となります。そしてこの社会インフラを担う企業はいろいろとあるわけですが、通信事業はまだ健全なほう。携帯の料金は消費者側に選択権があり、不満があれば自分で勉強してプランを変更したり、格安のスマホに乗り換えたりすればいいのです。
いっぽう電力会社はどうでしょう。自社の経営が悪化すると電気料金を引き上げようとするなど、とんでもない横暴を働きます。電気に関しては現時点でほぼ消費者に選択権はなく、泣き寝入りするしかありません。ビジネス的に考えれば、電力会社は消費者を虐待しているようなもの。電力市場の自由化(電力自由化)となっても、そう簡単にこの利権が奪われることはないでしょうから、それこそ強い姿勢で政府は介入すべきです。電力会社やガス会社は、もっと経営努力をすべきと私は考えています。